ジムのトレッドミルで走りながら『ゆる言語学ラジオ』を聞いていたら、人間は本能的に数字の1、2、3までは把握できるが、4以上は文化的な習得が必要で、言語によってはそれ以上の概念がないものもあるという話をしていました。よくいわれる「いち、に、さん、たくさん」というやつですね。
それを裏づける現象の一つとして、数を表す言葉や文字も4以上からとたんに複雑になる言語が多いのだそうです。確かに日本語の漢字(というか、もともと中国語ですが)も一、二、三までは棒の数を増やすだけなのに、四は突然難しくなります。厚切りジェイソン氏がネタにされていましたね。
ローマ数字もⅠ、Ⅱ、Ⅲときて、次はⅣです。やはり4以上になると3との区別がつきにくいのではないかと。Ⅲ と ⅡⅢ ……確かに分かりにくいです。
序数も、例えば英語では first、second、third ときて、4以降は fourth、fifth、sixth ……というように “th” をつける形になっていて、これも123だけが「特別扱い」です。面白いなあと思いながら聞いていて、じゃあいま趣味で学んでいるフィンランド語ではどうだったかなと考えました。
フィンランド語の序数は ensimmäinen、toinen ときて、3以降は kolmas、neljäs、viides、kuudes ……のように定型化します。つまり1と2だけが特別扱い。しかも意味は ensimmäinen は「最初の」で英語と同じですが、toinen は「(それとは)別の」です。特別感が半端ありません。フィンランド語の祖語になった言葉を使っていた人々にとって、ひとつめとふたつめの違いが特に大きな意味を持っていたのかしら。
ちなみにフィンランド語の1から10までの数字はこうなっています。
1 yksi イクシ
2 kaksi カクシ
3 kolme コルメ
4 neljä ネリヤ
5 viisi ヴィーシ
6 kuusi クーシ*1
7 seitsemän セイッツェマン
8 kahdeksan カハデクサン*2
9 yhdeksän ウフデクサン
10 kymmenen キュンメネン
最初に学んだときはとても新鮮でした。しかもじーっと見ていると、1と2、5と6、8と9が対になっていそうな感じがします。そして8と9はそれぞれ2と1に対応していそう。
8 kahdeksan | 2 kaksi |
9 yhdeksän | 1 yksi |
……と思って、ちょっとネットで検索してみたら、ここに書いてありました!
正確に読めているかどうかは心許ないですが、まず10という数が基準になっていて(これは当然指の数から発想されているんでしょう)、“-eksAn” は「足りない」という意味を表しているのだと。つまり 10から1引いたのが9、2引いたのが8という原義がかくれているんだそうです。
『ゆる言語学ラジオ』の解説では、日本語の5と10について、まず5は五本の指を折って数えるときに数え終わりに「至る」=「いつ」だから「いつつ」で、10は両手の十指がすべて曲げられて「たわむ」=「とおむ」だから「とお」だという説が紹介されていました。
しかも世界中の言語で5と10という単語には「手」との類似性がかなりまんべんなく見られるのだそうです。英語の“five”は“finger”と同根なんだって。へええ。フィランド語の10(kymmenen)の語源*3は上掲の資料でも不明だとされていましたが、素人考えで“kynsi(爪)”との相関関係があるのかもしれないと思いました。だとしたらまさに「手(指)」からの発想ですね。