私は毎朝七時頃に新宿駅を利用しています。京王線新宿駅から直結している都営地下鉄新宿線と大江戸線のコンコースを通って代々木寄りの出口から地上に出るのですが、その途中にあるエスカレーターには多くの警備員さんが立っています。エスカレーターの上と下、合わせて五〜六人くらいいらっしゃるんじゃないかしら。
警備員さんたちはそれぞれプラカードのようなものを持ち、利用客に向かって繰り返し呼びかけています。いわく「エスカレーターでは歩かず、二列でご利用ください」。同様の主旨のアナウンスも天井のスピーカーから繰り返し流れていて、一種異様な雰囲気になっています。……が、呼びかけに応じる人は少なく、いつものようにエスカレーターの左側が空けられ、急いでいる方が私の横を駆け足で降りていきます。
かくいう私もここでは歩きはしませんが、いつもエスカレーターの左側を空けて乗っています。たくさんの人が駆け下りていくエスカレーターで、アナウンスに従って二列で利用していたら、かえって危ないですから。
この問題、もうかなり前からいろいろな意見が出されて論じられているような気がしますが、根本的な解決はできないのではないかと個人的には思います。ましてや警備員を多数配置して、プラカードを持って呼びかけを行っても、ほとんど実効性はないのではないかと。
左半身が不自由な方にとっては、必ず左側に立たなければならない(東京の場合)というエスカレーターは時に非常に危険な状況に陥るという話を聞いたことがあります。本来はひとりひとりの意識が高まることで歩かないエスカレーターを実現したいところですし、私は歩かないようにしていますが、社会全体の意識にまで広がるのはなかなか難しいでしょう。
一人分の幅しかないエスカレーターでは、ときどき全員が歩かないという状況が生まれることがあります。こんなふうに、物理的に歩けないような仕様にするしかいまのところ解決のすべはないように思います。