「そもそもお金とは何か」から始まって、就職、転職、キャリア選択、貯金、会計、借金、投資、税金、保険はもとより、破産や詐欺、さらには老後資金にいたるまで、お金に関する基礎知識をわかりやすく解説した一冊です。ごくごく初歩的な基礎知識しか書かれていませんから、実際に社会に出たらそれぞれをもう少し深く学ぶ必要はあるでしょうけど、ここに書かれていることすら知識としてはやや曖昧だったという方は多いかもしれません。実は私もそのひとりでした。
アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書 FINANCIAL LITERACY FOR MILLENNIALS
基本的に現在大学などで学んでいて、これから社会に出ていこうとする若い方を読者と想定して書かれています。もちろん私みたいな中高年が読んでも得るところは多いですが、お若い方こそぜひ読まれるべきです。私も学生時代にこうしたことを大枠だけでも学んでいたら、少なくともお金に関してはずいぶん違う人生を歩んだだろうなと思います。あれやこれやの無駄をせずに済んだだろうなと。私の場合はそれでも勉強代だったと思ってあきらめますが、お若い方はより賢いお金の使い方をすべきだと思います。
この本で推奨されているような生き方や暮らし方を良しとしない向きもあろうかと思います。人生そんなに「きちん」と、しかも若い頃から老後の生活まで見通した上で計画を立て、それに沿って生きていくなんて、あまりにもまっとうすぎやしないかと。特に若い頃など元気もあり余っていて、自らへの過信も大いにあり(それはそれで素晴らしいとも思うけれど)、この本に書かれているようなことなど、「うっせえわ」と思うかもしれません。
でも程度の差はあれ、こうしたことをきちんと学んで、堅実に人生を歩んでいる方は存外多いのではないかと想像します。そういう方々は声高に自分の選択を披露したりはしないけれど、落ち着いて、冷静に物事を見つめながら、より理性的な選択をしようとまじめに考えている。私はそういう若者ではなかったので、いまにして思えばとても恥ずかしいです。昨年『反逆の神話』を読んだときにもそれを強く感じました。
ともあれ、資産と負債のバランスを把握すること(要するに基礎的な簿記・会計の知識を持つこと)、「クレジットカードはいつも1回払いにすること」、「宝くじなどのギャンブルはすべて胴元が儲かる仕組みになっていること」などを明言しているところにも信が置けると思いました。アメリカの高校生向けに書かれた本ですが、日本の状況にも合うように翻訳は工夫されています。