インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

科学者たちが語る食欲

食欲とは、すなわち「タンパク質欲」だったーー人間を含む動物における「食欲」のメカニズムについて、衝撃的な研究成果を紹介している一冊です。とにかく面白くて、一気に読み終えてしまいました。


科学者たちが語る食欲

全部で367ページとそれほど大部の本ではありませんが、この本はなぜか目次がともて細かいので(私が買った単行本版で16ページもあります)、とりあえずAmazonの「試し読み」で目次を眺めるだけでもその面白さの一端がわかると思います。

前半では目のさめるような動物観察の成果が示され、後半ではちょっと胸が苦しくなるような加工食品や大手加工食品メーカー、あるいは政府の現状が示されます。バッタなどを対象にした、気の遠くなるような地道な研究からわかった、タンパク質欲に支配された動物の食欲のありよう。三大栄養素であるタンパク質、炭水化物、脂肪のバランスに秘められた謎を追ううちに、健康と長寿、肥満の原因、現代の食環境の問題などを学ぶことになります。

動物はタンパク質欲を満たすために食べる。ということは、タンパク質の含有量が少ない食事では、それだけ炭水化物や脂肪の摂取を増やすことになり(少量含まれているタンパク質が「目標量」に達するまで食べてしまうから、結果的に糖質や脂質の摂取量が増える)、これが肥満につながるというのはなるほどと思いました。でもその一方で、タンパク質を摂りすぎると、老化を早め寿命を縮める生物学的プロセスが作動するという研究結果は、昨今の筋トレブームにわく私たちに食生活の再考を促すことになるかもしれません。

そしてもうひとつ、この本では「食環境」という概念が提唱されていて、その食環境が現代ではかなり危険な状況に直面しているという警鐘も鳴らされています。この部分も個人的にはとても納得感のあるものでした。もっともこれは、もうすでに何十年も前から指摘されている、加工食品や食品添加物などの問題をあらためて私たちに突きつけたにすぎません。ただそれを、食欲のメカニズムを鮮やかなまでに詳らかにされたあとに読むと、そのリアリティもひとしお。望ましい食生活・食環境とは、結局のところこういうシンプルな結論に行き着くのですね……。

最近あまりの忙しさにかまけて、特に昼食は、以前なら手を出さなかったコンビニ食や冷凍食品などでごまかすことが多かったのですが、これではいけません。とりあえずホールフードの摂取、とりわけ食物繊維の摂取を増やそうと、またスムージー用のブレンダーを使い始めました。なんて単純な、と笑われるかもしれませんが。