インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

悲しい昼食

きのうは所用で都内某所に出かけ、お昼は以前から行ってみたいなと思っていたラーメン屋さんに入りました。ちょっとめずらしい味わいの、いわゆる「ご当地ラーメン」系だそうです。人気のお店で、お昼をちょっと過ぎた時間に入りましたが、それでも店内はほぼ満席の盛況ぶりでした。

食券を買い、カウンター席に座ってしばし待つ間に、ちょっといやな予感がしました。厨房には店員さんが三人いて、おひとりが麺を茹で、丼の仕上げをされている方。店長さんでしょう。もうおひとりがその補佐をされている方。そしてもうひとり、私の前で丼を洗ったり具材を足したりという細々した作業をされているお若い方。で、店長がこの若い店員にしきりに小言を吐くのです。

そのたびに若い店員は「はい!はい!はい!」と何度も返事をするのですが、これは明らかに常日頃から店長に叱られ続けて、すっかり萎縮してしまった果ての脊髄反射的な反応にしか見えませんでした。みるみるうちに食欲が失せていきます。私はこういうの、本当に苦手なのです。

ほどなく、あの店長の脇で補佐をしている店員がラーメンを目の前のカウンターに置きました。……が、それは私が注文したものではありませんでした。見れば、カウンターの向こうのほうでも「これ、違うんじゃない?」と言っている方がいます。あちらとこちらの丼を間違えて出したんですね。店長があわてて、あちらからこちらへ丼を持ってきて私の前に置きました。

店長は丼を置いてからふと気づいたように「お作りし直しますか?」と聞いてきましたが、私は「いいです。もったいないから」と言ってそのまま食べました。店長は補佐の店員を睨んで「前にもこういうこと、あったよな」と言っています。もう、なんだか本当にやりきれない気持ちになって、かきこむようにラーメンを食べて店を出ようとすると、店長が「対応して」と短く一言。すると、あの一番若い店員が入り口まで出てきて「申し訳ありませんでした」と頭を下げました。

「いえいえ」と言って店を後にしましたが、あの店員お二人はまたまた店長から叱責されるんだろうなあ……と思うと、なんだかもう、本当に消化に悪い、悲しい昼食になってしまったのでした。

qianchong.hatenablog.com

以前にも同じようなことを書いた覚えがあって検索してみたら、四年ほど前のこのエントリがありました。そのときにも書きましたが、店員への叱責は客がいないところでやっていただきたいです。『孤独のグルメ』の井之頭五郎が言うとおり、ネガティブな言葉を聞きながら食事をすることほどやるせなく、「救われない」ことはないと思うのです。