インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

通訳・翻訳

翻訳という「愉悦」

私が担当している留学生の通訳翻訳クラスには「英日班」と「中日班」の学生がいます。つまり英語・日本語間の通訳や翻訳を勉強している人たちと、中国語・日本語間のそれを勉強している人たち。みなさん、通訳や翻訳に興味があるのに加えて、言語を活かして…

Adobe Premiere Proで文字起こしができちゃった

仕事柄、通訳教材を作るときや自身の語学の勉強のためにも、よく外語の動画や音声の「文字起こし」を行っています。いわゆる「ディクテーション(中国語:聽寫)」というやつです。その昔は「テープ起こし」などと称していて、文字通りカセットテープに録音…

音声認識の進化と人間の役割

人工知能(AI)の技術が進化するなかで、機械翻訳の精度も向上しつつあります。そうした文字ベースの言語変換は実用に耐えうるようになってきた一方で、音声ベースの変換はまだまだ難しいという認識がありました。特に生身の人間は必ずしも明瞭な発話をする…

AIを使って英語や中国語の会話を練習する

ChatGPTは文字でやり取りするほかに音声でもやり取りできる……ということで、ChatGPTと会話の練習をしてみようと思いました。やりかたはネットや既刊本にさまざまな方法が書かれています。まずはパソコンのChromeに拡張機能の“Voice control for ChatGPT”を入…

AIの進化と人間の役割

先日AIを使った語学学習や翻訳について考えていた際、このブログに「自分はこうしたサービスを使う際に必要となるそうした知識や教養を育むことにこれからも専念すればよく、一方でこうしたサービスの便利なところはどんどん活用させてもらうというスタンス…

翻訳AIの進化と言語学習の意義について考える

Google翻訳やDeepLなどの機械翻訳、またChatGPTなどの生成AIによる翻訳が実用に供され、その能力がどんどん上がっていると喧伝されているなか、もう翻訳を学ぶ意味はなくなってきたのではないか、さらには外語学習自体が陳腐化していくのではないか……そんな…

子どもが「タブルリミテッド」になる心配はない?

偶然立ち寄った書店でこの本を見つけました。ビオリカ・マリアン氏の『言語の力』です。副題には「『思考・価値観・感情』なぜ新しい言語を持つと世界が変わるのか?」とあります。これはおもしろそう! そして実際、とてもおもしろく刺激的な一冊でした。こ…

十二世紀ルネサンス

伊東俊太郎氏の『十二世紀ルネサンス』を読みました。この書名を見て、疑問を覚える方もいるかもしれません。ルネサンスといえば14世紀から16世紀の文化運動じゃないの、ギリシアやローマの文化を復興しようということで、ダ・ヴィンチとかミケランジェロと…

体育がきらい

語学と演劇 私が奉職している語学学校では、通訳訓練に演劇を取り入れています。年に一度だけですが、秋の文化祭に向けて二ヶ月間ほど「語劇」の練習を行い、一般のお客様も含めた多くの観客に見てもらうというものです。「語劇(ごげき)」というのは聞き慣…

魔改造の夜と日本語劇

NHKに『魔改造の夜』という番組があります。www.nhk.jpありふれた家電やおもちゃを一流の技術者やエンジニアたちが寄ってたかって改造し、「えげつない」ほどのパワーを発揮するマシンに仕立てた上で三つ巴の戦いを行うという企画。ロボコンに似ていますけど…

必要になってから外語を学んでもいい

“What languages are usually taught in schools where you live?(あなたが住んでいる地域の学校では、通常どのような言語を教えていますか)”ーーオンライン英会話でengooのニュース教材を使っていたら、こんな質問がありました。そうチューターに問われて…

語学における近道

マーカス・デュ・ソートイ氏の『数学が見つける近道』を読みました。ソートイ氏といえば同じ新潮クレスト・ブックスから出ている『素数の音楽』が大好きな一冊なのですが、この本も同様の知的好奇心を刺激される、とても面白い内容でした。 数学が見つける近…

中国語でアルファベット

アルファベットをどう発音しますか。綴りを説明するとき、あるいは記号としてのアルファベット、型番や商品名などに含まれているアルファベットを読み上げるとき、日本語母語話者ならおおむね以下のように発音すると思います。 A(エー/エイ)、B(ビー)、…

王菲を知らないって

先日留学生の通訳クラスで「その時代の流行歌」という話題が出てきたので、私が中国語を学んでいた頃は歌手の“王菲(ワン・フェイ/フェイ・ウォン)”が人気でした……と言ったら、なんとほとんどの華人留学生がその名前を知りませんでした。「センセ、“網飛(…

思考がどんどんやせ細っていくのでは

先日、とある留学生が提出してきた日本語のレポートに違和感を覚えました。とても上手にかけているのですが、ふだんの授業中の作文や発言に比して、上手すぎると感じたのです。これはもしや……と思って、その課題と同じ文章をChatGPTに入力してみたら、件の留…

背景知識が会話を後押ししてくれる

オンライン英会話のCambly、週3回のペースでまだまだ続けています。例によって講師には「当たり外れ」(失礼)がありますが、けさ担当してくださった先生はチリ出身のアメリカ人で、とても感じのよい方でした。観光産業に従事されたことがあるそうで、ちょ…

世界の都市名をカタカナで正確に書こう

留学生の通訳クラスでは、いろいろな角度から日中・中日通訳翻訳の訓練をしています。私は通訳、つまり音声を聞いて音声を出すことに特化した訓練を担当しているのですが、チャイニーズ(中国語母語話者)のみなさんが語彙量を増やす上で「鬼門」としている…

留学生にとって「鬼門」のカタカナ表記

勤め先の学校では新学期が始まり、今週は各種のオリエンテーションが行われています。うちの学校は二年制で、上級生(二年生)はすでに学校のあれこれになじんでいるのですぐに通常の授業に入ってもよいのですが、コマ数やシラバスなどとの関係があるので、…

惜しいなあ

先日帰省した際に国内線の飛行機を使いました。私が使っているクレジットカードで羽田空港のラウンジが利用できるので、出発までそこで待っていましたが、興味深いなと思ったのがラウンジに設置されていた無料で飲めるコーヒーのサーバーです。 ▲アイスメニ…

語学の上達はメンタルブロックを破壊できるかどうかにかかっている

勤め先の学校は新学期を迎え、今年も世界中から留学生が新たに入学してきました。私が担当している学科も昨日が入学式で、コロナ禍でしばらく途絶えていた中国大陸からの学生さんも見かけるようになりました。入学式後のオリエンテーションで、担当の先生方…

しまじまの旅 たびたびの旅 113 ……泉鏡花記念館と金沢能楽美術館

金沢に来たのは初めてなので、ひととおり観光しようと思いました。が、なにせ人の多いところに酔ってしまう私なので、早朝から兼六園に出かけてきました。GoogleMapによれば、兼六園は朝八時から開いているそうです。しかもこの時期は「観桜期」で無料開放と…

人が人であるかぎり

先週職場の学校で「研究活動報告会」というものがありました。これはそれぞれの教員が日々行っている授業や教材作りなどの実践を報告し、広く共有しようという企画です。私は通訳や翻訳の授業を行っている教員を代表して、訓練や実習の実際をスライド資料に…

ChatGPT

人間とほとんど区別がつかないと話題の自然言語AI「ChatGPT」を試してみました。その機能と性能、現時点で考えうるリスクなどについては、こちらの「テレ東BIZ」の動画が参考になります。www.youtube.com「ChatGPT」に関する私自身のおぼろげな認識では、文…

アップデートの必要

私は現在、専門学校や通訳学校でいくつかのクラスを担当しています。その中には通訳・翻訳訓練の一環として「放送通訳」や「字幕翻訳」などの授業も取り入れています。いずれもかつて自分が学んだり仕事にしたりしてきた経験を元に教材や教案を考えているの…

もう少し中国語のことを知ってくださったら

ちょっと前にケイレブ・エヴァレット氏の『数の発明』を読んでいたら、こんな記述が出てきました。 世界では今も昔も、さまざまな計算盤や計算機が使われていて、これを使えば使用者にとっては明らかに便利だ。日本の計算機(何世紀も前に中国のスアン・パン…

龍角散の注意喚起広告が興味深い

今朝の新聞に、興味深い広告が載っていました。「第三類医薬品『龍角散ダイレクト』『龍角散』の大量購入及び中国への輸出に関する注意喚起」という広告です。一読、ああ、いわゆる「爆買い」によって、龍角散が品薄になっているのだなと分かりますが、私が…

言語はこうして生まれる

“For sale, Baby shoes, Never worn.(売ります、赤ん坊の靴、未使用。)”という、英単語たった6つの「物語」が冒頭に載せられています。注釈によれば、これはヘミングウェイが作った最短の物語という都市伝説まで生まれたほど有名なものなのだそうですが、…

特に優秀な留学生から減っていきそう

私が奉職している専門学校では、外国人留学生が通訳や翻訳の技術を中心に学んでいます。様々な言語を母語とする留学生が在籍していますが、通訳や翻訳は「英語↔日本語」と「中国語↔日本語」の2コースのみです。以前は「韓国語↔日本語」のコースもあったので…

放送禁止用語を使っちゃった

今週は通訳者の話題で一時ネットが盛り上がっていました。サッカーワールドカップにおけるアルゼンチンの選手へのインタビューで、スペイン語の同時通訳者が繰り返し「放送禁止用語」と使ったという話題です。www.youtube.com個人的にはこういう「言葉狩り」…

教室の風景もさまがわり

きょうは本務校とは別の通訳学校に出講してきました。この学校にはもう十五年以上お世話になっています。私のように元からして三流で、しかも現在では第一線を退いて細々と通訳や翻訳に関わっているだけの人間が講師というのもかなりおこがましいのですが、…