インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

しごと

オンライン授業への対応に明け暮れた今年(そしてまだまだ続く)

週一回のフィンランド語教室は、今週から全面オンライン授業になりました。教室は横浜にあって、横浜近辺の生徒さんは学校に通い、私のような遠方(?)の生徒はこれまでもオンラインで参加してきたのですが、それが一律オンラインとなったわけです。先生も…

日本語を教えるのなんて簡単?

留学生の通訳クラスで、外部から講師をお招きして講演会を行っていただき、その通訳をするという実習を企画しました。今回の講師は台湾人の言語学研究者で、日本人が中国語を学ぶ際に見られる問題点や課題などがテーマとなっています。それで事前に提供され…

再び言語リテラシー教育(のようなもの)の必要性について

通訳の仕事をしていると、時々とても奇妙な「言語観」を披露してくださるクライアント(お客様)に遭遇することがあります。そうした方々は、通訳業務の前に決まってこんなことをおっしゃいます。「言った通りに訳してくれればいいから」。つまり通訳(や翻…

『チョンキンマンションのボスは知っている』を読んで

香港は九龍半島の突端、メインストリートである彌敦道(ネイザンロード)に面して重慶大廈(チョンキンマンション)という有名かつ巨大な雑居ビルがあります。下層階には両替商や貴金属店や飲食店などが入っていて、上層階は安宿やいろいろな事務所になって…

オンライン授業に「うな担」がほしい

昨晩偶然に見たNHK『ガッテン!』の「ビデオ通話の極意」は興味深い番組でした。オンラインの会議や授業が盛り上がらないのは「うなずき」と「身振り手振り」の少なさというお話。なるほど、そうだったのか。www9.nhk.or.jpZoomなどを使ったビデオ会議システ…

オンライン授業での学びにくさ

先週は公私ともに忙しくて、ジムのパーソナルトレーニングに行くことができませんでした。このジムにはずっと週二のペースで通っていたので、週末に顔を出したら「どうしました?」と心配されました。「やっぱりコロナ関係で忙しいんですか?」と。確かにコ…

外語の報道から日本を見つめよう

先日、Twitterのタイムラインでこちらのツイートを拝見しました。「政治報道の劣化が政治の劣化を招いた」。本当に、その通りだと思います。菅総理の支離滅裂な国会答弁を聞いていると、7年8カ月もの間、1日2回の官房長官会見をこなしてきたとは到底思え…

GoToキャンペーンの「はしたなさ」

とある新聞の投書欄に、こんな趣旨の意見が載っていました。「最近のテレビのワイドショーでは『GoToキャンペーン』の話題が花盛りで、いかに特典をうまく使うかの紹介を競っているが、本当に困っている人はそれどころではない……」と。私も、景気を刺激する…

丁寧に考える新型コロナ

岩田健太郎氏の『丁寧に考える新型コロナ』を読みました。「もう、『分かったつもり』はやめよう!」と帯の惹句にあるとおり、検査について、マスクについて、リスクヘッジについて……感染症専門の臨床医の立場から丁寧に説明されている本です。書名のとおり…

留学生の「インタープリターズ・ハイ」

先日、勤めている学校のひとつで留学生クラスの通訳実習を行いました。外部から様々なご専門の講師をお招きして講演を行っていただき、それを通訳するというものです。単に講演当日に通訳するだけではなく、「自分が実際にこの仕事をうけたらどんな準備をす…

Zoomの授業でスマホの画面と音声を共有する

中日通訳のクラスで、学生さんと一緒に固有名詞(地名や人名など)を覚えるときにスマホのQuizletアプリを使っています。固有名詞は文脈や文の前後に関係なく登場する独立した情報であることが多いので、「脊髄反射」的に訳語が出ないと即アウト!……というこ…

『生きる技法』とお金の使い方

安冨歩氏の『生きる技法』を読みました。200ページ弱の薄い本ですが、とても感銘を受けました。この本はまず冒頭で「自立とは依存することだ」という命題を掲げています。そして、依存する相手が増えるほど人はより自立し、減るほど人はより従属するというの…

外語学習における「いじましさ」

PV数(ページビュー数)という言葉がありまして、ウェブサイトのあるページが、どれだけブラウザで開かれたか(読み込まれたか)を示す数です。私のこのブログはふだん300PV/日くらいで微々たるものなんですけど、昨日はそれが突然10倍くらいになっていまし…

通訳報酬の「時給化」について

通訳者として登録しているエージェントさんから、アンケートへの回答を求められました。エージェントとは、通訳者の派遣や通訳者を使った業務のコーディネートなどを行っている会社です。アンケートの内容は、コロナ禍で通訳者の業務環境が大きく変わりつつ…

コロナ禍が対中観に与えるかもしれない影響

国産ジェット機の開発が事実上凍結。携わってこられた方々からすれば無念だとは思いますが、一度走り始めたらどんなに無理筋でも止まらないというこの国にしては、まだまだ賢明なトップはいるのだと思わせてくれて、かすかな希望を感じたニュースでした。thi…

空気を読む留学生

先日、ジムで休憩している時にトレーナーさんから「若い人たちがとにかく『空気を読む』んですけど、アレはなんなんでしょうね」と聞かれました。このトレーナーさんも30歳代でお若いのですが、20歳代前半のトレーナーさんたちに研修をする立場なのだそうで…

日本になんて来たくなかった?

何年か前、とある企業の幹部職員候補者向けセミナーに通訳者として伺ったことがありました。この企業は本社が日本にあり、中国を含む世界各地で大規模に事業を展開しています。そのセミナーは、中国各地の中堅職員を日本に呼んで、本社の企業理念や経営方針…

試験や評価を一切やめてみたらどうか

昨日ネットで、こちらの映像に出会いました。日本の小学校で行われているマラソン大会で、子どもたちを競わせて順位をつけることに教育的意義を見出す日本の校長先生と、運動が得意ではない子供に「もう運動はやりたくない」と思わせるだけではないかと指摘…

外語学習で恥やプライドを捨てる勇気について

明治から昭和にかけジャーナリストとして、また随筆家や俳人などとしても活躍した杉村楚人冠(すぎむら・そじんかん)という人がいて、『外國語と芝居氣』という文章を書いています*1。いくつか文章を抜き出してみます。 年を取ると外國語を使ふのが馬鹿にお…

日本語を話したがらない華人留学生のみなさんへ

外語を学ぶと、その言語で話したくなります。外語を学ぶ目的は人によって様々で、中には書籍や文献を読むことができればいい、聞いたり話したりは必要ない、という方もいるかもしれません。でも私は読んだり書いたりはもちろん、やっぱり聞いたり話したりも…

翻訳における「キャラ立ち」

先日の東京新聞で、師岡カリーマ氏が「翻訳の職業差別」というコラムを書かれていました。外語を日本語に訳す際に、男尊女卑が透けて見える「無意識の印象操作」が行われているという批判です。またスポーツ選手など特定の職業の人々の発言を訳す際にも、な…

オンライン授業で悩む学生への対応

オンライン授業と対面授業の違いについて、このブログでもいろいろと書いてきました。半年間オンライン授業をやってみて分かったもう一つの問題点は、こうした授業形態に適応できない学生が一定程度いることです。オンライン授業、あるいは遠隔授業はある程…

対面授業の復活がうれしい

10月を控えて、今年度の授業もようやく折り返しに近づきました。思えば4月にすべての授業が「遠隔対応」となって以来、怒濤のように次々と沸き起こる問題に対処し続けてきた半年間でした。それでもまあ、春まではZoomでのミーティングもGoogle Classroomの…

日本語のアウトプットに消極的なのはなぜ?

私が勤めている学校のひとつは、学生が全員外国人留学生です。母語は中国語、英語、タイ語、スペイン語、ベトナム語、イタリア語、ミャンマー語、スウェーデン語、ロシア語……と実にさまざま。ビジネスレベルの日本語習得を目指すと同時に、通訳や翻訳の訓練…

やめましょうよ。

朝日新聞デジタルに、興味深い記事が出ていました。菅政権の発足に伴って文部科学副大臣と政務官が初登庁したという記事ですが、認証式などで時間が遅れ、なんと深夜11過ぎになったうえ、同省の職員が100人以上待機して出迎えた……というものです。www.asahi.…

中国語のあまりに巨大な存在感について

何十年か前、はじめて香港へ行ったときのこと、とあるお茶屋さん(茶葉の販売店)で中国語(北京語)を使ったら、あからさまに無視されたことがありました。何度話しかけても、まるで私がそこにいないかのように無視をする。私も海外ではいろいろな目に遭っ…

試験も成績もいらない?

夏が終わり、期末試験の季節がやってきました。私が勤めている学校のうちの一つは四月に開講して、前後期の二学期制なので九月の末に前期末試験があるのです。毎年この時期になると不思議に思うのは、普段の授業にはあまり身が入っていないように思える学生…

じいさんばかりが跋扈する

昨日の東京新聞朝刊に「フェミニズムの過去・現在・未来」という記事が載っていました。「女らしくすべし」でも「女は毅然と生きるべし」でもない「ここに居る女」として生きる、右でも左でもない真ん中を生きるとおっしゃる田中美津氏。かつては女性学がア…

哲学しててもいいですか?

三谷尚澄氏の『哲学しててもいいですか?』を読みました。副題に「文系学部不要論へのささやかな反論」とあるように、注意深く、かつ控えめな筆致で、でも大きな危機感を持って書かれた本です。最終的には主題通り、大学の文系学部、なかでも哲学教育の大切…

ゴムの伸び切ったような人間になってはいけません

ブログ『脇見運転』の酔漢さんが、かつて恩師に言われたという「丁字型の人間を目指してください」という言葉を紹介されていました。そのこころは「丁の縦棒は専門性を深く掘り下げること、横棒は専門以外の知識を広く浅く身に付けること」だそうで、なるほ…