フィンランドのファッションブランド「マリメッコ」のデザイナーとして知られるマイヤ・イソラ氏のドキュメンタリー映画を見ました。3月から公開されるこの映画、私の職場の母体がファッション系の学校で、そこの企画イベントで試写会が行われていたので参加してきたのです。映画の上映に引き続いて、監督とプロデューサー、それに映画にも出演しているマイヤ氏のお孫さんが登壇してのトークショーもありました。
このドキュメンタリー映画は、マイヤ・イソラ氏の幼少期から晩年までを時系列順に追いながら、こうした珠玉のデザインがどのように生み出されてきたのか、その足跡をたどっています。氏が旅を続けながら、そしていろいろな男性と恋に落ちながら、さまざまな文化や気候風土の影響を受けて創作してきたことが明かされます。
マイヤ氏自身の声(例えば手紙や葉書で家族に出したもの)を声優さんが演じ、そこに当時の写真や映像や、氏のデザインがアニメーションのようにしてかぶさるというこの映画、私はフィンランド語が聞けることもあってけっこう楽しみましたが、人によってはかなり単調に感じられるかもしれません。フィンランド映画らしいといえばらしいです(失礼)。
マイヤ氏はマリメッコの専属デザイナーというわけではなく、フリーランスとしてマリメッコ社にデザインを提供していたようです。そういう背景もあってか、氏のデザインが社内でどのように製品化されていったのかについてはあまり語られていません。
ですから、ファッションデザインを研究されている学生さんたちからすると、映画の主軸がマイヤ氏のキャラクターにフォーカスしているので、ちょっと当てが外れたかもしれないなといらぬ心配をしてしまいました。作家がデザインを提供したあと、どのような作業を経て実際の服や食器や雑貨などに落とし込むのかについても興味があるんじゃないかと思って。
マリメッコのファブリックデザインでおそらく一番有名なのは、ケシの花をモチーフにした“Unikko(ウニッコ:フィンランド語で「ケシ」)”でしょう。上掲の映画チラシにもあしらわれています。こちらには氏のパターンを網羅しているマリメッコ社のオフィシャルサイトがありますが、眺めているだけでも楽しい。“Unikko”以外にも“Kivet(石)”、“Melooni(メロン)”、“Lokki(カモメ)”、“Kukkatori(花市場)”、“Kaksoset(双子)”……などなど、私でも「これ、見たことある!」なデザインが数多くあります。
“Unikko”がデザインされたのはなんと1964年だそうですから、もう60年近い歴史があるわけです。私と同い年だよ! なのに、いまだにまったく古びた感じがせず、多くの製品に使われているというのは、考えてみればすごいことです。