インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ほん

中国共産党、その百年

ロシアのウクライナ侵略によって、国際関係がにわかに大きな変化、ないしは仕切り直しに直面しているように思われます。これまで中立を保ってきた北欧のフィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を模索し始めたというのは、ああ、それはそうなるだろうなと…

新刊書の推薦コメント

新刊書の車内広告や店内POP、あるいは本についている帯などに、惹句とともに読者の感想が並んでいることがありますよね。著名人による「○○氏、推薦!」みたいなのもありますけど、それ以外にも「40代・女性」とか「東京・STさん」のように匿名で、「目からウ…

今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除すべき10の理由

昨年末にTwitterを「降りて」三ヶ月ほど経ちました。すでにアカウントは消滅していますが、実はもうひとつTwitterにアカウントを持っていて、それは今でも続けています。趣味で学んでいるフィンランド語でのみつぶやくアカウントです。ただし、以前Twitterを…

「〜を食べさせる店」をめぐって

「食べさせる(食わせる)」という言い方がありますね。「親が子供にご飯を食べさせる」という単なる使役ではなくて、「あの店は旨い魚を食べさせる」みたいな言い方です。なぜか私はこの後者の言い方が昔から苦手で、耳にするたびになんとも言えない嫌な気…

ふたたび天丼

所用で銀座に出たおり、またまた天丼を食べました。ちょっと贅沢です。行ったのは天國という天ぷら屋さんですが、ここに来るのも本当に久しぶりです。以前来たのは何年前だったでしょうか。もともとは銀座の大通りに面した、博品館のお向かいにお店があった…

AI監獄ウイグル

もう20年以上前のことですが、中国の新疆ウイグル自治区を旅行したことがあります。陝西省の西安から長距離列車で甘粛省の敦煌、そのあとウルムチに入り、さらにバスでカシュガルまで向かいました(当時まだウルムチ・カシュガル間に鉄道は開通していません…

赤い闇 スターリンの冷たい大地で

先日、夕飯を作りながら「報道1930」というニュース番組を見ていたら、今次のロシアによるウクライナ侵攻に関連して『赤い闇』という映画が紹介されていました。ホロドモールと呼ばれる、1932年から33年にかけてウクライナを中心に発生した大飢饉を扱った作…

現代経済学の直観的方法

先日、某所で、中国語と日本語の単語に関する授業を担当しました。その中で日本語に多く見られる一連の外来語(カタカナ語)を取り上げました。特に中国語母語話者のみなさんにとって、この節操がないと言ってもいいほど頻出するカタカナ語は「鬼門」のひと…

教えようとしても教えられない

ずっと以前に古本屋さんで購入した、十四世喜多六平太氏の聞き書きをまとめた『六平太芸談』を読んでいたら、こんなひと言がありました。 教えようたって教えられない、習おうたって習えないところに値打ちがあるのさ。学者ぶりは芸には禁物だよ。 斯界の泰…

NHKのロシア語番組が終了というニュースに接して

『デイリー新潮』に、「NHK『ロシア語番組』終了の波紋」という記事が載っていました。Eテレのロシア語講座「ロシアゴスキー」が今月で終了するのはウクライナ侵攻の影響かとの憶測を打ち消す一方で、日本におけるロシア語教育の危機を訴える研究者の声を紹…

料理の四面体

初めて料理というものをしたのはいつの頃だったでしょうか。私の場合は、確か小学校の3年生だか4年生だかの時に、お湯に片栗粉を溶くと粘性のある液体ができるということを知って試したのが最初だったように思います。料理と呼べるかどうかははなはだ疑問…

料理をしない・できないということ

著者とのご縁、というようなものがあるようでして、世上の評判高く、複数の知人友人からも「とてもいいですよ」と勧められて読んでみるものの、どうしても肌の合わない本やその著者という存在はあります。批評家で随筆家のR氏も私にとってはそんなお一人で…

小さな習慣

習慣化、特になにか自分にとって「よいこと」を習慣化するためのコツについて書かれた本です。そのコツとは煎じ詰めて言えば「ばかばかしいほど小さなステップ」からはじめるということ。習慣化についての同様の主張は多くの方がされており、同様の本もたく…

問題集やドリルを習慣化する

日々仕事や家事に追われていて、平日はまとまった勉強や読書の時間が取れない……ずっとそんな悩みを抱えています。仕事も家事もできるだけ効率化しようとしているものの、一日があっという間に過ぎてしまい、「ああ、今日もろくな勉強ができなかった」と悔し…

鞄と夾板

新明解語源辞典を読んでいたら、「鞄(かばん)」の語源は中国語の“夾板(jiābǎn)”だという説が載っていました。ホントですか? 現代中国語で“夾板”という言葉はあまりポピュラーじゃないと思いますが、辞書を引けば「副木(そえぎ)、ベニヤ板、馬を車につけ…

どうやって本を選ぶ?

本を購入するときに、ネット書店のレビューを参考にしますか? 私は、いちおう参考にはしています。ただし、極端な意見をできるだけ読まないようにします。具体的には、例えばAmazonのレビューだったら、★5つと★1つは読まないようにするのです。中国語に“…

日本語がほとんど話せないのに大学院へ?

先日、職場のあるキャンパスに出勤して、守衛さんのところで研究室の鍵を受け取ろうとしたら、受験票を手にしきりに何か訴えている方がいました。その日はキャンパス内にある系列の大学院が入学試験をやっていて、どうやらその受験生のようです。守衛さんが…

童夢

高校生のときのクラスメートにM君がいました。漫画研究会に所属していて、素人目にも「うまい!」と思えるようなマンガを描いていました。M君は大友克洋氏の大ファンで、描くマンガの作風も大友氏に酷似していました。確か高校一年生か二年生の頃に週刊誌で…

スポーツゴジラ

仕事や私用で地下鉄都営大江戸線を利用することが多いのですが、その駅構内でときどき『スポーツゴジラ』というフリーペーパーを見かけることがあります。私は身体を動かすことは大好きですが、スポーツ競技にはあまり興味がありません。それに表紙に「toto…

オンライン授業にはない「冗長性」が必要なのかもしれない

斎藤環氏と與那覇潤氏の『心を病んだらいけないの?』を読んでいたら、最終章に「オープンダイアローグ」の話が出てきました。統合失調症や鬱病などの患者に対して、投薬ではなく、患者に関わる家族や友人、医師や看護師など、患者に関わる全ての人が参加し…

年齢に関係なく働く

東京は青山のスパイラルビル5階に「Call」というお店があります。デザイナー・皆川明氏のブランド「ミナ・ペルホネン*1」が展開している服飾や雑貨のお店で、食品販売コーナーやカフェもある面白い空間です。スパイラルといえば、私が学生時代に竣工したお…

セカンドキャリア本をあれこれ読む

現在勤めている職場はあと数年で「定年」になるので、最近はよくセカンドライフやセカンドキャリアについて考えます。実際には定年後も嘱託や非常勤で働き続けることもできるのですが、コロナ禍でどんな業界にも様々な変化が訪れている昨今、あれこれと考え…

知性は死なない 平成の鬱をこえて

與那覇潤氏の『知性は死なない』を読みました。2018年に単行本として出版された同書にいくつかの論考を加えた「増補版」です。 知性は死なない 平成の鬱をこえて 増補版 (文春文庫)その単行本をすでに読んでいた記憶があったので、増補分を中心にもう一度と…

歩きながら考える

もうひとつ、レベッカ・ソルニット氏の『ウォークス 歩くことの精神史』から。序章に出てきた「クリック一つで知のすべてをお約束します」という惹句がおどるCD-ROM版百科事典の広告についての話にもいろいろと考えさせられました。「クリック一つで」とその…

『ウォークス』を読んで筋トレの「おかしみ」を考える

レベッカ・ソルニット氏の『ウォークス』を読みました。「歩くことの精神史」という副題が付けられた大部の書です。歩行と思索、自然の中における歩行、都市における歩行などが、文学や宗教、社会運動や政治運動、はては革命、さらには女性と性と都市の公共…

アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書

「そもそもお金とは何か」から始まって、就職、転職、キャリア選択、貯金、会計、借金、投資、税金、保険はもとより、破産や詐欺、さらには老後資金にいたるまで、お金に関する基礎知識をわかりやすく解説した一冊です。ごくごく初歩的な基礎知識しか書かれ…

マクドナルドとの再会

『反逆の神話』を読みながら、いわゆる「マクドナルド化」への批判に対して、その批判が必ずしも世の中の実態を正確に踏まえていない可能性について考えました。マクドナルドに代表されるような巨大フランチャイズやチェーンが地域の文化を壊し、大量生産さ…

「どこもかしこも同じ店ばかり」か?

ジョセフ・ヒース氏とアンドルー・ポター氏の共著『反逆の神話』には、こんな一節もありました。 アメリカ合衆国を旅してまわる人は、どこもかしこも異様なほど同様であることに強く印象づけられずにはいられない。どのショッピングセンターにも、ほかのどこ…

自分でパンを焼き羊毛を紡ぐ

公害を生みだしてしまったような「大量生産・大量消費」にあらがって「低生産・低消費」の生活を実践しながら模索する。それをテーマの一つに掲げて運営されていた水俣生活学校での生活は、とても楽しいものでした。qianchong.hatenablog.com以前からやって…

異議申し立てと逸脱の混同について

もうすぐ2022年を迎えようという今となってはちょっと信じられないくらいですが、かつて喫煙がほとんどどこでも自由に行われていた時代がありました。ほとんど、というのは病院など医療施設や小中学校の施設内などではさすがに行われていなかったような記憶…