インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ほん

あいうえおの歌

第二次世界大戦時の1942年から1945年にかけて出版された、『FRONT』(フロント)という大判のグラフ誌があります。原弘、木村伊兵衛など、後に昭和を代表するデザイナーやフォトグラファーとなるメンバーが所属していた、大日本帝国陸軍参謀本部の直属出版社…

インドネシアをめぐる二つの作品

『桃太郎 海の神兵』というアニメーション映画があります。日本の敗戦が色濃くなっていた1944年に製作され、翌年の春(つまり終戦・敗戦の年)に公開されたこの作品、戦時中によくまあここまでというくらい見ごたえのある作品になっており、逆にそれが国策映…

「そういう文化なのだ」に感じる妙なリアリティ

もうずいぶん前の話ですが、その国のとある大学で、正門前の歩道にたむろしている何人かの女性を見かけたことがあります。女性はなぜかいずれも赤ちゃんを腕に抱いており、通りかかるわれわれに“辦證,辦證,要辦証嗎?(証明書、要らない?)”と呼びかけて…

カレー料理の「バイブル」

ネットで評判になっていた、稲田俊輔氏の『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分!本格インドカレー』を買いました。評判通り、これはものすごい料理本です。私はカレーが大好きでよく作るのですが、この本でカレーに対する概念(?)がすっかり変わ…

10年後に食える仕事 食えない仕事

先日、住んでいる区の区役所から「特別区民税・都民税通知書」という分厚い封筒が届きました。毎年のことですけど、紙の納付書が五枚も同封されています。一括納付専用の一枚と、分割納付用(6月・8月・10月・翌年1月)の四枚。私は毎年一括して納付して…

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ブレイディみかこ氏の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読みました。昨年からベストセラーとの評判で、書店の店頭に平積みになっているのを気になりながらも未読でした。が、一読、引き込まれて一気に読み終えてしまいました。多様すぎるほ…

デオドラントされたキャンパス

Amazonのブックレビューはなるべく読まないようにしているんですけど、新聞の書評欄は必ず読みます。評者の質の高い文章が読めますし、普段の自分の興味がおもむく範囲では絶対に巡り合うことはないような本を発見することができるからです。書評欄は各紙に…

ファクトフルネス

ハンス・ロスリング氏の『ファクトフルネス』を読みました。昨年からのベストセラーで評判はあちこちで目にしていたのですが、遅ればせながらようやく読んだ次第。評判通り、とても衝撃的で大きく目を見開かされる内容でした。 FACTFULNESS(ファクトフルネ…

新しい生活様式

新型コロナウイルス感染症との並走が長引くにつれて、なんとも重苦しい雰囲気が社会に充満しています。「自粛警察」などという言葉に嫌悪感を抱きつつも、「三日に一度」と言われマイバッグを二つも持参して向かった近所のスーパーに、家族連れで子どもを「…

『遅いインターネット』を読んで

つい最近まで、SNSの「断捨離」をしていました。きっかけはカル・ニューポート氏の『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』を読んだことで、SNSがいかに「注意の経済」と深く結びついており、暮らしや仕事から時間と主体性を奪っていくかを痛…

『三体』を楽しめる素養(のようなもの)

在宅勤務でなくなった通勤時間ぶんを利用して、書棚で積ん読になっている本を片っ端から平らげています。先日は劉慈欣氏の『三体』を(遅ればせながらに)読みました。 三体中国語圏のみならず英語圏でも人気だそうで、続編の二冊をあわせた「三体」三部作で…

『猫を棄てる』の挿絵

村上春樹氏の『猫を棄てる』を読みました。氏の父上について書かれた短編で、そこに添えられた高妍氏の挿絵に強く惹きつけられました。高氏は台湾出身のイラストレーターで、日本にも留学されていたことがあるそうです。 猫を棄てる 父親について語るときど…

「一瞬で消えるようなものではなくて」

先日、新型コロナウイルス感染症から回復した俳優のトム・ハンクス氏が、「コロナ」という名前からいじめの被害にあっていたオーストラリアの少年からお見舞いの手紙をもらい、その返答とともに「スミス・コロナ社」製のタイプライターを贈った、というニュ…

「中国的なもの」に向き合う姿勢

台湾の新聞ポータルサイトをのぞいていると、今回の新型コロナウイルス感染症に対して“武漢肺炎”という呼称が使われていることに気づきます。政治的に中華人民共和国と距離を置く紙面編集路線の『自由時報』や『蘋果日報』がそうです。一方親中的スタンスを…

ポラリスが降り注ぐ夜

もうずいぶん前のことなので、誰と話したのか、どういう状況でそんな話になったのかも思い出せないのですが、中国語を話す時に“怎麼說呢……(なんと言ったらいいかなあ)”を使わないようにしようと語り合ったことがありました。“怎麼說呢”というのは一種の間…

教室へのICT活用入門

書名の通り、ICTつまりコンピュータやインターネットを活用した「情報通信技術」を教育にどう持ち込むかについての「基本のキ」から解説した本です。ごくごく初歩的な用語の解説や、さらに学びたい方向けの参考書籍なども豊富に載っていて、初心者にやさしい…

語学を細々と続ける

「COVID-19」が社会全体に影響を与えているこの大変な時期。仕事や暮らしのことで精一杯で語学なんて、ましてや趣味の語学なんていちばん後回しになりそうな状況です。実際、趣味で続けているフィンランド語の講座は、学校から休講のお知らせが来たっきり、…

未来予想なんてムリだった

社会的距離(ソーシャルディスタンス)を取るよう求められています。感染爆発の可能性を少しでも減らすために有効だとのこと。それでも、この方針に完全に従おうと思ったのはごく最近のことでした。私は毎日ブログを書いているので、過去に遡って自分を見つ…

本棚スキャン

古書の流通において面白い取り組みを次々に打ち出している、長野県は上田市のバリューブックスさん。手持ちの本の買取価格をスマホでかんたんに査定できるという「本棚スキャン」というサービスをされています。昨年から始まっていたこのサービス、遅まきな…

ウイルス側の「戦略」

ジョセフ・ヒース氏の『啓蒙思想2.0』を読んでいたら、とてもタイムリーな記述に出会いました。昨今の新型コロナウイルス感染症を彷彿とさせる記述です(この本の出版自体は2014年)。 私たちがウイルスに対応するべく適応を遂げてきたこと、たとえば免疫系…

自然言語処理にいたるまでの壮大な物語

四月に入り、職場への通勤が復活しました。……が、新学期の開始はゴールデンウイーク後まで延期されたため、教員の自宅勤務は継続ということに。でも私は「小人閑居して不善を為す」を地で行くような人間なので、自宅にいると仕事が全くはかどりません。とい…

薄暗がりが好き

私は「薄暗がり」が好きです。と言ってもそれは屋内についてだけで、屋外に出たらぱあっと明るいほうが好きですが。特に今日のような雪が降っている日など、しんと静まり返った家の中で電灯はつけず、雪の白さに反射してわずかに入ってくる外の明るさだけで…

社会の静けさに明るい未来を見る

都民は不要不急の外出を避け、できるだけ自宅にとどまってほしいという呼びかけをうけて、ずっと家にこもっています。もともとはこの週末にチケットを買ってあったお能の公演があったのですが、ぎりぎりまで開催を模索したものの結局延期になりましたという…

謝辞なんていらない

ネットで検索していたら、とある大学での卒業式における「謝辞」を見かけました。型通りのものとは全く違ったスタイルのその謝辞は、SNSなどでも「パンク」だ「ロック」だなどと形容され絶賛されていました。www.univ.gakushuin.ac.jp個人的にはこの謝辞で、…

ヨタへロ期

東京新聞の朝刊を読んでいたら、「ヨタへロ期」という言葉に遭遇しました。評論家の樋口恵子氏の造語で、健康寿命(自立して日常生活を送れる期間)と平均寿命の間の十年前後を指すのだそうです。加齢により様々な場面で自分の思うように行かないシチュエー…

「言の葉」のフィンランド

職場から業務は基本的に「テレワーク」として学校へは極力出てこないようにとのお達しがあり、通勤時間の浮いたぶん、これまで「積ん読」だったたくさんの本を消化できるようになりました。とくに大部の本はこうやってまとまった時間があるときじゃないとな…

電子書籍が「どうしてもダメ」な理由

私は電子書籍が苦手です。とはいえ、これまでにおよそ150冊くらいは購入してきました。これだけ普及しているのに電子書籍に手を出さないのも何だか固陋で頑迷な爺さんまで一直線のような気がしますし、使ってみれば新しい発見があり、自分も変わるかもしれな…

バッハ・古楽・チェロ

先日の東京新聞に、オランダのチェリスト、アンナー・ビルスマ氏のCDに関する小さな記事が載っていました。親交のあった日本の音楽評論家・佐々木節夫氏の死去に際し、ビルスマ氏の発案によって東京の教会で行われた追悼コンサートを収録したCDが発売された…

職員室のモノを捨てる

題名にある通りの、そのものズバリの本です。小学校の教諭である丸山瞬氏が、職員室にあった何十年前のものとおぼしき「ベル」を片付ける話から始まるその内容は、学校現場に勤めたことがある方なら誰もが「そうそう!」と頷くことしきりです。そしてその一…

無邪気な冷笑

ジムでベンチプレスの休憩をとっているときに、トレーナーさんと「五輪は延期ですかねえ」という話になりました。新型コロナウイルスによる感染症が、WHOも「パンデミック」だと認めざるを得ないほど広がっている昨今。それでも「開催一択」といい続けている…