インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

内田百閒に共感する

読書をしていて楽しいことのひとつは、作者の言葉に共感するあまり「ああ、ここに私と同じ感覚の人がいる」、あるいは「ああ、これは私に向けて書かれているに違いない」と思える瞬間があることです。よくよく考えてみればこれは不遜きわまりない態度ですし…

世界は経営でできている

読み手を選ぶ一冊だと思います。私は無事に読了できましたが、独特の文体(筆者の岩尾俊兵氏ご自身は「昭和軽薄体」の向こうを張って「令和冷笑体」と命名されています)ゆえに読み進めるのがツラいと感じる方もいるでしょう。この本は「経営」をキーワード…

ヴォイニッチ写本

ヴォイニッチ写本といえば、1912年にイタリアで発見された不思議な古文書として有名です。この写本が有名なのは、その奇妙な彩色画とともに謎の文字が全編を埋め尽くしているからで、この文字は未だ解読されていません。100年以上にわたって世界中の研究者が…

プロット・アゲンスト・アメリカ

書評家の豊崎由美氏が新聞のコラムでつよくつよくお勧めされていたのに促されて読みました。フィリップ・ロスの『プロット・アゲンスト・アメリカ』。1940年、戦時を理由にそれまでの慣例を排して三選目の大統領選に立候補したフランクリン・D・ルーズベルト…

Duolingoの趣味が悪いww

語学学習アプリのDuolingoを使っていると、ときおりアプリの仕様が急に変わって驚くことがあります。最近気づいたのは、一回ごとのレッスンが終わったあとに表示されるアニメーションの中に、いささか「キモかわいい」ものがまじるようになったことです。こ…

三重請求

夏にイングランド南西部をレンタカーで旅した際、デヴォン州タヴィストックで交通違反をやらかしてしまいました。路上のパーキングスペースに車を停めて観光していたら、駐車時間が制限を超えてしまったのです。このパーキングスペースは「月曜日から土曜日…

少女時代とキム・ミンギ

先日、韓国の国会で尹錫悦大統領に対する弾劾訴追案が可決された際、国会の外に集まっていた人々が少女時代の『Into The New World(また巡り逢えた世界/また出会った世界)』を歌っていました。www.youtube.comこの件に関しては、韓国『中央日報』のウェブ…

誤訳としての大英帝国

吉田健一氏の『英国に就いて』を読んでいたら、こんな記述がありました。 英国の歴史の上で十九世紀、ことにその後半に当るヴィクトリア時代は対外的にも、また国内でも最も大きな発展があった時代であって、日本では何かの誤訳で大英帝国と呼ばれている、英…

無意味なものと不気味なもの

小学生のころ、大阪府は枚方市にある団地に住んでいました。ひらかたパークがまだ「ひらパー」という略称で呼ばれていなかったくらい昔のことです。ある日のこと、二階にあった部屋の窓から外を眺めていたら、とつぜんお向かいの棟の上に灰色のような焦げ茶…

「立たせない」と「立たさない」

ベビーカーの取扱説明書に「幼児、子供を座面上に立たせないでください」という一文がありました。一方こちらは食卓で使う子ども用チェアの取扱説明書。「お子様を天板以外の場所に立たさないでください」と書いてあります。「立たせないで」と「立たさない…

舌の上の階級闘争

世界三大料理といえば、フランス料理・中華料理・トルコ料理なんだそうです(根拠は薄そうですが)。かつて私は外国人留学生が取り組む日本語のお芝居で、その他の料理たちがこの「世界三大料理」入りを目指すバトルを繰り広げるというプロットの脚本を書い…