インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

バカにしちゃいけない

最近YouTubeの「ゆる言語学ラジオ」というチャンネルを楽しんで視聴しています。言語学に関するさまざまな話題をお二人の出演者で「ゆる」く語るというチャンネルですが、いえいえ「ゆる」いどころか、とても知的好奇心を刺激される面白いチャンネルだと思います。

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お若い(失礼。でも私みたいな初老の人間からするととてもお若くて眩しいくらいです)お二人の頭の回転がとても速くて、聞いていて本当に心地よいです。中国語圏の“公眾人物”(著名人というか、公の場に登場することが多い方々)にもその話し方だけでも「頭いいなあ、聞いてて気持ちいいなあ」と感じる方が多くいらっしゃいますが、そうした方々と同じような雰囲気を感じます。

そのチャンネルで、いつもよりさらに「ゆる」く語るという企画でお酒を飲みながら雑談という回があったのですが、これも雑談ながらとても楽しめました。いろいろな話題がありましたが、私が特にひかれたのは「大手のビールはうまい」というお話でした。


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詳しくはぜひ動画をご覧いただきたいのですが、概略こんな話です。ビール好きがこうじて、自分で(法に触れないアルコール度数の範囲で)ビールを醸造してみたところ「クソまずかった」と。それは醸造過程で雑菌が入り込んでしまったのが原因だったようなのですが、そこから酒造会社の品質管理は「ハンパない」という見解につながっていきます。

そして大手のビールメーカーが出している定番のビールがどんなにおいしいか分かるという話に。あれだけの大量生産で、あれだけの高品質を実現するというのがどれだけすごいことか、とおっしゃるんですね。少し前に引用した「手作りのパンはすぐにカビが生えるけれども大手製パン業者のパンは生えない。添加物満載だからだ!」という批判に、「それはあなたの台所が汚いからです」と一刀両断された……という話に似ています。

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私もそのむかしどぶろくを造っていたことがあって、その時は一人悦に入っていましたが、いま思い返せばとてもじゃないけど酸っぱくて飲めた代物ではありませんでした。大量生産・大量消費を批判的に捉えるのは間違ってはいないけれど、だからといって手作りこそが至上で正義とふんぞり返るのも針が振れすぎだと。大量に高品質の物を作り出せるその裏では、そこに携わる人々の努力が営々と重ねられていて、その営為を頭からバカにしちゃいけないんですよね。

かつてカウンターカルチャーと呼ばれた一群の思想や運動に共鳴していた人たちの中には、とかく自分たちの立ち位置と相容れない存在に対してはなからバカにするマインドというか心性があったような気がします(私もそのひとりでした)。でもそれはこの社会全体をかなり偏った見方で捉えていたんだなといまでは思います。今回も改めてそれを、YouTuberのお若いお二人の雑談から教えられたような気がしています。

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