昨年の末に「ジャンボ宝くじ」を買いました。「3連バラ*1」と「福連100*2」と「福バラ100*3」をそれぞれ1セットずつ、合計230枚=69000円です。しかもジャンボ宝くじを購入したのは今回が初めてではありません。年に5回あるジャンボ宝くじ、すなわちバレンタイン、ドリーム、サマー、ハロウィン、年末のいずれも同じ買い方をしているので、1年間に69000円✕5回=345000円を宝くじに投じていることになります。
宝くじは「愚者の税金」とか「情弱ビジネス」とか「隕石に当たって死ぬ確率のほうが高い*4」などと言われています。どんなギャンブルよりも還元率が悪く、あんなものを買うなんてお金をドブに捨てるようなものだ、正気の沙汰とは思えない……と散々な言われよう。かくいう自分も、かつてはそう思っていましたし、年末の寒空のもと宝くじ売り場に長蛇の列をなす人々を信じられない気持ちで眺めていました*5。でも「新しい贈与論」を主宰されている桂大介氏のこの記事を読んで、少し考え方が変わりました。
「当たれば儲けもの、外れたら寄付。宝くじは人心にフィットした贈与の仕組みなのかもしれない」。この記事によれば、宝くじは還元率(当選金として支払われる)が47%、手数料(運営や広報のために使われる)が14%、控除率(公共事業などに使われる)が39%ほどだそうです。そして、仕組み自体が似ているという「ふるさと納税」は還元率30%、手数料10%、控除率60%であるよし。
私は「ふるさと納税」について、税金の一部を牛肉やカニなどの贅沢品として消費しちゃうというのはよいことなのだろうか……と疑問に思ってきました。それでこれまで一度も利用したことはなかったのですが、はたしてこちらの記事では「ふるさと納税」制度について、それは「未来を食べて”今”の享楽にふける」行為であり、「本来、子や孫、あるいは老後の自分が受けるはずだった未来への投資利益を肉や魚に変えて今食べてしまっている」と批判されています。ようは、単なる税金のムダづかいではないかと。
それなら宝くじを買うほうが、まだマシではないかと思うのです。口幅ったい言い方になりますが、私は若いころから、収入のせめて1割くらいは社会に還流させたい、つまりは寄付をしたいと思ってきました。「金は天下の回りもの」を信奉しているというわけです。それで以前は応援したいと思えるNPO法人やクラウドファンディングなどを選んでは寄付をしていました。でもそれなら宝くじを通して社会に還流させるのもいいのではないかと思ったのです。
宝くじを通して寄付をしても、地方自治体がそれをきちんと活かした使い方をしてくれるかどうかはちょっと信頼を置けないところがあります。ムダな公共事業ってのもままありますから。でも、自分でNPOなどの団体を選んで寄付をするのが最良かといえば、それはそれで短所があるように感じます。結局は広報能力のある「有名どころ」を選ぶ結果になりがちですし、そういう広報能力があるところからやけに豪華な報告書が送られてきたりすると「こんなところにお金をかけずに、もっと本来の活動に振り向けてほしいな」と思うこともあったりして。
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ご案内の通り、宝くじは連番の場合、10枚に1枚はかならず7等(300円)が当たることになっています。また「福連100」や「福バラ100」は下2桁が00から99まで入っているので、6等(3000円)も必ず1枚は当たります。というわけで、「3連バラ」と「福連100」と「福バラ100」で、最低でも合計12900円はかならず当たることになり、さらに「宝くじアプリ」からのネット購入だとポイントがつく(690ポイント)ので、実質的な購入金額は69000円−12900円−690円=55410円となります。
もちろん、ときにはほかの等級に当たることもあります。今回の年末ジャンボ宝くじでは「3連バラ」で6等(3000円)が1枚、「福バラ100」で5等(10000円)が1枚当たるなどして、合計25900円の当たりとなりました。アプリのポイントも差し引いて実質的な購入金額は42410円。ジャンボ宝くじは年間5回発売されているので、こんな感じで1年間におおよそ25万円ほどを寄付していることになるわけです。
所得税に住民税、消費税……ただでさえ重税にあえいでいるのに、そのうえ年間で25万円も国に寄付するなんてやっぱりバカじゃん、愚者じゃん、情弱じゃんと思われるでしょうか。でも私としては、上述したように、これは収入の一部を社会に還流させている(Pay it forward)と思えばよいのです。しかもこれですら当初のいささか高邁な理想である収入の1割にはいたっていませんから、クラファンなどへの寄付も折に触れて行っています。
そして、まずありえないものの、万万が一、高額当選などするかもしれないという「ワクワク感」も楽しめます。宝くじアプリには自動再生で1枚1枚当たりを確認する機能などもあったりして、抽選日にはけっこう盛り上がります。「新しい贈与論」の記事にはこんな意見が紹介されていましたが、私もほぼ同意見です。
宝くじの高揚感を味わいつつ、そのお金が一部寄付に回るというのは一石二鳥でよいモデル
宝くじを通じた都道府県や都市への「寄付」は、薄く広くではあるけれども「天下の回り物」としてのお金の還流としてはそんなに悪くないのではないかと思うのです。もっとも、「当店から当たりくじが出ました!」と大書されている宝くじ売り場にこぞって並ぶというのは、いまでも解せませんが。