インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

プロジェクト・ヘイル・メアリー

いつも記事の更新を楽しみにしている読書系ブログ『基本読書』さんと『本しゃぶり』さんがそろって強く推されていたので、買って読んでみました。アンディ・ウィアー氏の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』です。


プロジェクト・ヘイル・メアリー

上述のブログでも語られていましたが、これは読後の感想を書くことが極端にはばかられるタイプの作品です。ほとんど何も情報が与えられていない中で、少しずつ謎解きが進んでいくのがたぶん最高におもしろいはず。

できれば表紙も見ないほうがいいくらいです(特に下巻)。巻頭に口絵がありますが、これも少し物語が進んでから見たほうがよいかと。ご家族かご友人に買ってきてもらって(その方々が既読、あるいは読むつもりはないという前提が必要ですが)、帯*1とカバーを外した状態で本を手渡してもらい、すぐ7ページの第一章から読み始めるべきです。

ジャンルとしてはさまざまな科学的知見をベースに組み立てられたSFですが(ジャンルくらいは明らかにしないと、そも読み始める動機すら生まれないですよね)、ファンタジー的な要素も多分にあり、特に私は職業柄、異なる言語間のコミュニケーションに関するアイデアと描写に興奮しました。

また物語の根幹を成す状況設定は、直近の世界情勢に関するメタファー、あるいはある意味アイロニーとも思え(これも詳しく書けませんが)、それもまた読書体験をより豊かで深いものにしてくれます。まさに巻を措く能わずの上下冊。

*1:この帯がまた大きなネタバレをかましているのでご注意を。