インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

対面授業の復活がうれしい

10月を控えて、今年度の授業もようやく折り返しに近づきました。思えば4月にすべての授業が「遠隔対応」となって以来、怒濤のように次々と沸き起こる問題に対処し続けてきた半年間でした。それでもまあ、春まではZoomでのミーティングもGoogle ClassroomのようなLMSも全く知らない状態から始めたのですから、よくここまでやってきたと思います。

教職員は教職員で精一杯やってきましたけど、学生諸君はやはり不満の方が大きいでしょうね。ネットやメディアで散見される意見を徴するに、遠隔授業やオンライン授業のメリットを説く学生さんもいらっしゃいますが、やはりそれまでの対面授業に比べれば「目減り感」は否めないと思います。

学校側が機敏かつ大胆に動いて、ネットの接続環境からハードウェアまで手厚く援助しているようなところは(そんな学校があるのかどうかは分かりませんが)ともかく、うちの学校みたいにスマホ一つで全ての授業に対応している留学生がいるようなところでは、学習の達成感はなかなか得られないでしょう。

ただ、学校の名誉のために言っておくと、うちの学校もネットやパソコンの環境が悪い留学生に対してはノートパソコンを貸し出すなどの対応策を取っています。なのに、不思議なことにそれを積極的に利用しようとする学生はほとんどいないのです。

あまり断定的に語るのもよくないとは思いますが、以前にも書いたように遠隔授業やオンライン授業は学生の主体性が非常に問われる学習形態だと思います。自宅学習になって「これ幸い」とより学習に対して消極的になっている学生の割合が増えているような感じがします。

qianchong.hatenablog.com

実際、オンライン授業で「顔出し」を渋る人も多いですし、一切発言しない人もいる。授業が終わってみんなZoomから退出して行っている中、何度呼びかけても退出しない人もいます。授業中に画面をミュートしたまま、何か他のことをしているのかもしれません。

私は複数の学校でクラスを持っていますが、そのうちのひとつでの、10月からの年度後半の授業は、教員からの強い要望もあって対面授業と遠隔授業を半々で組み合わせて行うことになりました。特に実習系の授業に関しては、学年やクラスなどで分散を図りながら、すべて対面での授業に戻すことにしています。私が担当している通訳訓練の授業も、すべて対面授業に戻ります。ただもう一つの学校は後半もずっとオンラインのままで行います。

頭木弘樹氏の『落語を聴いてみたけれど面白くなかった人へ』を読んでいたら、人が直接会って話すのと電話などで会話するのとでは相手の「存在感」が大きく異なるという話が載っていました。

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落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ (ちくま文庫)

教育の実験でも、対面授業とテレビ画面を通しての授業を比較すると「習得に大きな差があることがわかっています」とのこと。なるほど、私はオンライン授業には「身体性」や「空気感」が希薄だなと漠然と感じていた(その功罪はまだよく分からないものの)のですが、すでに結論は出ていたのですね。

qianchong.hatenablog.com

オンライン授業は教師と学生間にある空気の存在感が希薄ですが、実は学生同士がお互いに感じている存在感も希薄であり、それが学びにも少なからずマイナスの影響を与えているのではないかと最近思うようになりました。教室で一堂に会して授業に参加する場合は、学生同士のやりとりも結構大切なんですよね。

例えばちょっと理解できなかったところを隣の学生に「どういうこと?」と聞いたり(本当は教師に直接聞けばいいのですが)、困っているクラスメートがいたら助け船を出したり……。些細なことではありますが、そういうインタラクションが学習や訓練の成果を後押ししてくれているように思うのです。オンライン授業でも学生はZoomの後ろで、LINEやショートメッセージでやりとりをしているようですが、やはり声に比べてタイムラグは否めませんし、文字を打っている間は授業に集中できません。

ともかく、すべてではないものの対面授業が復活するということで少々ホッとしています。秋冬を迎えてまた感染状況が悪化していかないことを祈りたいと思います。