インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ほん

未来予想にはツッコミを入れる

もう30年くらい前のことですが、「41歳寿命説」というものが取り沙汰されたことがありました。「21世紀初めには環境汚染の影響で日本人の平均寿命が大幅に下がる」というもので、食生態学者の西丸震哉氏がその著書で主張し、ひとしきり論争になっていたこと…

オンライン脳

職場の学校は現在夏休み中です。私は職場にいて教材の準備や教学に関わる勉強などをしていますが、学生のみなさんはそのほとんどが帰省しています。コロナ禍で丸々二年以上母国へ帰国できなかった留学生のみなさんなので、今ごろはたぶん思う存分羽を伸ばし…

腰痛放浪記 椅子がこわい

中国語で「ぎっくり腰」のことを“閃腰”といいます*1。腰に閃光が走るかのような形容は言い得て妙で、漢字の造語力とイマジネーション喚起力に驚嘆しますけど、もちろんこれを患った当事者からすればそんな呑気なことを言っている場合ではありません。私が最…

ジャーナリズムの「中の人」を応援する

新聞販売店さんが、醤油のペットボトル瓶を二本下げて訪ねてこられました。先日また購読を延長したので、その景品として持ってこられたのです。正直私はこうした景品はなくてもいいと思っているのですが、まあ醤油は日々使うし、暑い中わざわざ届けてくださ…

プロジェクト・ヘイル・メアリー

いつも記事の更新を楽しみにしている読書系ブログ『基本読書』さんと『本しゃぶり』さんがそろって強く推されていたので、買って読んでみました。アンディ・ウィアー氏の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』です。 プロジェクト・ヘイル・メアリー上述のブロ…

ソバーキュリアス1周年

週刊はてなブログさんが「ソバーキュリアス」を紹介してくださいました。blog.hatenablog.comこのブログも紹介してくださって、ここのところソバーキュリアスに関する文章をブログに書いていなかったのでちょっと意外でした。でも、それだけお酒を飲まない生…

大字・字・ばさら駐在所

うえやまとち氏の『大字・字・ばさら駐在所』というマンガがあります。確か『クッキングパパ』の連載開始と相前後して描かれていた作品で、単行本が第4巻まで出ています。うえやまとち氏が一時住んでおられた福岡県の農村を舞台にしていて、博多の警察署勤…

メタ認知がなかなか発動しにくい業界

「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」というポッドキャストの番組があります(YouTubeなどでも視聴できます)。私はこの番組が好きでよく聞いています。世界史のさまざまなエピソード(出来事だったり人物だったり制度や社会のありようだったり…

投資家が「お金」よりも大切にしていること

アメリカにおける成人ひとりあたりの年間寄付額は13万円だそうです。しかも「けっして、お金持ちだけが寄付をしているわけではなく、お金にゆとりがない人でも寄付を行う文化がある」のだとか。約十年ほどの前のデータで少々古い数字ではありますが、それで…

「まともな大人」の甘いささやき

昨日の東京新聞朝刊に、思想家の内田樹氏が「民主主義の手柄」と題する論説を寄せておられました。お若い方からの「民主主義って何でしょう?」という問いかけに「こんな返事を差し上げた」という形で、民主主義(民主制)の強みについて語られています。民…

なぜカルト宗教に「ハマる」のか

安倍元首相への銃撃事件で、安倍氏と、氏の祖父だった岸元首相の統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係が取り沙汰されています。『デイリー新潮』が「基礎から分かる」と銘打って統一教会がどのような団体なのかを解説していました。www.dailyshincho.jp…

フラワー・オブ・ライフ

よしながふみ氏のマンガ『フラワー・オブ・ライフ』を読み返しました。私はこの作品が大好きで(氏の作品はどれも好きですけど)これまでに何度も読み返しています。そのたびに新しい発見があるのですが、今回は作中に出てくる「オカマ」「ホモ」「レズ」と…

「向き不向きがある」の危うさについて

先日読んだアンダース・エリクソン氏とロバート・プール氏の共著『超一流になるのは才能か努力か?』で、もうひとつ考えさせられたのは、「生まれながらの天才」はいるのかという問題です。 人間の資質に関する議論のなかでも、生まれつきの才能が能力を決定…

ベテラン勢がなかなかやめない理由

アンダース・エリクソン氏とロバート・プール氏の共著『超一流になるのは才能か努力か?』という本を読みました。留学生の通訳クラスで行っている「講演通訳」の授業で、学生のひとりがおすすめしてくれた一冊です。いかにも自己啓発本といったタイトルで、…

戦争と日本アニメ

留学生のクラスで「東アジア近現代史」の授業を担当していて、ここ数週は大東亜共栄圏について話したり、みなさんが調べたことを発表してもらったりしています。毎年授業の一環として、1943年から制作が開始され1945年に公開された長編アニメーション映画『…

最後の読書

ここ数週間ほど、ひどく疲れていました。にわかに蒸し暑くなった気候のせいもあるのかもしれませんが、とにかく身体が疲弊していて「しんどい」のです。それでもジムには通っていますが、ふだんよりメニューがはかどりません。しかもお昼を回って夕刻にいた…

人はどう死ぬのか

誰にも必ず訪れる死について、ひとりひとりが自分の頭で考え、自分なりの「自分の最期はこうありたい」というスタンスを持っておくべき、また自分の親しい人々についても、その死に際してどういうスタンス持つべきかあらかじめ心構えを持っておくべきーー久…

ニッターズハイ!

マンガ『ニッターズハイ!』の第2巻が発売されていたので、Kindle版を買って読みました。ケガで陸上選手としての夢を絶たれた主人公の高校生が、手芸部で「ニット」という新たなフィールドを見つけていくというお話。陸上から手芸へという転換が意外なら、…

「誰もが自分と同じように行動すれば気持ちいい」か

毎朝通っているジムは比較的規模の大きな施設で、早朝から多くの方が運動されています。館内にはこういったジム特有のアップテンポな曲が流れており、加えて頻繁にアナウンスも流れてきます。スタジオプログラムの開始を知らせるアナウンスも多いですが、そ…

2030半導体の地政学

先般アメリカのバイデン大統領が来日した際、記者会見で台湾有事の際には「台湾を守るため軍事的に関与する意思があるか」と問われて「イエス」と答え、これを「うれしい失言」などと何だか奇妙な喜び方をしていた政治家がいました。大手マスコミにも「同様…

文化がヒトを進化させた

インターネットを「集合知」という言葉で形容することがあります。集合知(集団的知性)は、辞書的には「多くの個人の協力と競争の中から、その集団自体に知能、精神が存在するかのように見える知性」*1ということで、とりわけネットのそれはSNSの登場以降ち…

cakesが終了と聞いて

クリエイターと出版社、そして読者をつなぐというコンセプトの「cakes(ケイクス)」がサービスを終了するそうです。cakesには好きな連載記事もいくつかあって、私も一時は課金していたこともありました。書籍化されて買った本もけっこうあります。ただここ…

超没入:メールにもチャットにも邪魔されない、働き方の正解

私はGmailのアカウントを3つ持っています。1つは個人用、残りの2つは仕事用です。以前は個人用のアカウント1つで仕事にも兼用していたのですが、仕事の幅が広がるとともにアカウントも増えました。最初に使い始めたアカウントの「すべてのメール」で一番…

ひらやすみ

私は電子書籍というものが苦手です。なんど挑戦しても、紙の本のようには内容が頭に入ってこないので、もうすっかりあきらめてしまいました。ただし、マンガだけは基本的に電子書籍を買うことにしています。マンガはすぐに増殖して本棚の少なからぬ場所を占…

ホールフード

先日読んで非常に面白かった『科学者たちが語る食欲』に触発されて、なるべく「超加工食品」に手を出さず、一方で「ホールフード」の摂取を増やそうと思い立ちました。といっても、それほど大したことでもなく、以前はふつうにやっていたものの最近忙しさに…

科学者たちが語る食欲

食欲とは、すなわち「タンパク質欲」だったーー人間を含む動物における「食欲」のメカニズムについて、衝撃的な研究成果を紹介している一冊です。とにかく面白くて、一気に読み終えてしまいました。 科学者たちが語る食欲全部で367ページとそれほど大部の本…

ロシア点描

身内以外の人を信用しないが、いちど身内扱いになるとどこまでも親切にしてくれる。なぜか見知らぬ人が突然話しかけてくる。子供に薄着をさせていると、見知らぬ人から叱られる。極端な格差社会で、ネットを遮断し、国内向けの世界に閉じこもっているように…

ウクライナ侵攻と報道

ロシアによるウクライナ侵攻に関して、「多分に情緒的で勧善懲悪的な報道にはちょっと『うんざり』」していると先日書きました。 qianchong.hatenablog.com それで大手メディア発ではない情報にもいろいろ触れようと意識してきたのですが、今朝はその大手メ…

アンチソーシャルメディア

Facebookというものをほとんど使わなくなりました。何年か前にいったんアカウントを削除したものの、台湾の友人や日本国内の一部の知人とやり取りするためだけに復活させてしばらく使っていましたが、現在ではほぼMessengerくらいしか使っていませんし、自分…

中国共産党と流行歌

昨日ご紹介した石川禎浩氏の『中国共産党、その百年』ですが、中国の近現代史、その時代時代の空気や雰囲気を感じるためのひとつの切り口として、流行歌の数々がコラムの形で紹介されているのが、個人的にはとても楽しかったです。私も、いまではまったく行…