インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

留学生にとって「鬼門」のカタカナ表記

勤め先の学校では新学期が始まり、今週は各種のオリエンテーションが行われています。うちの学校は二年制で、上級生(二年生)はすでに学校のあれこれになじんでいるのですぐに通常の授業に入ってもよいのですが、コマ数やシラバスなどとの関係があるので、今週は「特別授業」をいくつか設定しています。

そんな授業のひとつを企画して行うよう仰せつかったので、私はカタカナに関する授業(というかゲームのようなもの)を行いました。外国人留学生が日本語を学ぶ上でけっこう大きな「鬼門」になるのがカタカナの読み書きだからです。

日本語には外来語がたくさん入ってきている上に、原音とはかなり違って聞こえる母音ベタ推しの発音と表記がなされ、かつ最近はいわゆるカタカナ用語がアンビリーバボーなくらい氾濫しています。というわけで、すでに授業で学んだことの復習として、世界の主な国名や都市名のカタカナを書いてもらうことにしました。

3人ひと組のチーム対抗戦にして、100個の国名や都市名のカタカナを書いてもらい、正解数の多い上位チームには賞品を出すことにしたら、けっこうみなさん真剣に取り組んでくださいました。あ、もちろんゲーム中はスマートフォンなどを使わないというルールです。

採点結果から見えてきたのは、長音の位置で苦労する方が多いこと(ペルーをペールとか、オーストラリアをオストラリーアとか)、拗音の扱いにまごつくこと(ストックホルムをストクホルマーとか、ジャカルタをジカルターとか)などで、これは予想通りでした。

あと、原音あるいは英語・中国語の発音からかなり離れているものも難しかったようです。例えばジュネーブ(英語や中国語の発音をむりやりカタカナで書けば、それぞれジュネイヴァ・リーネイワー)、モスクワ(同モスコー・モーシークー)、ウィーン(同ヴィエナ・ウェイエナー)、ミュンヘン(同ミュニク・ムーニーヘイ)、ワルシャワ(同ワルソー・ホァシャー)などなど。

でも逆に原音あるいは英語や中国語の発音とかなり離れているからこそ、意識して覚えやすいんじゃないかとも思うのですが、これはこれで難しいみたい。私個人としては、原音できれいに発音できている固有名詞をわざわざ日本語の母音ベタ押し発音で言ったり書いたりしなきゃいけないので、留学生のみなさんには申し訳ないような気にもなります。

それでも、きちんと日本風に言ったり書いたりしないとおそらく日本人(日本語母語話者)には分かってもらえないわけで……ちょっと複雑な気持ちです。まあ私も英語や中国語を学ぶときに頑張って覚えてきたので、留学生のみなさんも楽しみながら覚えていただきたいと思います。