フィンランドから帰ってきて、東京の人の多さに酔いました。歳を取ったからか、昔は何ともなかった人混みがとても苦手になったのは自覚していたのですが、これだけ人の少ない場所ばかり訪れたあとに東京に戻ると、その「人圧」とでもいうもののあまりの違いに、身体が拒否反応を起こすみたいです。自分もその人混みを作り出しているひとりなんですから、勝手なものではありますが。
さっき試みに「人圧」で自分のブログ内を検索してみたら、この一年あまりで五回も弱音を吐いていました。「人混みに耐えられなくなってきた」と。それ以前はまったく書いていなかったのですから、これはもうここ数年のうちにそういう心の病を抱えてしまったということなのかもしれません。
人混みが苦手ですから、旅に出ても人の多い観光名所にはあまり行きたくありません。ここ数年は台湾に何度か出かけましたが、いずれも離島や、離島のそのまた離島など、なるべく人のいないところを選んで行くようになりました。360度見回しても人の姿が見えない場所にくると、心底解放されたような気持ちになるのです。だったらそれこそ人跡未踏の荒野や原野にテントでも担いで行けばいいんですけど、そこはそれ夜には快適な宿に戻ってゆっくりパソコンをひらいてブログでも更新したいという……やはり勝手なものですね。
今夏も台湾の離島、澎湖諸島の友人が今年から始めた民宿に泊まりに来ました。いつもはスクーターを借りて郊外を走り回っているのですが、今年は細君も一緒に来たので身体のことを考えて車を借りました。台湾は国際免許証が通用せず、日本台湾交流協会が業務を委託しているJAFによる「免許証の翻訳」がそのかわりになります。
スクーターを借りるときはいつもこの“翻訳本”で借りていたので今回も持参しましたが、さる筋からの情報で国際免許証も持参したところ、これだけで車を借りることができてしまいました(離島だから管理が緩いのかしら……あまり公表しちゃいけないことのかもしれませんね)。ともあれ、この車で島の郊外ばかりゆっくりゆっくり、それこそ制限速度を守って風景を楽しみながら走りました。澎湖も馬公市の中心街は車が多いですが、それ以外はあまり走っていなくて「ストレスレス」です。
それでも友人のすすめで湖西郷にある「摩西分海(モーゼの海割り)」を見に行きました。ここは海岸から沖にある小島までの間に、干潮時に砂州(というか岩の州)が出現するという観光名所です。以前にも来たことがあるのですが、その時は満潮でほとんど人がいませんでした。今回は友人から砂州の出現時間を教えてもらって、その時間に行ってみたのですが……。
澎湖諸島の観光客が全部集まってきたんじゃないかと思えるくらいの、ものすごい人混みで驚きました。車を停める場所を探すのに苦労し、人混みをかき分けて海岸を見るのに疲れ、現れた砂州もまあ写真で見たとおりで、あああ……やっぱり来るんじゃなかった。観光名所なんて、事前に写真で見ていた風景を確認するだけの場所だと自分に言い聞かせていたはずなのに。早々に退散してしまいました。
先日のタリン旧市街でも感じたことですが、有名な観光地にはもう行かないようにしよう(というか、もう心身ともにムリ)と改めて心したことでありました。