インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

THE FIRST SLAM DUNK

うちの学校は学生がすべて外国人留学生で、入試の際に行われる面接では「なぜ日本語を学ぼうと思ったのか」といったような質問が行われます。ベタ過ぎる質問ですが、実はその理由を聞きたいというよりも、全体的な日本語の運用能力を見ています。それはさておき、留学生のみなさんから聞かれる圧倒的に多いお答えは「マンガやアニメで日本のことを知ったから」。

好きなマンガやアニメ作品を原語である日本語でも理解したい、楽しみたいという理由から日本語を学び始めたという方が圧倒的に多いのです。では具体的にどんな作品が好きですか(好きでしたか)と聞くと、子供の頃から親しんできた作品として筆頭に上がるのが『ドラえもん』、『ドラゴンボール』、『ワンピース』のみっつ。加えて『スラムダンク』というお答えも多いです。いずれも定番中の定番ですね。

スラムダンク』が好きな方はなぜか圧倒的にアジアの男子留学生に多いです。欧米系の方はバスケットボールにあまり心ときめかないみたい。でもアメリカのMBAなど熱狂的なファンが多いですから不思議な気がしますが、よく考えてみると北米からの留学生はかなり少ないのでした、うちの学校の場合。MBAが好きという方は、アジア、とりわけ中国語圏の留学生にも多く見られます。

そういえば、先日銀座の蔦屋書店に立ち寄ったら、中国語圏からの観光客と思しきお二人連れが『スラムダンク』のイラスト集を興奮気味に手にとって買い求めていました。その人気を再確認したわけですが、私自身はバスケはおろかスポーツ競技全般に心ときめかない人間でして、マンガ『スラムダンク』も読んだことがありません。留学生のみなさんからすれば実に「話の合わない人」でしょうね。

それで、きのうはその『スラムダンク』の最新映画、原作者の井上雄彦氏が監督・脚本を手がけたアニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』を見てきました。『スラムダンク』の登場人物やストーリー、背景にある世界観などをほとんど知らずに見たわけですが、いや、すごかった。二時間以上あったと思いますけど、身じろぎもせず(できず)に画面に引き込まれました。正直に言うと、ちょっと涙しちゃったくらいです。

ネタバレになるのであれこれ書きませんが、この作品は人物の造形とストーリーの作られ方もさることながら、それを支える映像の美しさが半端ではありません。CGも駆使していながら、マンガのタッチーーそれも井上雄彦氏独特のーーが活かされていて、とにかく見ごたえがあります。これは映画館の大画面と大音量で見るべき作品だと思います。パソコンのスクリーンではあの映像世界に身を置くことはできないでしょうし、ましてや動画の早送りやスキップで見られるべき作品でもありません。

映画のオフィシャルサイトにはスタッフへのインタビューを収めた“COURT SIDE”というコンテンツがあって読みごたえがありますが、でもこれは映画を見た後に読んだほうがよいと思います。まずはできるだけ情報を入れずに、あの映像に浸ってくるのがおすすめです……って、『スラムダンク』のことをほとんど何も知らない私が言うのもおこがましいですが。しかし、同作品の世界をほとんど知らずにこの映画を見ることができたのは、逆に極上の体験でした。

slamdunk-movie.jp

映画館では「安西先生タプタプステッカー」をもらいました。ネットの情報によるとこれは今年の元旦から入場者特典として配られていたものの、早々に配布終了となっており、急遽きのうから追加配布が始まったものだそうです。おお、これは僥倖。『スラムダンク』の知識は薄い私ですが、安西先生の「あきらめたらそこで試合終了ですよ」くらいは知っておりました。あした早速職場へ持っていって、留学生諸君に見せびらかします。