インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

話しかけないヘアサロン

よしながふみ氏のマンガ『きのう何食べた?』の最新第23巻で、美容師をしているケンジの母上がこんなことを言っていました。「おしゃべりが好きで美容師の仕事をやってきたようなものですからね」。


よしながふみ『きのう何食べた?』第23巻102ページ

美容師のみならず、お客さんのほうにもヘアサロンでおしゃべりするのが好きという方は多いようで、私の妻もそのひとりです。いつも「スタイリストの◯◯さんと話すのが楽しみであのお店に通ってる」と言っています。私はというとその真逆で、とにかく美容師に話しかけられるのが極端に苦手な人間。人前で話をするような仕事をしているというのに、ほとんど「コミュ障」と言ってもいいくらいのレベルで苦手なのです。

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ところが最近、美容師に話しかけられるのが苦手だという方は世の中に存外多いということを知りました。それどころか客に話しかけないことをサービスとして謳っているヘアサロンまで数多く存在するのです。というわけで、通勤途中に利用している乗り換え駅近くの、とある「無言接客サービス」を掲げるヘアサロンに行ってきました。

無言接客とはいえ、カットやカラーについての要望を聞くとか、洗髪時の「お湯加減はいかがですか*1」的なやりとりはもちろんあります。でもこのお店では美容師が「客のプライベートの話を自分から聞かない」、「自分のことを自分から語らない」​ことをポリシーにしているんだそうです。つまり美容師のほうから積極的に話しかけないというサービスなのだとか。

実際に利用してみて、美容師から話しかけられないことが分かっている状態というのは、正直ラクだなあと思いました。ただこのお店は客に一人ずつ対応する、いわゆるプライベートサロンという形式なので、ただただBGMだけが低く流れる空間でえんえん佇んでいる(iPadでいろいろな雑誌が読めるようになってましたが)というのも、それはそれで気疲れしました。

「じゃあどうすりゃいいんだよ!」と美容師さんにキレられそうですね。でも何といいますか、プライベートサロンじゃなくて、適度に店内がざわざわしていて、美容師との会話を楽しみたい客は楽しんでる中で、私には話しかけられない状態が保たれてるってのが理想かしら。ほんとうにわがままでごめんなさい。

でも HOT PEPPER Beauty みたいなヘアサロンの予約サイトでは、カットやカラーなどのメニューに加えて「接客へのご要望」として「なるべく静かに過ごしたい」を選んで検索できるようになっていますから、こんどはそれも使って、上述したような理想のヘアサロンを探してみようと思っています。

*1:すごく偏狭なことを申し上げれば、ほんとうはこれも聞かないでほしいです。美容師に判断していただきたいところですし、もし本当に熱かったり冷たかったりしたら自分から言います。シャンプー時の「流し足りないところはありませんか」や「痒いところはありませんか」も、前者はやっぱり美容師が判断すべきことだと思いますし、後者は仮にあったとして説明するの難しくありません? 結局いずれも小声で「だ、大丈夫です……」としか言えません。