インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ほん

テレビを見すぎるとバカになる

扇情的なタイトルですみません。いえ、私にも好きなテレビ番組がありますし、娯楽としてのテレビを否定するわけでもないのです。ただ、のべつまくなしに見続けるのだけは頭と身体の健康(私の場合は特に腰)に悪そうだなと思って。だから私は、基本的にテレ…

こう見えて失語症です

脳出血によって失語症になった夫との十年間をまとめた、米谷瑞江氏の『こう見えて失語症です』を読みました*1。フリーランスのライターだった米谷氏は夫の抱えた障害をきっかけに失語症や脳そのものへの興味がわき、ついには言語聴覚士の資格まで取って転職…

ゲノム編集の世紀

「CRISPR-Cas9」(クリスパー・キャスナイン)と呼ばれるゲノム編集技術の開発によって、2020年のノーベル化学賞が贈られたジェニファー・ダウドナ氏とエマニュエル・シャルパンティエ氏。この二人の研究を主軸に、ゲノム編集技術の発展と現状、これからの可…

世代交代のサイクルを回したくない人々

今朝の東京新聞に、ニュースキャスター・安藤優子氏へのインタビュー記事が載っていました。ウェブ版でよりボリュームの多い全文が読めます。安藤氏が昨年上梓された『自民党の女性認識「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店)を引いて、自民党の「イエ中…

ひらやすみ原画展

マンガ家・真造圭伍氏の『ひらやすみ』の原画展が、同作にゆかりの深い阿佐ヶ谷にある杉並区役所内の区民ギャラリーで開かれているというので、見に行ってきました。www.city.suginami.tokyo.jp区民ギャラリーといっても、ほとんど廊下みたいなところに手作…

もう少し中国語のことを知ってくださったら

ちょっと前にケイレブ・エヴァレット氏の『数の発明』を読んでいたら、こんな記述が出てきました。 世界では今も昔も、さまざまな計算盤や計算機が使われていて、これを使えば使用者にとっては明らかに便利だ。日本の計算機(何世紀も前に中国のスアン・パン…

どこが癇に障ったのかしら

けさ同僚から、ニューヨーク・タイムズ紙のこんな記事を教えてもらいました。www.nytimes.com中国のいわゆる「ゼロコロナ政策」を事実上転換に追い込んだ市民のデモに関連して、そうしたデモの背景を外国の勢力と結びつけたい中国当局の思惑について報じてい…

言語はこうして生まれる

“For sale, Baby shoes, Never worn.(売ります、赤ん坊の靴、未使用。)”という、英単語たった6つの「物語」が冒頭に載せられています。注釈によれば、これはヘミングウェイが作った最短の物語という都市伝説まで生まれたほど有名なものなのだそうですが、…

フィンランドの古本を買う

フィンランド語のオンライン教室で、《Noitalikka》という絵本を読み始めました。魔法使いのお話だそうです。毎回ほんの少ししか進まないので、どうせなら年末年始の休みの間に少し先まで読んでみたいなと思って、その絵本を手に入れられないかとネットで検…

AI 2041 人工知能が変える20年後の未来

自動運転車、ディープフェイク、無人兵器、自然言語処理、仮想現実(VR)に拡張現実(AR)に複合現実(MR)……AI(人工知能)技術の深化で未来に実現すると見られる様々なテクノロジーを解説した本です。量子コンピュータやAIによってもたらされる失業、さら…

悲しい昼食

きのうは所用で都内某所に出かけ、お昼は以前から行ってみたいなと思っていたラーメン屋さんに入りました。ちょっとめずらしい味わいの、いわゆる「ご当地ラーメン」系だそうです。人気のお店で、お昼をちょっと過ぎた時間に入りましたが、それでも店内はほ…

渡辺京二さんのこと

けさの新聞に、在野の歴史家・渡辺京二氏の小さな訃報記事が載っていました。享年92歳。私はいま何気なく「在野の」と書きましたが、氏は熊本という場所で、その風土に深く根ざした視点から近代史を見つめ続けた方で、中央のアカデミズムとは一線を画してお…

繁栄ーー明日を切り拓くための人類10万年史

以前、およそ30年くらい前に取り沙汰された「41歳寿命説」についてブログに書いたことがあります。「21世紀初めには環境汚染の影響で日本人の平均寿命が大幅に下がる」というもので、若い頃の私はけっこうこれに傾倒していたのですが、幸か不幸か(幸ですね…

ゲノム編集と遺伝子組み換え

遺伝子組み換え食品についての基本的な知識を得たいと思って、松永和紀氏の『ゲノム編集食品が変える食の未来』を読みました。 ゲノム編集食品が変える食の未来私はこの件についてまったくの素人で、これまで「ゲノム編集」と「遺伝子組み換え」の違いも分か…

大学を辞めなくてよかった

芸人の小島よしお氏が『しくじり先生』で「大学を辞めなくてよかった」という話をされていました。大学時代にWAGEというお笑いサークルに所属して人気を博し、有頂天になって大学を辞めようとしたものの、親に止められて結局は翻意したというお話です。www.y…

渋谷から書店が消えていく

東京は渋谷の東急百貨店本店7階に入っているMARUZEN&ジュンク堂書店が、百貨店自体の営業終了にともなって閉店するんですよね……。www.maruzenjunkudo.co.jpかつて渋谷にはたくさん本屋さんが、それも豊富な品ぞろえが魅力的な本屋さんがたくさんありました…

フィンランド 虚像の森

以前、フィンランドの森の中をひとりでハイキングしたことがあります。観光客向けに整備された木道や山道を歩くだけの、いたって気楽なハイキングでしたが、人の少なさもあいまって、その圧倒的な森林の魅力を楽しみました。qianchong.hatenablog.com森と湖…

未来の食卓

1985年に公開されたテリー・ギリアム監督の映画『未来世紀ブラジル』に、とっても気持ちの悪い「料理」が登場します。いかにも不味そうな色と形状をしたペースト状のもの。添えられているのは、食材の成分的にはこれと同じですよと言っているような写真です…

フード左翼とフード右翼

もうずいぶん前のことになりますが、かつて勤めていた会社の同僚に「私はフィッシュ・ベジタリアンだ」と公言している人がいました。フィッシュ・ベジタリアン? 要するに「牛や豚などの肉類は食べないものの、魚介類は食べる菜食主義者のこと」です。昨今で…

教育において身体と身体で向き合うこと

トマ・ピケティ氏いうところの「バラモン左翼と商人右翼」に興味を持って、職場の図書館で検索して引っかかってきた何冊かの本を読んでいます。クーリエ・ジャポン編の『不安に克つ思考』もその一冊でした。結果から言えばピケティ氏へのインタビューはほん…

スマホ・デトックスの時代

ブリュノ・パティノ氏の『スマホ・デトックスの時代』を読みました。副題に「『金魚』をすくうデジタル文明論」とあって、これは原題の『金魚文明ーーアテンション市場に関する小論』からつけられているようです。 スマホ・デトックスの時代ここでいう金魚と…

習慣のアンカーを引き上げてみる

行動経済学の入門書として有名なダン・アリエリー氏の『予想どおりに不合理』に、アンカー(錨)によるアンカリング(係留)という話が出てきます。伝統的な経済学では、製品の価格は需要と供給で決まり、かつその力はお互いに独立していると考えますが、実…

ホテル・メッツァペウラへようこそ

存じ上げない作家さんでした。Amazonで検索していて偶然見つけたマンガ『ホテル・メッツァペウラへようこそ』。メッツァ(metsä)がフィンランド語で「森」なので、これはフィンランドが舞台なのかなと興味を持ったわけですが、果たしてフィンランド北部のラ…

ソーシャルメディア解体新書

いやもう、ソーシャルメディア*1の、ある意味「正体」を見た思いがしました。とくにSNSやネット上のクチコミにもうずいぶん前から抱いていた違和感のようなもの、その原因や正体はここにあったのかと。副題にもあるようにこの本は、フェイクニュース・ネット…

揚げ豚

「さもない(然もない)」という言葉を久しぶりに見かけたような気がしました。立ち寄った書店で偶然に有元葉子氏の『有元家のさもないおかず』を見つけ、購入したときのことです。そうそう、日常の炊事で作る料理って、こういう「さもない」ものばかりなん…

「コチコチのマインドセット」と「しなやかなマインドセット」

同僚に教えてもらったのですが、雑誌『日本語学』の2022年3月号に「マインドセットと4チャンネルモデル」という論考が掲載されていました(筆者は藤森裕治氏)。その中に出てきた、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック氏らによる人間のマインドセッ…

カバーは備品なので回収します

先日帰宅途中に電車を乗り換える際、駅のコンコースにある書店でよしながふみ氏の『きのう何食べた?』第20巻を買い求めました。書籍はだいたいAmazonで買ってしまう私ですが、街の本屋さんがなくなってしまうのはかなりマズイのではないかと思っていて、応…

ヘルシンキ 生活の練習

かつてTwitterを利用していたころ、偶然目にしたタイムラインのツイートにやや気持ちが淀んでしまったことがありました。それはフィンランド在住の日本人と思しき方々数名による、他のツイートへの批判ツイートでした。「幸福度が高い」とされる北欧諸国、な…

やっぱり中庸がいちばんなんじゃないかと

いまの職場にはいろいろな国からやってきた留学生がいて、今年度はおよそ20カ国の学生さんたちと毎日相対しています。私は以前に日本人(日本語母語話者)だけのクラスを受け持っていたこともあるのですが、当然のことながらクラスの雰囲気はかなり異なりま…

ひらやすみ4

真造圭伍氏のマンガ『ひらやすみ』第4巻を読みました。やー、今回もよかった。二十代からアラサーの登場人物たちが、それぞれに思い悩みながらも日々の暮らしを紡いでいく物語。読んでいると、もう何十年も前の自分の二十代三十代が蘇ってくるような気がし…