澎湖から台北に戻って、Airbnbで借りた部屋のチェックイン時間までまだかなりあったので、新北市は新荘副都心にある國家電影及視聽文化中心に行くことにしました。ここは台湾の映画やテレビのアーカイブを収蔵し修復している専門の施設です。ここでいま、私が台湾映画の中でいちばん好きな監督:楊德昌(エドワード・ヤン)氏の回顧展が開かれているのです。
お昼ごはんを食べた場所からは2020年に開業した台北捷運環状線で行くのが一番便利そうだったので乗りましたが、終点のひとつ手前に「幸福」という駅があるのを見つけました。新荘の幸福……ということは、あの台湾のアニメ映画『幸福路上(邦題:幸福路のチー)』の舞台である幸福路ではありませんか。というわけで、目的地に向かう前に途中下車して、幸福路を歩いてみました。
幸福駅から数百メートルほど西へ進むと幸福橋がありました。ここは映画の冒頭、アメリカから実家に戻ってきた主人公の林淑琪がすっかり変わってしまった河辺の様子に驚いて“怎麼會變成這樣? 差太多了吧。(どうしてこうなっちゃったの? 変わりすぎでしょ)とつぶやく場所です。
▲映画にもこの左側のスロープが描かれています。
幸福路は観光的にはとくに何もない(失礼)場所ですが、映画の中に出てくる風景と重ね合わせてしばし余韻に浸りました。とはいえこの映画、台湾の留学生に聞くとほとんどの方がご存知ないんですよね。2017年の映画ですからそれほど古いわけでもないのですが、あまり知られていない……というか、幸福路という道があることすら「ありましたっけ?」という感じ。
新荘にある輔仁大學の卒業生も知らないと言っていたので、ここは本当にごくごくフツーの台湾の街角なんですね。まあ私だって東京にある道の名前を全部知ってるわけじゃないから、当然といえば当然ですか。でも個人的にはいわゆる「聖地巡り」ができて楽しかったです。