インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ポイント10倍デー

昨晩、退勤時にいつも立ち寄っているスーパーへ行ったら、異様な人混みでした。店内のいたるところに「10倍」の文字が貼られています。恒例のポイント10倍デーだったのです。このスーパーには会員カードがあって、レジでの精算時に提示すると購入額100円につき1ポイントがつき、ポイントが貯まるとお買い物の際に使えるほか、年に数回だけですが現金との交換もできるのです。それがポイント10倍デーなら100円につき10ポイントになるというわけ。


https://www.irasutoya.com/2017/03/blog-post_83.html

私はふだん現金を持ち歩かないので、スーパーでの精算もクレジットカードです。この会員カードはカード精算でもポイントがつきますが、昨日のような10倍という特別なポイントがつくのは現金精算のみです。レジでも「現金ならポイント10倍です!」と告げられましたが、私はいつものようにカードで支払いを済ませました。

もったいないと思われるでしょうか。でも私の購入額はいつも2000円とか3000円程度なので、ポイント10倍といってもたかが2〜300円です。そりゃまあ数百円でも節約するに越したことはありませんが、そこまで目の色を変えるほどの額じゃないと思うのです。

でも周囲を見渡すと、みなさんここぞとばかりに品物をカートに詰め込んでらっしゃる。ポイント10倍デーは予告されているので、この日に合わせていろいろな食料品を買い込むわけですね。お米の大袋とか、缶ビールのカートンとか、保存の効きそうな調味料類や乾物類、あるいはちょっとお高い牛肉など、この日に購入すれば単価が高いだけにポイント10倍の効果もじゅうぶんに発揮されるというわけです。スーパー内のアナウンスもしきりに「ぜひこのチャンスにまとめ買いを!」と購買意欲をかき立てています。

ひとさまの購買動向を云々するのは大きなお世話ですが、なぜスーパー側がこうしたポイント10倍デーを設けるのか、少し冷静になって考えてみるのもよいと思います。日頃お世話になっているお客様に利益を還元したいからでしょうか。もちろんそういう趣旨もあろうかとは思いますが、それよりもはるかに大きな意図は、おそらくこれによってスーパーは売上額が伸び、そのぶん儲かるからです。客がポイントを目当てに、ふだんは手を伸ばさない高額商品に食指を動かしてくれる可能性が高まりますから。あと、企業としては資金繰りに回せる現金が増やせるというメリットもあるのかもしれません。

それに、仮に10000円購入してポイント10倍で1000ポイントついたとしますよね。すると10000円のものを9000円で買えたと喜びます。で、つぎにその1000ポイントで1000円のものを買えば、実質無料で手に入れることができたとまた喜びます。だから私たちは実質9000円の支出で済んだような気になりますけど、でも実際に自分のお財布から出ていったお金は10000円ですよね。スーパー側としてはきっちり10000円をお客に使わせているわけです。

しかも値づけはスーパー側が行っているわけで、そもそもその値づけにどれだけの利益が乗せられているのか客は知りようがありません(ほかのお店と比較することでその多寡をある程度想像することはできますけど)。ポイント10倍デーでふだんは買わない商品に手を伸ばしやすくなっていることを見越して、そうした商品の単価を上げておくことだってできます。それでも客側は「ポイント10倍なんだから」という心理が働いて、単価の見定めが甘くなる。

こうやって考えてみると、ポイント10倍デーは結局のところ、お客の購買意欲を刺激して、「今だけ!」という劇場効果(?)でよりたくさん買わせるための手段じゃないか、だからあれほど店内に「10倍」の文字がべたべたと貼られ、高揚した声のアナウンスが繰り返し行われるんじゃないかと私は思うのです。

ポイントが何倍だろうとそれには惑わされずに、いつものモノをいつものように必要なぶんだけ買えばいいじゃない? 節約って、結局は長いスパンで見て総額として支出が抑えられることじゃない? そう周囲の人に言うと、だいたいは怪訝な表情をされます。私が世間知らずなだけなのかなあ。

追記

今朝の新聞にこんなマンガが載っていました。これも「今だけ!」の効果を狙った手法ですよね。