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鞄と夾板

新明解語源辞典を読んでいたら、「鞄(かばん)」の語源は中国語の“夾板(jiābǎn)”だという説が載っていました。ホントですか? 現代中国語で“夾板”という言葉はあまりポピュラーじゃないと思いますが、辞書を引けば「副木(そえぎ)、ベニヤ板、馬を車につけるときの『くびき』」などと説明があります(现代汉日辞海)。

Googleで画像検索してみると、圧倒的にベニヤ板や合板の写真が出てきます。そこから「かばん」までは距離がありそうですが、昔の書物には表紙と裏表紙に板を使って蛇腹状に折りたたんだものがあったようで、そこから「書類ばさみ」とか「書類を持ち運ぶもの」という意味を見出すこともできそうです。

また現代中国語で「脇の下」のことを“腋下(yèxià)”とか“腋窩(yèwō)”などと言いますが、ほかにも“胳肢窩(gāzhīwō)”という言い方もあり、ときに“夾肢窩”とも書かれます。つまり“夾”が“gā”と読まれることもあるわけで、そうなると「ガーバン」→「かばん」もかなり近くなります。

もっとも、鞄の語源には諸説あるらしく、例えばこちらのページでは他にもオランダ語語源説を紹介し、しかもオランダ語と中国語いずれも語源として採用するほどの「裏付けが取れない」とされています。

japanbag.com

新明解語源辞典には他にも中国語の“夾槾”からきたという説も紹介されています。いずれもにわかには首肯しがたいです。それから、こういう豆知識はついひとさまにひけらかしたくなりますが、そのとたんに「めんどくさいオジサン」になりそうなのでやめておきます。

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https://www.irasutoya.com/2013/08/blog-post_5325.html