勤め先の学校は新学期を迎え、今年も世界中から留学生が新たに入学してきました。私が担当している学科も昨日が入学式で、コロナ禍でしばらく途絶えていた中国大陸からの学生さんも見かけるようになりました。
入学式後のオリエンテーションで、担当の先生方が揃うまでなにか「場つなぎ」に話をしろと振られたので(よくそういう役を仰せつかります)、ひとつだけ希望を述べました。これから二年間この学校で学んでいる間に実行してほしいこととして、同じ母語同士の留学生であっても、教室にいる間は日本語で話してほしいという希望です。
語学は、特に聞いて話すスキルにおける語学は、ある種の演技、あるいはモノマネみたいなマインドセットが必要です。だから、日本語の特に聞いて話す能力をできるだけ伸ばしたいのなら、たとえ同じ母語話者同士であっても(例えば中国人同士であっても)演じるような気持ちで日本語で会話してほしい。そう申し上げました。
実はもう十数年前から数多の留学生のみなさんにこの「お願い」をしてきました。その意図をくんで果敢にチャレンジしてくださる留学生も多いのですが、なぜか中国語圏の学生さんはなかなかこれができません。どんなに励ましても、ついつい中国語で喋り倒してしまうのです。水は低きに流れる。そのほうが楽だからです。
十数年実践して奏功しなかったのですから、私はもうほとんどあきらめてはいますが、それでも今年もこの希望を申し上げました。さて今年は、他の言語圏(英語やスペイン語などなど)の学生さんたちに倣って、お互いの母語は同じだけれどもあえて日本語で演じるように話してくれる中国語圏の学生さんが現れるでしょうか。
追記
実はこんなことを言っているのは、うちの学校でも私だけなので、これはよほど奇矯な考え方なのかなと思っていました。でも先日YouTubeで、英語の発音系YouTuberとして有名なだいじろー氏のこの動画を見つけて、快哉を叫びました。
だいじろー氏は、外語を学ぶにあたっていちばん大切なことは、いかに自分を破壊して演技をするか、自分の人格・メンタルブロックを破壊して言えるかどうか、自分の心地いいゾーンから出ていけるかどうか、畢竟その「態度」にかかっているとおっしゃっています。
氏はなかば興奮気味にご自分の考えを説いていらっしゃいますが、その興奮するお気持ち、本当に本当によくわかります。これを信じて、理解して、実行に移してくださる学生さんは本当に本当に少ないからです。