インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ほどよくお金がかかる趣味

今週のはてなブログランキング(2022年9月第2週)、増田*1部門にこんな記事がランクインしていました。

anond.hatelabo.jp

「ほどよくお金がかかる趣味を教えて」とのご所望で、主な条件は以下のとおりだそうです。

●それなりにお金は必要だけど、お金持ちやコアな趣味人以外でも気軽に手を出せる(車やバイクは何かとお金がかかる…)
●隙間時間でやるものってよりもは、ある程度イベント性がある(今週仕事を頑張れば週末は…みたいな感覚が欲しい)
●あまり多くのモノを必要としない(キャンプとかは必要な道具が多くてどうも…)
●その気になればすぐにでも始められるけど、突き詰めようと思えばとことん奥が深い(その趣味の事を考えたり調べたりしてワクワクする時間好き)
●一人で十分楽しめるけど、仲間と一緒でも楽しい(同じ趣味の友達とかほしい)

え〜、それはもう断然「お能」じゃない? 能はお稽古できますし、ここだけの話、能は見るよりもやる方がより楽しいです。というか、昔(我々の祖父母くらいの世代まで)は能の謡(うたい)や仕舞(しまい)を趣味にしている方はけっこういたのです。結婚式や上棟祭などで、おめでたい小謡をうたうというのもわりとよくありました。会社や地域に謡曲サークルみたいなのがあったりして。

現代ではそういう風景もなかなか見られなくなりましたが、いまでも趣味で学んでいる方はたくさんいます。プロの能楽師に教わって、月謝はほかのお稽古事とほぼ同じ(教わる能楽師によるとは思いますが)。「お金持ちやコアな趣味人以外でも気軽に手を出せ」ます。

稽古は月に数回程度(私は二回です)なので、増田氏がおっしゃるような「イベント性」もあります。しかも年に一〜二回ほど発表会のようなものもあるので、さらにイベント性が。発表会で能を一曲やろうと思ったら、おそらく百万円単位のお金がかかると思われます(加えてそれなりの修練が必要)が、謡と仕舞だけならおそらく数万円程度です(これももちろん状況によって千差万別だと思いますが)。

お稽古で用いるのは基本、足袋と扇だけですから「あまり多くのモノを必要とし」ません。着物や袴もあれば気分が上がりますけど、必須ではありません。発表会の時には正絹の黒紋付を着たいところですが、これはネットでユーズドを探せば驚くほど安く買えます。ちなみに私は新品同様の黒紋付を6000円で手に入れました*2。あと私は、お能の稽古で着物や浴衣の着方、袴のつけ方を覚えました。これもけっこう楽しいです。

「その気になればすぐにでも始められるけど、突き詰めようと思えばとことん奥が深い」。ここはもうホント、そのまんま。もっともどんな趣味でもそういう側面はあるでしょうけど。

お稽古は基本的に師匠と一対一ですが、お弟子さん仲間と謡をご一緒したり、お仲間の仕舞の地謡に入ったり。なので「一人で十分楽しめるけど、仲間と一緒でも楽しい」。私は今年、能の地謡にも入らせていただいて、とても貴重な体験になりました。

というわけで、趣味としての「お能」をおすすめいたします。


▲撮影:三上文規氏

*1:はてな匿名ダイアリー」のことです。https://d.hatena.ne.jp/keyword/%E5%A2%97%E7%94%B0

*2:紋服は日常的に着るものではないので、すごく状態のいいものが多いです。どれもおそらく故人のもの(亡くなられた後、ご家族がネットショップに売るんでしょうね)で、家紋も自分のとこのじゃないですけど、ぜんぜん気になりません。