インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ほん

英語を学ぶ人・教える人のために―「話せる」のメカニズム

第二言語習得研究の入門書。とても分かりやすい。これまでの研究で明らかにされたこと、まだ分かっていないことがハッキリ示され、その上で、現時点でこれらの研究成果を踏まえた学び方や教え方があるとすればどんなものかを解説する。 なかでも、文法の習得…

憂い顔の「星の王子さま」―続出誤訳のケーススタディと翻訳者のメチエ

『聖書』、『資本論』につぐベストセラー本と言われるサン=テグジュペリの『星の王子さま』。半世紀にわたる独占的出版権が切れた二〇〇五年以降次々に新訳が出版されたが、この本はそれら新訳版と、もとの内藤濯による訳本を俎上にのせ、翻訳の不備を細か…

北京三十五年――中国革命の中の日本人技師

「解放」前の1944年から文革後まで、北京に住み続けたある日本人技師の回想記。ネット上の古本屋でようやく手に入れて読んだ。 国民党時代の北京から、共産党入城、三反・五反運動、反右派闘争、大躍進、そして文革と、さまざまな近現代史の本で読んできたこ…

どうしてもわからなかった おいしさのひみつ

中国の“家常菜(家庭料理)”+粉モノ好きにはたまらない本をたくさん出しているウー・ウェン氏の新たな野心作。『北京小麦粉料理』の「手取り足取り版」とでも言えばよいだろうか。代表的な粉モノ料理の、特に麺(皮)にこだわって、コツを惜しみなく伝授す…

中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧

中国から世界各地に亡命したウイグル人への聞き取り調査をまとめた本。いずれの亡命者も「東トルキスタン」独立運動に関与したとして中国政府から苛烈な弾圧を受けている点が共通している。ところが、彼らの証言によれば全くの冤罪も少なくない。東大大学院…

中国の衝撃

野崎歓氏の『われわれはみな外国人である―翻訳文学という日本文学』を読んでいたら、この本が絶賛されていたのでアマゾンのマーケットプレイスで購入。論文集なので、なまなかな気持ちでは読み込めないのだが、中国革命の位置づけに関する論考が特に面白かっ…

村上春樹にご用心

読み始めてすぐ「これはどこかで読んだことがある」と思っていたら、主に内田樹氏のブログに書かれていた文章を集めた本だった。 というわけで、村上春樹論だけれど、丸ごと一冊を書き下ろしたものではない。氏のハードディスクを「村上春樹」で検索して出て…

チャンさん家の台湾ベジごはん

当節、中国語にハマっているマンガ家といえば、小田空に小道迷子。 小田空は現在『中国語ジャーナル』に《鼓励同学报》という連載(マンガというよりコラムだが)を持っている。文体や語り口は「〜じゃん」「〜だよね」なのだけれど、行間から漂う独特の雰囲…

『お言葉ですが……』異聞

『お言葉ですが……』は週刊文春に連載のコラムで、たまに同誌を買って読むこともあったけれど、ほとんどは後から文庫本でまとめ読みしてきた。ところが週刊文春での連載は、昨年で打ちきりとなっていたことを初めて知った。ううむ、情報が遅いなあ。 で、その…

ここのところ、高島俊男氏の本を五冊ほど立て続けに読んでいる。『お言葉ですが……』文庫版の未読ぶん数冊と、『座右の名文―ぼくの好きな十人の文章家』にこれも文庫版が出た『漱石の夏やすみ』。 『座右の名文』は、高島氏がいちばん大好きな著作家ベストテ…

心に残る話しかた

『中国語ジャーナル』の九月号に、塚本慶一氏へのインタビューが掲載されている。 いつも通訳訓練に使えるような音声素材を探しているので、これは! と思ってさっそく聞いてみたのだが、ううむ、残念だけれど使えそうにない。 アルクがなぜこういうインタビ…

中国の不思議な資本主義

バルトークの舞踏組曲を思わせる題名のこの本、また中国脅威論+中国バッシングの時流に乗ったものかと思いきや、とてもマジメでかつ読みやすい内容だった。 著者の東一眞氏は読売新聞の特派員として北京に住んだことがあるそうで、まずはその体験や観察から…

村上春樹のなかの中国

中国語圏における村上春樹作品の受容のされ方について論じた本。昨年三月のシンポジウムで、著者の藤井省三氏が「現在『二十世紀東アジア文学史における村上春樹』という国際共同研究が進行中」とおっしゃっていたが、そのまとめの第一弾が出たということだ…

日中中日翻訳必携

「こってり中華の中国語をさらさらお茶漬けの日本語へ」。何ヶ月か前『中国語ジャーナル』に載っていた「中日翻訳のコツ」(だったかな)を含むノウハウ本。 「外国語のレベルは母語を上回ることはない」とか、「語学の進歩は(階段状に)段階的」とか、翻訳…

呼吸する音楽

『考える人』の夏号に載っている、アンナー・ビルスマへのロング・インタビューがすばらしい。ビルスマは弦楽器の弓使いを「呼吸」だと言う。アップボウ(弓先→弓元)で吸い、ダウンボウ(弓元→弓先)で吐くのだそうだ。演奏者としての呼吸もあるのだろうけ…

世界史のなかの満洲帝国

著者のあとがきによると、東洋史の中にきちんと位置づけられた満洲帝国史研究はいまだ出ていないのだそうだ。「傀儡国家」の歴史書となれば、政治的思想的バイアスがかかってしまうのは避けられないからで、「日本の罪を告発する、罵声の飛び交うような本ば…

街場の中国論

内田樹氏の『下流志向』と『先生はえらい』を読んだので、新刊のこの中国論も読んでみた。うまく乗せられてしまったような気もするけれど、相変わらずおもしろい語り口でぐいぐい読ませる。 文革から台湾問題、環境にいたるまでいろいろと話題豊富なのだが、…

留学で人生を棒に振る日本人―“英語コンプレックス”が生み出す悲劇

アメリカと日本の大学の違いを紹介し、安易な留学計画に潜む落とし穴を縷々解説した本。 約四千校もあるアメリカの大学には、私立の名門校のほか、日本の公立大学とはずいぶん趣の異なる「州立大学」、「全人教育」を目的としたリベラルアーツ・カレッジ、誰…

金印偽造事件—「漢委奴國王」のまぼろし

あの「漢委奴國王」という文字が刻まれた、国宝・金印が、実は江戸時代の半ばに偽造された贋作だったという主張。読み始めてすぐに「黒幕」が誰だか分かってしまうが、推理小説を読んでいるみたいでかなりおもしろい。

斎藤佑樹くんと日本人

何だかかなり恥ずかしいのだが、昨年夏以降、斜め読みも含めて「斎藤佑樹関連本」を何冊か読んだ。中でもこれは出色の一冊。 「明鏡止水」にして「去華就実」、「一服の清涼剤」と言い止める一方で、市川雷蔵や三浦友和を持ち出してたたみかけ、返す刀で写真…

村上かるたうさぎおいしーフランス人

諧謔だかギャグだかユーモアだかしらないけれど、いくらなんでもこれはちょっと。

オレ様化する子どもたち

先日読んだ『下流志向』のベースになった本ということで読んでみたが、これまた読みごたえのあるすばらしい本だった。ここ数年巷間を賑わせている「ゆとり教育」をめぐる議論に、とても見通しのよい鳥瞰的視点を与えてくれる。また公教育(普通教育)が担う…

江勢(えせ)物語

id:suikanさんから再三オススメがありながら、品切れらしく本屋の店頭では手に入らなかったこの本。アマゾンのマーケットプレイスで、書籍の値段とは思えないほどの安価で購入。送料の方が高いよ。 『伊勢物語』をはじめとする日本の古典をごちゃ混ぜにして…

外国人力士はなぜ日本語がうまいのか―あなたに役立つ「ことば習得」のコツ

大相撲の「外国人力士」たちは、なぜあんなに日本語が達者なのか――を探った本。 プロ野球などの「お雇い外国人」と違ってハングリー精神があることに加え、相撲部屋という上下関係、なかんずく言葉遣いに厳しい理想的な語学環境があって、部屋周辺の地域社会…

もし、日本が中国に勝っていたら

《如果日本戰勝了中國》という刺激的なタイトルのこの本、趙無眠*1氏が発表した論文の全訳だ。侵略・被侵略の歴史を事実に即してありのままに探究しようという姿勢のこの本、そのあまりに自由な発想ゆえに当然当局の逆鱗に触れ、中国大陸ではもちろん一般に…

東方台湾語辞典

「待望の現代台湾語辞典 ついに刊行!」と帯にある。ホントにそうだよ。私が台湾へ赴任する前、すでに刊行間近という情報があったのだけれど、結局あれから五年近い月日が流れてようやく。あああ、台湾にこれを持って行けていれば、楽しさが倍増したのだがな…

やっぱり美味しいものが好き

弁護士の職をなげうって『ヴォーグ』誌のフード・ライターに転身したという無類の食いしん坊、ジェフリー・スタインガーデン氏のエッセイ。 いやもう次から次に美味しそうなものが出てきて、心拍数があがりお腹が減る。この人のすごいところは、単に美食巡り…

周恩来秘録

周恩来の、主に文革発動期から臨終までの十年間ほどを中心に描く伝記。著者は元中国共産党中央文献研究室という、いわば共産党の「正史」を編纂する部署で、その名も「周恩来生涯研究小組」の組長を務めていたという高文謙氏。氏は1989年の天安門事件に連座…

ネコを撮る

私は「けむくじゃら系」にめっぽう弱い。 道ばたに猫や犬がいたりすると、すぐに引き寄せられてしまう。しかも、学生の頃友人に指摘されて初めて自覚したのだが、その際に奇声を発しているらしい。それは「の〜!」とか「にょ〜!」(猫の場合)、あるいは「…

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

字幕翻訳者の太田直子氏が、字幕制作の裏話、とりわけ文字数や日本語表現との格闘、さらには映画配給会社との格闘についてぶちまけた痛快な本。「ぶちまけた」とは言っても、そこはそれ、批判的な文脈でなおかつ特定の作品名や配給会社が知れてしまいそうな…