インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

世界の都市名をカタカナで正確に書こう

留学生の通訳クラスでは、いろいろな角度から日中・中日通訳翻訳の訓練をしています。私は通訳、つまり音声を聞いて音声を出すことに特化した訓練を担当しているのですが、チャイニーズ(中国語母語話者)のみなさんが語彙量を増やす上で「鬼門」としている日本語のカタカナ語(外来語)をどうやって【音声として】定着させるかに日々頭を悩ませています。

チャイニーズのみなさんは日本語のカタカナ語の発音がとても苦手なところにもってきて*1、受けての日本人(日本語母語話者)はそのほとんどが外語本来の発音や英語の発音になじんでおらず*2、さらに人名や地名などの固有名詞は文脈からは独立した情報なので、正確な(日本人にわかる)音を発しないとまず「一発アウト」なのです。

国名や都市名などは通訳訓練以前の一般常識なので、訓練の最初の段階でまとめて覚えてもらっちゃうようにしています。グロッサリー(用語集)を配り、音と表記を一緒に入れたQuizletの教材も配り、すきま時間で覚えるようにと言っておいて、しばらくしてから確認のためのワークシートをやってもらいます。ワークシートと言っても単に中国語の国名や地名を日本語のカタカナで書くだけです。文字数のヒントになるようマスを埋める形になっています。

通訳訓練ですから音を聞いて音を出すだけでもいいのですが、そこはそれ、母音をきっちり発音したがる日本語のこと、カタカナで正確にかければ発音することもできるだろうと期待して。それで今日も授業の最初に軽いウォーミングアップのつもりでワークシートをやってもらったのですが……結果は「惨敗」でした。ほとんどの方が、ほとんどの都市名を正確に書けません*3。う〜ん、これはカタカナ語の定着方法について、もうちょっと別の戦略を考えたほうがよさそうです*4

ちなみに今日やったワークシートは以下の17問。日本語がおできになる中国語母語のみなさま、ぜひマスを埋めてみてください。あ、日本語母語の方も、漢字の字面とマスの数から正解の都市名を類推してみてください。

1 維也納 □□□□
2 雅加達 □□□□□
3 雅典 □□□
4 吉隆坡 □□□□□□□□
5 斯德哥爾摩 □□□□□□□
6 蘇黎世 □□□□□□
7 日內瓦 □□□□□
8 巴塞羅那 □□□□□
9 莫斯科 □□□□
10 布宜諾斯艾利斯 □□□□□□□□
11 布魯塞爾 □□□□□□
12 布拉格 □□□
13 慕尼黑 □□□□□
14 墨爾本 □□□□□
15 耶路撒冷 □□□□□
16 里約熱內盧 □□□□□□□□
17 溫哥華 □□□□□□


https://www.irasutoya.com/2016/10/blog-post_30.html

※正解は「続きを読む」をクリックすると現れます。


1 維也納 ウィーン
2 雅加達 ジャカルタ
3 雅典 アテネ
4 吉隆坡 クアラルンプール
5 斯德哥爾摩 ストックホルム
6 蘇黎世 チューリッヒ
7 日內瓦 ジュネーブ
8 巴塞羅那 バルセロナ
9 莫斯科 モスクワ
10 布宜諾斯艾利斯 ブエノスアイレス
11 布魯塞爾 ブリュッセル
12 布拉格 プラハ
13 慕尼黑 ミュンヘン
14 墨爾本 メルボルン
15 耶路撒冷 エルサレム
16 里約熱內盧 リオデジャネイロ
17 溫哥華 バンクーバー

*1:例えば長音や拗音、静音と濁音の区別などに特に苦労しています。

*2:例えば“Moscow”を「モスコー」、“Vienna”を「ヴィエンナ」と発音しても一般的な(?)日本人には通じにくいです。

*3:バルセロナがバサロンナ、ミュンヘンがモニヘール、ジャカルタがヤガルダーという感じ。中国語の音に引きずられるのです。

*4:実のところ、こうやって国名や都市名のカタカナを正確に覚えることだけに意味があるのではなく、より良いコミュニケーションのためにすべての語彙を中日両語で正確に言おうとする、そういう「プロ意識」(きちんと言えて当然、言えなければ恥ずかしいといったような)を持ってもらうことが目的なのですが。