インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

スポーツゴジラ

仕事や私用で地下鉄都営大江戸線を利用することが多いのですが、その駅構内でときどき『スポーツゴジラ』というフリーペーパーを見かけることがあります。私は身体を動かすことは大好きですが、スポーツ競技にはあまり興味がありません。それに表紙に「toto」や「BIG」などのスポーツ振興くじのマークがついていて、それだけでなんだか胡散臭い感じ(失礼)なので、いつも素通りして手に取ることはありませんでした。

ところが今朝通りかかった駅で目にしたこのフリーペーパー、表紙はこんな感じで、特集は「スポーツと政治 スポーツとメディア」。ちょっと懐かしい左翼系のアングラ雑誌みたいな雰囲気です。鹿砦社あたりから出版されてそう。それで気になって一部もらってきたのですが、一読、驚きました。

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初めて知ったのですが、同誌は作家の長田渚左氏が編集長をつとめておられるんですね。今回の特集では「体育」と「スポーツ」を一緒くたに教育に取り入れてきた近代日本の問題から、今次のコロナ禍における健康と身体の人々の意識、さらには大手マスコミがこぞって五輪のスポンサーになるという「異常」な事態に代表されるジャーナリズムの欠如など、日本のスポーツをめぐる諸問題に対して、実に鋭い批判がなされています。アスリートに対しても忖度せずきちんと批判が行われていて、しかもフリーペーパーという誰もが読める媒体だからか、比較的平易に読める文章が掲載されています。

同誌のバックナンバーを見ると、以前から日本のスポーツ界に対してさまざまな建設的な批判をしてきているようです。しかも直近のバックナンバーはPDFで読めるというのも素晴らしいです。スポーツ振興くじの助成事業なんでしょと、よく考えてみれば根拠の不確かな理由でこれまで手に取ってこなかった自分を恥じました。

追記

ところでこの最新53号の表紙、ナチス式敬礼をしている男の上に飛び込みの選手が描かれているもので、ヒトラーとおぼしき男の顔には大きくバツ印がつけられています。それで私も「なかなかインパクトがあるな」と思って手に取ったのですが、同誌のホームページにこんなことが書かれていました。

53号表紙デザインについて、ある方面より疑義がよせられた為に×を付けて再配置する運びとなりました。

なるほど、よくよく表紙を見てみると、バツ印はあとからマジックで書かれていました。たしかに、ナチス式敬礼のイラストを何の留保もなしにそのまま描くというのはちょっと問題があるかもしれません。先日もポーランドアウシュビッツ収容所跡でナチス式敬礼をした観光客が逮捕されたというニュースがありましたね。
www.bbc.com
それでも長田氏がおっしゃるように、記事の内容については何の問題もないと思います。同誌は大学や図書館などに置かれているほか、都営地下鉄大江戸線浅草線三田線新宿線)の構内で手に入るようで、ホームページからバックナンバーも申し込めるみたい。『メトロミニッツ』とか『メトロポリターナトーキョー 』など、地下鉄で配布されているフリーペーパーはよく読んでいますが、ここまで硬派なのは珍しい。おすすめです。