インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

人生で一番大切なのは思い出を作ること

先日、定期的にうかがっている仕事先で、ここ数ヶ月ほどお見かけしていなかった方に会いました。どうなさっていたのかを聞いてみたら、手術のための入院とその後の療養をされていたのだそうです。内蔵にがんが見つかったため切除したとのことで、幸いほかへの転移などは今のところ確認されていないそう。

この方はまだ若いですし、大柄のしっかりとした体格の方なので、以前からすればちょっと痩せてしまった姿を見て正直心が痛みました。でもこうやって比較的短い期間で職場に復帰されたわけですし、このまま寛解となってほしいです。

先日このブログに書いたビル・パーキンス氏の『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』は「やりたいことを後回しにしてはいけない」をとても鮮烈な形で提示してくれる一冊です。カバーの見返しには「人生で一番大切なのは、思い出をつくることだ」と書かれていて、これもこの一文を読んだだけでは「まあそれはそうだろうな」くらいの感想しか浮かびませんが、読了後はそれがとても重みを持って響いてきます。いかにも自己啓発書的な副題がちょっともったいないくらい。


DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール

この本は、きわめて大胆に内容をつづめて言えば「お金と人生の関係」について述べているものです。私たちは、特に老後への金銭的不安からとにかくお金を貯め続けることに人生の大半を費やしているわけですが、それを「死ぬまでに使い切る」ことを目標に、貯蓄と消費のバランスを考え直してみようと提案しているところが大胆かつ新鮮です。

もちろん筆者は「宵越しの銭は持たない」的な無計画で無防備な消費を勧めているわけではありません。きちんと老後の資金の算段をつけたうえで、しかし根拠のない不安にかられて貯蓄にのみ力を注ぎ、年齢的・体力的にいましかできない体験(あるいは思い出づくり)を後回しにするのは、人生の最後に大きな後悔を残すことになるのではないですか、と問いかけているのです。

私個人の感覚で言えば、この問いかけはとても腑に落ちるものです。なにせここ数年、明らかに体力や気力の低下を実感していて、日常生活のあれやこれやが以前とは同じようにこなせなくなっていることを認めざるを得ないからです。いまでさえこうなのですから、これから3年、5年、10年、あるいはそれ以上の時間が経った頃には、もっともっと自分でも予想だにしなかったたぐいの状況が立ち現れてくるでしょう。

知人の闘病を期にこんなことを言ったり書いたりするのもある意味失礼でぶしつけですが、誰にだって人生の中で思いがけない出来事に遭遇するものです。それは往々にして突然やってくる、あるいは気がついたらすでに立ち現れてしまっているという形を取ることが多いです。だからこそ、やりたいことを後回しにしてはいけないですよねと、その知人と語りあいました。