インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ほん

「向き不向きがある」の危うさについて

先日読んだアンダース・エリクソン氏とロバート・プール氏の共著『超一流になるのは才能か努力か?』で、もうひとつ考えさせられたのは、「生まれながらの天才」はいるのかという問題です。 人間の資質に関する議論のなかでも、生まれつきの才能が能力を決定…

ベテラン勢がなかなかやめない理由

アンダース・エリクソン氏とロバート・プール氏の共著『超一流になるのは才能か努力か?』という本を読みました。留学生の通訳クラスで行っている「講演通訳」の授業で、学生のひとりがおすすめしてくれた一冊です。いかにも自己啓発本といったタイトルで、…

戦争と日本アニメ

留学生のクラスで「東アジア近現代史」の授業を担当していて、ここ数週は大東亜共栄圏について話したり、みなさんが調べたことを発表してもらったりしています。毎年授業の一環として、1943年から制作が開始され1945年に公開された長編アニメーション映画『…

最後の読書

ここ数週間ほど、ひどく疲れていました。にわかに蒸し暑くなった気候のせいもあるのかもしれませんが、とにかく身体が疲弊していて「しんどい」のです。それでもジムには通っていますが、ふだんよりメニューがはかどりません。しかもお昼を回って夕刻にいた…

人はどう死ぬのか

誰にも必ず訪れる死について、ひとりひとりが自分の頭で考え、自分なりの「自分の最期はこうありたい」というスタンスを持っておくべき、また自分の親しい人々についても、その死に際してどういうスタンス持つべきかあらかじめ心構えを持っておくべきーー久…

ニッターズハイ!

マンガ『ニッターズハイ!』の第2巻が発売されていたので、Kindle版を買って読みました。ケガで陸上選手としての夢を絶たれた主人公の高校生が、手芸部で「ニット」という新たなフィールドを見つけていくというお話。陸上から手芸へという転換が意外なら、…

「誰もが自分と同じように行動すれば気持ちいい」か

毎朝通っているジムは比較的規模の大きな施設で、早朝から多くの方が運動されています。館内にはこういったジム特有のアップテンポな曲が流れており、加えて頻繁にアナウンスも流れてきます。スタジオプログラムの開始を知らせるアナウンスも多いですが、そ…

2030半導体の地政学

先般アメリカのバイデン大統領が来日した際、記者会見で台湾有事の際には「台湾を守るため軍事的に関与する意思があるか」と問われて「イエス」と答え、これを「うれしい失言」などと何だか奇妙な喜び方をしていた政治家がいました。大手マスコミにも「同様…

文化がヒトを進化させた

インターネットを「集合知」という言葉で形容することがあります。集合知(集団的知性)は、辞書的には「多くの個人の協力と競争の中から、その集団自体に知能、精神が存在するかのように見える知性」*1ということで、とりわけネットのそれはSNSの登場以降ち…

cakesが終了と聞いて

クリエイターと出版社、そして読者をつなぐというコンセプトの「cakes(ケイクス)」がサービスを終了するそうです。cakesには好きな連載記事もいくつかあって、私も一時は課金していたこともありました。書籍化されて買った本もけっこうあります。ただここ…

超没入:メールにもチャットにも邪魔されない、働き方の正解

私はGmailのアカウントを3つ持っています。1つは個人用、残りの2つは仕事用です。以前は個人用のアカウント1つで仕事にも兼用していたのですが、仕事の幅が広がるとともにアカウントも増えました。最初に使い始めたアカウントの「すべてのメール」で一番…

ひらやすみ

私は電子書籍というものが苦手です。なんど挑戦しても、紙の本のようには内容が頭に入ってこないので、もうすっかりあきらめてしまいました。ただし、マンガだけは基本的に電子書籍を買うことにしています。マンガはすぐに増殖して本棚の少なからぬ場所を占…

ホールフード

先日読んで非常に面白かった『科学者たちが語る食欲』に触発されて、なるべく「超加工食品」に手を出さず、一方で「ホールフード」の摂取を増やそうと思い立ちました。といっても、それほど大したことでもなく、以前はふつうにやっていたものの最近忙しさに…

科学者たちが語る食欲

食欲とは、すなわち「タンパク質欲」だったーー人間を含む動物における「食欲」のメカニズムについて、衝撃的な研究成果を紹介している一冊です。とにかく面白くて、一気に読み終えてしまいました。 科学者たちが語る食欲全部で367ページとそれほど大部の本…

ロシア点描

身内以外の人を信用しないが、いちど身内扱いになるとどこまでも親切にしてくれる。なぜか見知らぬ人が突然話しかけてくる。子供に薄着をさせていると、見知らぬ人から叱られる。極端な格差社会で、ネットを遮断し、国内向けの世界に閉じこもっているように…

ウクライナ侵攻と報道

ロシアによるウクライナ侵攻に関して、「多分に情緒的で勧善懲悪的な報道にはちょっと『うんざり』」していると先日書きました。 qianchong.hatenablog.com それで大手メディア発ではない情報にもいろいろ触れようと意識してきたのですが、今朝はその大手メ…

アンチソーシャルメディア

Facebookというものをほとんど使わなくなりました。何年か前にいったんアカウントを削除したものの、台湾の友人や日本国内の一部の知人とやり取りするためだけに復活させてしばらく使っていましたが、現在ではほぼMessengerくらいしか使っていませんし、自分…

中国共産党と流行歌

昨日ご紹介した石川禎浩氏の『中国共産党、その百年』ですが、中国の近現代史、その時代時代の空気や雰囲気を感じるためのひとつの切り口として、流行歌の数々がコラムの形で紹介されているのが、個人的にはとても楽しかったです。私も、いまではまったく行…

中国共産党、その百年

ロシアのウクライナ侵略によって、国際関係がにわかに大きな変化、ないしは仕切り直しに直面しているように思われます。これまで中立を保ってきた北欧のフィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を模索し始めたというのは、ああ、それはそうなるだろうなと…

新刊書の推薦コメント

新刊書の車内広告や店内POP、あるいは本についている帯などに、惹句とともに読者の感想が並んでいることがありますよね。著名人による「○○氏、推薦!」みたいなのもありますけど、それ以外にも「40代・女性」とか「東京・STさん」のように匿名で、「目からウ…

今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除すべき10の理由

昨年末にTwitterを「降りて」三ヶ月ほど経ちました。すでにアカウントは消滅していますが、実はもうひとつTwitterにアカウントを持っていて、それは今でも続けています。趣味で学んでいるフィンランド語でのみつぶやくアカウントです。ただし、以前Twitterを…

「〜を食べさせる店」をめぐって

「食べさせる(食わせる)」という言い方がありますね。「親が子供にご飯を食べさせる」という単なる使役ではなくて、「あの店は旨い魚を食べさせる」みたいな言い方です。なぜか私はこの後者の言い方が昔から苦手で、耳にするたびになんとも言えない嫌な気…

ふたたび天丼

所用で銀座に出たおり、またまた天丼を食べました。ちょっと贅沢です。行ったのは天國という天ぷら屋さんですが、ここに来るのも本当に久しぶりです。以前来たのは何年前だったでしょうか。もともとは銀座の大通りに面した、博品館のお向かいにお店があった…

AI監獄ウイグル

もう20年以上前のことですが、中国の新疆ウイグル自治区を旅行したことがあります。陝西省の西安から長距離列車で甘粛省の敦煌、そのあとウルムチに入り、さらにバスでカシュガルまで向かいました(当時まだウルムチ・カシュガル間に鉄道は開通していません…

赤い闇 スターリンの冷たい大地で

先日、夕飯を作りながら「報道1930」というニュース番組を見ていたら、今次のロシアによるウクライナ侵攻に関連して『赤い闇』という映画が紹介されていました。ホロドモールと呼ばれる、1932年から33年にかけてウクライナを中心に発生した大飢饉を扱った作…

現代経済学の直観的方法

先日、某所で、中国語と日本語の単語に関する授業を担当しました。その中で日本語に多く見られる一連の外来語(カタカナ語)を取り上げました。特に中国語母語話者のみなさんにとって、この節操がないと言ってもいいほど頻出するカタカナ語は「鬼門」のひと…

教えようとしても教えられない

ずっと以前に古本屋さんで購入した、十四世喜多六平太氏の聞き書きをまとめた『六平太芸談』を読んでいたら、こんなひと言がありました。 教えようたって教えられない、習おうたって習えないところに値打ちがあるのさ。学者ぶりは芸には禁物だよ。 斯界の泰…

NHKのロシア語番組が終了というニュースに接して

『デイリー新潮』に、「NHK『ロシア語番組』終了の波紋」という記事が載っていました。Eテレのロシア語講座「ロシアゴスキー」が今月で終了するのはウクライナ侵攻の影響かとの憶測を打ち消す一方で、日本におけるロシア語教育の危機を訴える研究者の声を紹…

料理の四面体

初めて料理というものをしたのはいつの頃だったでしょうか。私の場合は、確か小学校の3年生だか4年生だかの時に、お湯に片栗粉を溶くと粘性のある液体ができるということを知って試したのが最初だったように思います。料理と呼べるかどうかははなはだ疑問…

料理をしない・できないということ

著者とのご縁、というようなものがあるようでして、世上の評判高く、複数の知人友人からも「とてもいいですよ」と勧められて読んでみるものの、どうしても肌の合わない本やその著者という存在はあります。批評家で随筆家のR氏も私にとってはそんなお一人で…