インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

映画

しまじまの旅 たびたびの旅 137 ……僕と幽霊が家族になった件

高雄から台北に戻ってきて、またAirbnbで借りた部屋に投宿しました。予約したときには気づかなかったのですが、なんと先日借りた部屋と同じ巨大なビルの中にある別の部屋でした。Airbnbって、予約時には詳細な住所が明かされず、直前になって部屋へのアクセ…

しまじまの旅 たびたびの旅 134 ……一一重構:楊德昌

國家電影及視聽文化中心(TFAI)と台北市立美術館(TFAM)で同時開催されている、台湾の映画監督・楊德昌(エドワード・ヤン)氏の回顧展を見に行きました。若い頃、夢中になって見ていた氏の映画は、日本でもロードショー公開された『恐怖份子』、『獨立時…

しまじまの旅 たびたびの旅 133 ……幸福路

澎湖から台北に戻って、Airbnbで借りた部屋のチェックイン時間までまだかなりあったので、新北市は新荘副都心にある國家電影及視聽文化中心に行くことにしました。ここは台湾の映画やテレビのアーカイブを収蔵し修復している専門の施設です。ここでいま、私…

しまじまの旅 たびたびの旅 125 ……サーフィンをやってみたかった

英語に“bucket list”という言葉があります。バケツリスト。“kick the bucket(バケツを蹴る:死ぬ*1)”という表現からきた言葉で、生きているうちにやりたいことのリストとでもいいましょうか。余命いくばくもないと診断された男二人が、人生でやり残したこ…

マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン

フィンランドのファッションブランド「マリメッコ」のデザイナーとして知られるマイヤ・イソラ氏のドキュメンタリー映画を見ました。3月から公開されるこの映画、私の職場の母体がファッション系の学校で、そこの企画イベントで試写会が行われていたので参…

THE FIRST SLAM DUNK

うちの学校は学生がすべて外国人留学生で、入試の際に行われる面接では「なぜ日本語を学ぼうと思ったのか」といったような質問が行われます。ベタ過ぎる質問ですが、実はその理由を聞きたいというよりも、全体的な日本語の運用能力を見ています。それはさて…

未来の食卓

1985年に公開されたテリー・ギリアム監督の映画『未来世紀ブラジル』に、とっても気持ちの悪い「料理」が登場します。いかにも不味そうな色と形状をしたペースト状のもの。添えられているのは、食材の成分的にはこれと同じですよと言っているような写真です…

赤い闇 スターリンの冷たい大地で

先日、夕飯を作りながら「報道1930」というニュース番組を見ていたら、今次のロシアによるウクライナ侵攻に関連して『赤い闇』という映画が紹介されていました。ホロドモールと呼ばれる、1932年から33年にかけてウクライナを中心に発生した大飢饉を扱った作…

映画を早送りで見る

気がついたら,ここ数年映画をあまり見ていませんでした。以前は少なくとも週に一本は見るほど大好きだったのに、いまでは一年のうちでも数えるほど。しかも気になった過去の作品を動画配信サイトで購入して見ることは何度かあっても,映画館まで足を運んで…

MINAMATA

ジョニー・デップ氏主演の映画『MINAMATA』をみてきました。以前、映画評論家の町山智浩氏が語るこの映画のお話をとても興味深く読んでいたので、セルビアやモンテネグロでロケをしたという部分の違和感などもさほど気にならずにみることができました。miyea…

マッチ棒を借りに

フィンランド語の教科書は二冊目の終盤に差し掛かり、ほとんどの文法事項が出そろってきました(たぶん)。中国語で言うと、文法の大きな山である補語とアスペクトを学び終わった段階という感じでしょうか。この教科書を学び終えたあとどんな教材に移るのか…

見るレッスン

映画評論家でフランス文学者の蓮實重彥氏が、ご自身でこれが最初で最後だとおっしゃる新書による執筆。映画史に関する「講義」ですが、これがめっぽう面白かったです。蓮實氏の本といえばどこか重厚なイメージが私などにはありますが、この本の語り口はいた…

五輪を弔う

森喜朗氏の女性蔑視発言に端を発する五輪組織委員会のゴタゴタが尾を引いています。思い起こせばこの五輪、その招致時から賄賂疑惑や「アンダーコントロール」の吹聴など数多くの問題があり、招致が決まってからも新国立競技場の建設、エンブレムの盗作疑惑…

ネット配信で映画芸術は変質していくのかもしれない

新聞の朝刊に載っていたこの記事、ハリウッド映画の、ネット配信での売り上げが映画館での売り上げを上回るようになったため、両者が同時に封切られるようになったというお話でした。なるほど、コロナ禍の影響がここまで……という感じです。が、私もコロナ禍…

コロナ禍でコピー機の需要が落ちている?

先日Twitterでこちらのツイートを拝見して、同感だなあと思いました。あの会議に次ぐ会議がいかにも日本っぽくて、なのに結構テキパキと物事が進んでいくのは逆に日本っぽくなくて、リアルでありながら非リアルなところが小気味よいなと。『シン・ゴジラ』が…

“好朋友”と“老朋友”

ネットで「中国語の“好朋友(親友)”は死語?」という話題に接しました。とある学校で教えておられる中国語の先生が「この単語はあまり使わないから」と教科書にある“好朋友”の入った例文を教えないのだそうで、すでにこの言葉は古くなってしまったのかと。…

あいうえおの歌

第二次世界大戦時の1942年から1945年にかけて出版された、『FRONT』(フロント)という大判のグラフ誌があります。原弘、木村伊兵衛など、後に昭和を代表するデザイナーやフォトグラファーとなるメンバーが所属していた、大日本帝国陸軍参謀本部の直属出版社…

『桃太郎』に感じる小さな疼きのようなもの

留学生のための一般教養講座で『東アジア近現代史』という授業を担当しています。毎年その授業の一環で『桃太郎 海の神兵』という、1944年に海軍省の後援で制作されたアニメーション映画を紹介しています。この映画のクライマックスに出てくる、落下傘部隊が…

インドネシアをめぐる二つの作品

『桃太郎 海の神兵』というアニメーション映画があります。日本の敗戦が色濃くなっていた1944年に製作され、翌年の春(つまり終戦・敗戦の年)に公開されたこの作品、戦時中によくまあここまでというくらい見ごたえのある作品になっており、逆にそれが国策映…

新しい歌を歌う

在宅勤務が長期間に及び、これまでになかった形でのオンライン授業や遠隔授業などの準備と実施に追われているうち、先週や先々週あたりはちょっと心身ともに疲れ切ってしまっていました。やることは次々に立ち現れてくるのに、身体がどうにもだるくて、心も…

トーベ・ヤンソン氏を描く映画『TOVE』

『ムーミン』シリーズの作者として有名なフィンランドのトーベ・ヤンソン氏。その氏をテーマにした映画『TOVE』が制作されているという情報をSNSで知りました。www.moomin.co.jpトーベ・ヤンソン氏はフィンランド人ですが、スウェーデン語系フィンランド人*1…

カーテンの向こうに

年始の帰省ラッシュを避けて、年越し前に実家がある北九州市から東京に戻りました。スターフライヤーの座席も空席が目立っていました。機内のビデオサービスを適当に選んで見ていたら、10分弱ほどのショートショートフィルムが二作品流れていて、一本はイタ…

『台湾、街かどの人形劇』

昨日の東京新聞朝刊に、台湾のドキュメンタリー映画『紅盒子(邦題:台湾、街かどの人形劇)』に関する記事が載っていました。映画のオフィシャルサイトは、こちら。記事には台湾の伝統的な人形劇である「布袋戲(ポテヒ・ほていぎ)」が「娯楽の多様化を背…

サウナのあるところ

ヨーナス・バリヘル、ミカ・ホタイネン共同監督の映画『サウナのあるところ』を観ました。サウナに関するフィンランド映画、という情報のみで映画館へ向かったのですが、静謐な雰囲気の中に深い味わいを残す素敵な作品でした。【以下、一部に映画の具体的な…

体罰が日常的に行われた時代があった

台湾のネット書店で購入したアニメーション映画『幸福路上』のDVDを観ました。台湾の近現代史を背景にしたストーリーもさることながら、画面の隅々にちりばめられた様々な細かい描写のリアリティに「ああ、この雰囲気!」と身もだえするような懐かしさを感じ…

Simon Stålenhag 氏の世界にひかれる

スウェーデンの画家で Simon Stålenhag という方がいます。私はずいぶん前にネットでこの方の絵を見かけて、その独特の世界観に引き込まれてしまい、画集こそ持っていないのですが、ちょくちょく氏のウェブサイトに行ってはその作品の数々を眺めています。ww…

ドキュメンタリーの理想的な形

NHK Eテレで放映されたドキュメンタリー「輪廻の少年」。チベット仏教で高僧の生まれ変わりとされる「リンポチェ」の少年が、インドのラダックからチベットを目指す旅を追ったものです。昨晩偶然に見たのですが、最初からその内容と映像美に引き込まれました…

「おばおじさん」の凋落

きのう、映画『かもめ食堂』が自分の心にはあまり響かなかったという話を書いたので、職場でもそのことを話題にしてみました。ちなみに私以外は全員女性の職場です。そしたら、みなさん異口同音に「そう? 私はすごく好きな映画なんだけど」という反応。中に…

しまじまの旅 たびたびの旅 22 ……牯嶺街

海外旅行はとにかくフツーの街歩きが楽しいです。まあこれは私が、人の多いところはほんとうに苦手で「人酔い」するからというのもあるんですが、有名な観光地は、往々にして事前に調べて何度も写真で見た光景を確認するだけに終わることが多くて、つまらな…

しまじまの旅 たびたびの旅 16 ……風櫃

宿へ帰るために乗った路線バス、行き先は「風櫃」でした。どこかで聞いた地名だと思ったら、侯孝賢監督の名作『風櫃(ふんくい)の少年(原題:風櫃來的人)』の風櫃です*1。なんとも間抜けなことに、この時点ではじめて風櫃が澎湖の地名であったこと、自分…