インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

なぜカルト宗教に「ハマる」のか

安倍元首相への銃撃事件で、安倍氏と、氏の祖父だった岸元首相の統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係が取り沙汰されています。『デイリー新潮』が「基礎から分かる」と銘打って統一教会がどのような団体なのかを解説していました。

www.dailyshincho.jp

この記事は、宗教学者:櫻井義秀氏の著書『霊と金:スピリチュアル・ビジネスの構造』からの抜粋という形になっています。その中で、統一教会の教義が紹介されているのですが、これを読んでおよそ40年近く前の体験を思い出しました。というのも、私も統一教会の勧誘を受けたことがあるからです。

当時は大学受験の浪人中で、大阪に住んでいました。何かの用事で京都へ行った折、四条烏丸のあたりで声をかけられました。どんなことを言われたのか、そしてなぜついて行ったのかはまったく思い出せませんが、とにかく大通りから数本内側に入った路地にある民家のような建物でビデオを見たことだけ覚えています。

文鮮明は、蛇とは後にサタンとなる堕天使にして元天使長のルシファー(統一教会ではルーシェルという)であり、人類始祖のエバがそそのかされて食べた禁断の果実とは、ルシファーとの禁断の愛であったと断じる。

そうそう、これです。ビデオでもこんな感じの説明をしていました。たしかアニメ仕立てだったと思います。なぜこの蛇が出てくる部分だけ覚えているかというと、ビデオを見たあとそこにいた信者(でしょうね、たぶん。きわめて温厚そうな人物でした)から「この蛇とはなんのことだと思うか」と質問を受け、それに私がなにがしかを答え、「なかなか本質を捉えている」みたいに褒められてちょっと嬉しかったからです。


https://www.irasutoya.com/2013/10/blog-post_2564.html

いま考えれば、そうやって褒めることも勧誘のテクニックに決まってるんですから、「褒められて喜んでんじゃねえよ」と、当時の自分を小一時間問い詰めたいところですが、私はその時なぜか「蛇」の解釈について、その信者と論争になりました。結局そこでかなり考え方に隔たりがあると思って辞去し、あやうく勧誘されて入信、あるいは洗脳という事態は避けられました。

ただ、この件を思い出して改めて胸ふたぐ思いになるのは、その時私が「論争」に持ち出したのが、当時私が母親に入信させられていた新興宗教神慈秀明会」の教義だったという点です。私はその後この宗教の洗脳を自分の力で解くことができました(以前ブログにも書きました↓)が、今となっては自分の「黒歴史」でしかない当時の入信経験が、はからずも統一教会からの勧誘や洗脳を防いでくれたという点に、なんとも割り切れない気持ちを抱きます。

qianchong.hatenablog.com
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そしてまた、あたら青春時代をあんなものたちに無駄に費やしてしまった自分の不甲斐なさにも(親の影響とはいえ)腹が立つのです。上掲のブログ記事にも書きましたが、自分を救ってくれたのは大量の読書と、様々な人々との関わりでした。たぶん新興宗教にハマってしまう大きな理由の一つは、社会から孤立してしまうことにあるのではないか。そんなことを十代の自分を思い返しながら考えています。