インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

もしトラ

ワシントン・ポスト』の電子版に、日本の流行語「もしトラ」が紹介されていました。政治的・経済的にはまだしも、外交的にはけっこうなところまで、軍事的にはほぼアメリカの属国、といって悪ければ「51番めの州」ないしは「コモンウェルス自治領)」と化している本邦ですから*1、政財界を中心にアメリカ大統領選の行方を戦々恐々として見守っている、というのがニュースソースになるのでしょう。

The term has inspired spinoffs as Trump has become the presumptive GOP nominee, each term snowballing in intensity as the Japanese public has become increasingly resigned to a Biden-Trump rematch. “Moshi-tora” (what if Trump) became “hobo-tora” (pretty much Trump), then “maji-tora” (it will seriously be Trump), “kaku-tora” (confirmed Trump) and “mou-tora” (already Trump).

www.washingtonpost.com

「もしトラ」のみならず「ほぼトラ」、「マジトラ」、「確トラ」そして「もうトラ」まで紹介されているのがおもしろいですし、その英訳がまた興味深いです。なるほど“it will seriously be”で「マジにそうなるかも(なったらヤバいなあ)」というニュアンスっぽく読めるのかしら。こんど母語話者に聞いてみたいです。

日本でこれだけ「◯◯トラ」が取りざたされているのですから、ひょっとしたらと思って中国語のニュースサイトを探してみたら、果たして『ワシントン・ポスト』紙が「もしトラ」を取り上げたことを紹介した共同通信の記事を翻訳する形の『共同网』記事がありました。

美国总统大选在日本催生出了略带焦虑意味的流行语——“如果特”。《华盛顿邮报》网络版6日刊文称,奉行“美国优先”主义的前总统特朗普再次上台的可能性受到全球关注,“如果特”一词充分体现了日本人对特朗普重新掌权的不安。文章还介绍称,除“如果特朗普再次成为总统”的缩略语“如果特”外,还有代表当选可能性很大的“几乎特”,以及“当真特”、“确定特”等。

china.kyodonews.net

“特朗普*2”が「トランプ」なんですけど、「トラ」だから中国語も略して“特”と。“如果(もし)特”、“几乎(ほぼ)特”、“当真(マジ)特”、“确定(確)特”……「もうトラ」はこの記事にないんですけど、さしづめ“已经特”かなあ。“当真”は「真に受ける」というニュアンスがあるので、「マジ !?」という感じにつながって上手な訳だなあと思いました。

*1:こう書くと日本の方に叱られるかもしれませんが、少なくとも中国やロシアの指導層はそれくらいの認識だと私は思います。

*2:台湾では“川普”の表記が主だと思います。