インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

能楽

能や狂言に関する記事です。

初謡

もうすぐ2月の声を聞こうかというこの時期ですが、私が担当している留学生のとあるクラスは今日が新年最初の授業だったので、日本文化の紹介ということで「初謡(はつうたい)」を取り上げてみました。初謡は「謡初(うたいぞめ)」ともいいますが、お正月…

天皇と媽祖

能のお稽古に行って、先日拝見した能「国栖(くず)」についてお師匠に少しうかがいました。「国栖」は壬申の乱に材を採った物語で、大友皇子の追っ手から清見原天皇(のちの天武天皇)が吉野の山中に逃れ、前場ではそれをかくまう老夫婦と追っ手との緊張感…

未就学児OKの若者能

新年明けて、仕事はとっくに始まりましたが、まだなんとなくお正月気分が抜けません。きょうはそのお正月気分の締めくくりとして、お銀座にお能を見に行きました。シテ方喜多流能楽師の塩津圭介氏が中心になってもう20年近くも行われている「若者能」という…

能楽を応援したい

先日、今年最後のお能の稽古に行ってきました。いまは来年7月に予定されている発表会に向けて、舞囃子の「高砂」を練習しています。途中に神舞(かみまい)というまさに神速の舞が入っている舞囃子で、ずっと憧れだったものですから稽古が楽しいです。それ…

百番会

きょうは東京・目黒の喜多六平太記念能楽堂におきまして、趣味の「お能」の発表会でございます。趣味の習い事の発表会、それもお能のそれと申せば、何といいましょうか、どこかこうセレブリティな雰囲気を想像される向きもあるやもしれませぬ。いや確かに、…

アグネス吉井

中国語の通訳教材を探してYouTubeの動画チャンネル《一席 YiXi》を見ていたら、日本人のコンテンポラリーダンスユニット「アグネス吉井(Aguyoshi)」のお二人が登壇されていました(映像での登壇という形式だったそうです)。www.youtube.comユニット名は「…

共話と会話どろぼう

ドミニク・チェン氏の『未来をつくる言葉』を読んでいたら、「共話と対話」と題された一節にこんな興味ぶかい文章がありました。 共話とは、次の例のように、話者同士が互いのフレーズの完成を助けながら進める会話形式を指す。 A:「今日の天気さぁ」 B:「…

ヒット曲のリズムの秘密

いつもYouTubeで音楽解説の動画を楽しませていただいているドクター・キャピタル氏が本を出されたというので、早速読みました。『ヒット曲のリズムの秘密』です。ドクター・キャピタル氏が音楽、とりわけJ-POPの楽しみ方をリズムに焦点を当てて解説する一冊。…

声援や拍手はいらない

いつも拝見しているブログ「オトニッチ」さんでこんな記事を読みました。音楽ライブでの声援や拍手はいらないのではないかというお話です。www.ongakunojouhou.com 観客の声はライブを盛り上げる要素かもしれない。しかしライブの本質ではない。それに気づい…

ほどよくお金がかかる趣味

今週のはてなブログランキング(2022年9月第2週)、増田*1部門にこんな記事がランクインしていました。anond.hatelabo.jp「ほどよくお金がかかる趣味を教えて」とのご所望で、主な条件は以下のとおりだそうです。 ●それなりにお金は必要だけど、お金持ちやコ…

能とAR・VR

雑誌『現代思想』9月号の巻頭に、情報学研究者のドミニク・チェン氏と能楽師の安田登氏による対談が掲載されていて、その中に興味深い一節がありました。 チェン 例えば『羽衣』の冒頭に「虚空に花降り、音楽聞え……」という一節があって、そこでcluster*1内に…

「ながら聞き」に向くものと向かないもの

ふだん、移動中や運動中には必ず何かの音を聞いています。それは能の謡であったり、語学のテキストであったりするのですが、いずれもエンドレスでリピート再生にしています。基本的にはそれらを記憶するために「ながら聞き」をしているものの、続けているう…

歌舞伎と拍手

留学生の「日本文化体験」という授業で、ひさかたぶりに歌舞伎を見に行きました。今月、歌舞伎座にかかっている『當世流小栗判官』、市川猿之助氏の主演です。前回同じ企画で見に行ったときは、ちょうど新型コロナウイルス感染症がかなり拡大していたころで…

稽古十年

能の稽古を始めて十年が経ちました。十年といっても、実際には月に二度ほど師匠のもとにうかがっての稽古と、年に一、二度の発表会を続けてきただけですから、実質的にはたいした量ではありません。途中でもうやめようかなと思ったことも何度もありましたが…

能「頼政」の地謡

二日間にわたる国立能楽堂での発表会、終わりました。私は一昨日に仕舞二番の地謡、舞囃子「呉服」と能「猩々」の地謡、昨日は自分の舞囃子「邯鄲」と、最後にかかった能「頼政」の地謡に出ました。自分の舞囃子はまあ、いちおう型通りに舞うことはできまし…

能楽堂の「めくり」

今年は発表会を国立能楽堂で行っておりまして、出番がない時間(……がほとんどです)は見所(客席)へ見に行ったり、楽屋で謡をさらったりしています。そのほかに、コロナ対策ということで楽屋へ入る方々の体温チェックなどをする受付に座ったり、見所の端で…

偉くなるのは自分でなるんだよ

私の書棚には何冊かの「芸談」が積ん読になっています。芸談というのは、主に伝統芸能の分野で、演者が自分の技芸についてあれこれと語っているもの。私が読んでいるのは能楽師の芸談が多いですが、それらはひとに勧められて以前古本屋さんで買い集めたもの…

申し合わせ

今日は仕事を一時間ほど早退して、千駄ヶ谷の国立能楽堂にやってきました。来週の5月3日と4日にお能の発表会があるのですが、私は能二番と仕舞二番の地謡、それに自分の舞囃子に出ます。今日はその「申し合わせ」なのです。申し合わせはまあ「リハーサル」の…

見るものではなくやるもの

先日、目黒の喜多能楽堂へ稽古に行ったとき、稽古場の前で二十代とおぼしきスーツ姿のお若い男性を見かけました。稽古場はいくつかあって、その日は私のお師匠以外にも稽古をされている能楽師の方がいらっしゃったのですが、たぶんその方のお弟子さんでしょ…

能は「つまらない」か

先日『ゆる言語学ラジオ』の堀元見氏がnoteで、能は「既得権益だらけ」であり「顧客のニーズを満たそうとかそういう気持ちは全くない」とおっしゃっていることについて書きました*1。qianchong.hatenablog.com能には「市場原理は働いて」おらず「進化しなく…

能は「既得権益」か

『ゆる言語学ラジオ』の堀元見氏がnoteで能について書いておられるのを見つけ、購入して読んでみました。note.comはじめて能をご覧になったそうですが、観劇全体の印象として「顧客のニーズを満たそうとかそういう気持ちは全くない」と厳しいことをおっしゃ…

盧生の戸惑いがいじらしい

お能の稽古はここのところずっと『邯鄲』の舞囃子を続けています。もう一年近く続けていますが、どこまで行っても次々に課題が見つかって「仕上がる」ということがありません。平行して『邯鄲』の謡も稽古していますが、昨日はシテ(主人公)の盧生(ろせい…

もっとぶっ飛んでいてもーーデジタル若者能を観て

先日、横浜能楽堂で行われた「デジタル若者能」という公演を見てきました。能楽シテ方喜多流能楽師の塩津圭介師が中心となって毎年開催されている、特に若い世代の方々に手軽な観劇料で能楽に親しんでもらおうという企画の、いわば「スピンオフ版」です。not…

発表会の非日常

きょうは一年に一回のお能の発表会です。今年は五月に国立能楽堂で大きな会が催される予定だったのですが、ちょうどコロナ禍の緊急事態宣言が発令されたところで、直前で中止になってしまいました。その日のためにお稽古していた舞囃子『邯鄲』は来年以降に…

パントマイムと仕舞

パントマイム・アーティストのが~まるちょば氏が『マツコの知らない世界』に出演されていました。tver.jp短い尺ながら、パントマイムの歴史から説き起こし、実演しながらパントマイムの可能性と限界の両方に言及されていて、その分かりやすい話し方とともに…

薙刀のお稽古

ほそぼそと続けている「お能」のお稽古は、秋の温習会に向けて『船弁慶』の仕舞を練習しています。船弁慶の「キリ」、つまり平知盛の亡霊が海上で嵐を巻き起こしながら薙刀を使って源義経ら一行に襲いかかるという、一番最後に盛り上がる超スペクタクルな場…

喜多流養成会

平日のお昼に、ぽかっと時間が空いたので、目黒の喜多能楽堂に出かけてきました。能楽喜多流の若手能楽師、まだ『道成寺』を披く前の二十歳代の方々が舞囃子や能を披露される会です。なかにはおひとり、ティーンエイジャーの方も。いずれも以前から舞台で拝…

手拍子が苦手です

先日YouTubeでたまたま見かけたこちらの動画。ストリートピアノのパフォーマンス中にサックス奏者が飛び入りで参加して、すばらしい演奏を披露しています。www.youtube.com最初にキーを確認しただけで、ここまでのセッションができるというのがすごいなと思…

能楽と劇団四季

先日、夕飯を作りながらテレビをつけていたら、NHKで『サンドのお風呂いただきます』という番組をやっていました。お笑いコンビのサンドイッチマンが様々な家庭のお風呂を体験に行くというこの番組、今回は「特別編」ということで、あの劇団四季の舞台裏に潜…

薙刀でした

先日いくつかの新聞朝刊に載った、この宝島社による全面広告。共感を寄せる声がある一方で、写真の出典や写真とコピー(文章)の齟齬などをめぐって、疑問の声にもいろいろと接しました。疑問の声を総合してみると「この写真は1941年の太平洋戦争開戦前に撮…