『反逆の神話』を読みながら、いわゆる「マクドナルド化」への批判に対して、その批判が必ずしも世の中の実態を正確に踏まえていない可能性について考えました。
マクドナルドに代表されるような巨大フランチャイズやチェーンが地域の文化を壊し、大量生産される画一化された商品を大衆は大量消費させられている……といった図式の批判が本当に正しいのか。大量生産される画一的な商品という点ではマクドナルド以外にも様々な物があるのに、なぜマクドナルドが象徴的に(それこそ「マクドナルド化」という言葉に代表されるように)批判の対象になるのか。実はこの本には、マグドナルドに関してこんな記述もあります。
文化的なエリートのほとんどはマクドナルドの飲食物が嫌いだと公言している。実際のところ、フランチャイズ制は不釣り合いに下層階級に役立っているから、その商品はおのずから上流の美的感覚には侮辱となる。だが偏見なしに、成功しているフランチャイズやチェーン店に行ってみれば、なぜそれが成功しているかはすぐわかる。大抵の場合は値段の割に明らかに上質な商品を提供するからだ。(397ページ)
ここはまるで自分を名指しされているような感覚を味わいました。私もまたそのように「公言」してきたひとりだからです。マクドナルドは(吉野家だってケンタッキーフライドチキンだって同様ですが)もう十数年単位で利用したことがありません。たぶん最後に利用したのはアメリカに旅行したとき帰国便に乗る直前に「やむなく」空港で、だったと思います(早朝で、他に開いている飲食店がなかったのです)。だとしたらもう15年以上前です。
マクドナルドと同様、日本で「上流」あるいは左派・リベラル(最近はこのたてわけも曖昧になってきましたが)と呼ばれる人々から似たような批判を受けてきたのは「山崎製パン」かもしれません。私が学生の頃、左派界隈では同社のパンを「うんちパン」と罵倒する言説にもたびたび触れたものでした。いまからすれば、同社が業界トップ企業だという点から左派の目の敵にされていたようにも思えます。
山崎のパンにはカビが生えない、だから添加物満載だという批判には「それは手作りパンよりも格段に徹底された衛生管理がなされているから」という批判がなされたものも記憶に新しいところです。
食品業界で有名な話があります。「私が家でパンを焼くと、すぐにカビが生えるのに、ヤマザキのパンはカビが生えない。食品添加物まみれに決まっている」と主張した女性に対して、「手作りパンにカビが生えるのは、あなたの台所が汚いからです」と鈴鹿医療科学大の長村洋一教授が一喝した、というエピソードです。
https://president.jp/articles/-/30078
マクドナルドにせよ山崎製パンにせよ、業界でトップを走っているのにはそれなりの企業努力や現場の人々の取り組みがあるはず。もちろん巨大企業ならではの手練手管があって、それに「バカな」大衆が乗せられているだけだという啖呵をきるのは胸がすく思いかもしれませんけど、そうやって大衆から遊離した主張の左派(というか左派の人々だって大衆の一部のはずですが)にあまり明るい未来はなさそうですよね。
そんなことを思ったので、先日トレーニングの帰りにマクドナルドへ寄ってみました。ビッグマックのバリューセット550円。ニュースで伝えられていたように物流の停滞が影響しているとかで、マックフライポテトはSサイズです。
15年以上ぶりで食べたそれは、記憶にあったのより薄味で淡白でした。けっこうおいしいと思ったけれど、あとでひどく胃もたれしてしまいました。たぶんフライドポテトのせいじゃないかなと思います。Sサイズでもけっこう「どん」とくるのです。ここ数年、普段から揚げ物をほとんど食べない生活になっていたからかもしれません。