インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

再現性と個性

こちらのインタビュー記事、とても興味深く、また共感を持って読みました。能楽喜多流の能楽師、高林白牛口二(たかばやしこうじ)氏に取材した記事です。www.sbbit.jp 再現性について 共感を持ったのは例えば、AIやロボットの技術で優れた技芸を保存したり…

ドキュメンタリーの理想的な形

NHK Eテレで放映されたドキュメンタリー「輪廻の少年」。チベット仏教で高僧の生まれ変わりとされる「リンポチェ」の少年が、インドのラダックからチベットを目指す旅を追ったものです。昨晩偶然に見たのですが、最初からその内容と映像美に引き込まれました…

デスクワークは身体に悪い?

Twitterで、酔漢さん(@suikan_blackfin)に興味深い雑誌記事を教えていただきました。『日経サイエンス』の2019年4月号に掲載されている、H. ポンツァー氏の「運動しなければならない進化上の理由」という記事です。www.nikkei-science.comヒトと近い種であ…

通訳者に女性が多い理由と男性の家事

春は学校の学期が変わる季節。私が非常勤でうかがっている通訳学校も生徒募集のための公開講座が何度か開かれ、私も出講してきました。講座の最後にQ&Aの時間があるのですが、先日はこんな質問が寄せられました。 日本の通訳業界は圧倒的に女性が多いそうで…

正座について

先日、政府が児童福祉法や児童虐待防止法などの改正案を閣議決定し、その中で「親による子どもへの体罰禁止」が明記されたというニュースに接しました。今国会で成立を目指し、来年四月からの施行を目指しているそうですが、ネットでは賛否が分かれたとのこ…

Twitterというジャンクフードへの依存

以前に比べて利用頻度はかなり減りましたが、まだまだSNS依存から抜けきれていないなと思います。新しいものはあれこれ試してみたくなるたちなので、一時期はSNSの各種サービスにアカウントを作りまくっていましたが、現在はほとんどを整理してFacebookとPin…

「少しくらい……」という身勝手な行動への誘惑

ケイクス(cakes)で現在連載中の、エスムラルダ・田亀源五郎・溝口彰子の三氏による鼎談『表現とセクシュアリティーズ』を興味深く読んでいます。cakes.muこの連載は毎回興味深い話題が多いのですが、先回、ゲイ・エロティック・アーティストの田亀源五郎氏…

医療通訳の現場で見落とされているもの

昨日Twitterのタイムラインで読んだこちらの記事。外国人観光客や在留外国人の増加に伴って、医療現場でもきちんとしたコミュニケーションを確保する必要が生まれているという話題です。style.nikkei.comスイスの作家マックス・フリッシュ氏が語ったとされる…

ハロー・ワールド

藤井太洋氏の『ハロー・ワールド』を読みました。ネット、ドローン、暗号通貨、自動運転車、スマホ用アプリにTwitter……今からほんのごくわずか先の世界が舞台の近々未来短編小説集です。いやもう、このギーク感と疾走感満載で、なおかつ最先端のネット技術(…

静寂とは

アーリング・カッゲ氏の『静寂とは』を読みました。社会に、とりわけネット繋がった社会の隅々に様々な情報があふれ、「常にノイズにさらされ、ストレスを抱える(帯の惹句より)」今にあって、静寂、静けさとは何かを思索した本です。 静寂とはカッゲ氏は世…

語学が楽器演奏や筋トレに似ている件について

集英社の季刊誌『kotoba』、現在発売中の春号は特集が「日本人と英語」で、合計百数十ページにわたって多彩な論者が登場し、とても考えさせられる内容です。その中で、マーク・ピーターセン氏とピーター・バラカン氏の「日本語と英語のはざまを考える」と題…

「サカイマッスル」をめぐる騒動を眺めながら

数日来「サカイマッスル」の話題でTwitterが盛り上がっていました。大阪メトロ(旧大阪市営地下鉄)の公式サイトにある外語ページが、「堺筋」を “Sakai muscle” とするなど自動翻訳ソフトによる珍妙な訳語をそのまま使っていたことから、指摘を受けて閉鎖に…

暗号通貨 vs. 国家

坂井豊貴氏の『暗号通貨 vs. 国家』を読みました。ビットコインに代表される暗号通貨(仮想通貨)の仕組み、特にその始まりから今日までの経緯と、ブロックチェーンの原理を分かりやすく解説した本です。とてもエキサイティングな内容なのですが、暗号通貨の…

漢字の成り立ち

中学生のころ、「レタリング」に惹かれていました。パソコンとプリンタで扱えるフォントが普及した今となってはそのあまりの変化の大きさに呆然としてしまうくらいなのですが、かつて文字を一つ一つ手作業で描き出すという職業があったのです。私はその職業…

ようやく音楽になってきた

「やりたいことは老後に時間ができてから」などと言って、いざ老後になったら心も身体もすでに新しいことをやる元気が失われているのではないか……ということで「やりたいことは今すぐこの場で待ったなしで」の精神でピアノの練習を始めて三ヶ月ほど。qiancho…

バターコーヒー

以前とある講座に参加した際、講師の先生が数年前にヒットした一冊の本を紹介されていました。 シリコンバレー式 自分を変える最強の食事140キロ近い肥満状態から一念発起して食生活を根本から見直し、自らの身体を実験台にして様々な食材や食事を試した結果…

わが仏尊し

草柳大蔵氏の『ひとは生きてきたようにしか死なない』を読みました。20年ほど前に出版された単行本が新書化されたものです。ネット書店でこの本を見つけたとき、そのタイトルに惹かれました。以前、「人は、それまで生きてきたように死んでいくもの」という…

ペダンチックな私

先日YouTubeでいくつかの「TEDトーク」を視聴しているうちに、ウィル・スティーブン氏の「TEDxで賢そうにプレゼンする秘訣」という動画に偶然行き着きました。youtu.beスタンダップコメディみたいな一種のお笑いパフォーマンスですけど、いかにもTEDふうのプ…

“便宜”を貪る人たち

Twitterで武田砂鉄氏がこんなツイートをされていました。確定申告のための書類を整理していると、「お役所が嘘つきまくっているんだから、こっちも嘘つきまくるか!!!」と意気込むのだが、結局、ちゃんとやってしまう。国民に嘘つきまくっている人たちって…

通訳者の仕事は時給換算できる?

とあるイベントでの通訳業務を仰せつかりまして、徐々に予習を始めていたのですが……。当日の午前中に急遽授業の予定が入ってしまい、代講もできない状況だったので、イベントを主催するクライアント(お客様)に集合時間を遅らせることができないかどうかと…

誰かの草履を綯っている

先日の東京新聞朝刊に、木ノ下歌舞伎主催の木ノ下裕一氏がコラムを寄せていました。毎回楽しみに読んでいるコラムですが、今回も落語に出てくるという「箱根山、駕籠に乗る人担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」との言葉がいいなと思いました。社会はさまざまな…

バビブベボナさん

異色のお菓子レシピ本です。著者である樋口正樹氏の愛猫で、フランス語の「ボナペティ(よい食欲を→召し上がれ)」から名づけられた「ボナさん」。そのお友達という設定で、「バビブベボ」から始まる名前のお菓子が次々に登場し、ボナさんと戯れ、その「交友…

「人となり」を知れば見方が変わるかもしれない

作家の林真理子氏が『週刊文春』で、最近ハワイでは中国人と中国語が「幅をきかせている」という書き出しのエッセイを寄せたことに対して、ネット上で「ヘイトスピーチではないか」批判されていました。すでにひと月以上前の話題ですが、今さらながら知った…

就活しなきゃいけないの?

3月1日は就職活動の解禁日でしたね。うちの学校で学んでいる留学生も、卒業に際して就職先が見つかった人がいる一方で、まだ見つからず、「留学ビザ」を「特定活動ビザ」に切り替えて就活を続ける人もいます。こんなご時世でも日本で働きたいと思ってくだ…

最前列に座るのが好き

語学の講座やセミナーなどで講師を担当しているとよく分かるんですけど、最前列に座ってらっしゃる方ほど熱心で、飲み込みがはやく、こちらの印象にも残ります(ときに最前列で爆睡、という方もいますが)。逆に前方の真ん中だけ「ぽかっ」と空いていること…

「どれだけ学べば稼げるか」をめぐって

年度替わりが近づくこの時期は、各種スクールで新学期の生徒募集が行われており、私も体験授業や学校説明会などに講師として参加することがあります。そういった場では最後に「Q&A」の時間が設けられているのですが、興味深いのは「このスクールにどれくらい…

学校は「遠きにありて思ふもの」

三月は学校の年度末。すべての授業が終了し期末試験の結果も出て、卒業式のシーズン到来です。というわけで先日、同僚の中国人講師に「生徒との別れが名残惜しくて……センセも?」と聞かれたんですが、私は答えに窮してしまいました。特に名残惜しいと感じな…

言葉のヒゲを刈り込むには

「冗語(じょうご)」という言葉があります。発言する際に、おおむね無意識のうちに差し挟まれる、発言の内容とは関係のない言葉のことです。例えば、話し始めに入る「えー」とか「あのー」「そのー」「このー」といった間投詞、あるいは「〜でですね」とか…

『ナカイの窓』と同じ心性は自分にもあるかもしれない

コンビニで働く外国人労働者の日本語を揶揄したこちらの番組が、TwitterなどのSNS上で「大炎上」していました。詳しい経緯はこちらの記事で知ることができます。wezz-y.com私も以前Twitterで以下のようなツイートをしたことがあるのですが、こうした、ちょっ…

アウトプットとしての「過去形ノック」

先日、フィンランド語の授業で、複雑極まりない動詞の過去形を教わった際、先生が「過去形の作り方を一枚の紙にまとめてみるといいですよ」と言っていました。授業の最後に「さらっ」とおっしゃったのですが、こういう指示はとても大切です。私見ですけど、…