Twitterで、酔漢さん(@suikan_blackfin)に興味深い雑誌記事を教えていただきました。『日経サイエンス』の2019年4月号に掲載されている、H. ポンツァー氏の「運動しなければならない進化上の理由」という記事です。
ヒトと近い種であるゴリラやチンパンジーなどの観察結果から分かったことは、「彼ら・彼女ら」が全般的に「怠惰」な生活を送っているのに、いたって健康であるという事実だったそうです。つまり一日中「食っちゃ寝」していて、さしたる運動もしていないのに、血圧も上がらず、成人病にもかからず、体脂肪率はアスリート並み……ずるいぞ類人猿、というわけです。一方でヒト様にとってなぜ運動することが必須なのかを、進化人類学の知見から解き明かしています。
いや、この記事、とても面白く、またとても腑に落ちる内容でした。というのも「健康でなければ死ぬ(©酔漢さん)」年代の私たちにとって、これはもう真剣に向き合うべきテーマだと思うからです。
偶然にも、通っているジムでつい先日、トレーナーさんとこの話をしたばかりでした。男性版更年期障害とでもいうべき不定愁訴に苛まされて、体幹の強化と筋トレを軸にしたトレーニングを続けて1年半ほど。不定愁訴はほとんど解消して、夜も寝られないほどだった肩こりや腰痛も影を潜めました。それでも一日じゅう机に向かってパソコンを打っていると、当然のことながら「不調」が忍び寄ってきます。いやむしろ、不調を不調だと認識できるようになっただけでもトレーニングの効果はあったというべきでしょうか。
現在「週三」でジムに通っていますが、パーソナルトレーニングなので毎回最初に体の調子を聞かれます。その際に肩こりや腰痛の有無なども伝えるのですが、最近つくづく思うのは「ああ、退勤してジムにやって来たこの瞬間が、一日の中で一番調子が悪いんだな」ということ。デスクワークが、ずっと同じような姿勢でパソコンのスクリーンに向かっていることが身体にどんな影響を与えているのかが、よく分かるようになりました。いみじくもトレーナーさんがおっしゃった「まあある意味、身体に悪いことをし続けているようなものですからね」というのは至言だと思います。
https://www.irasutoya.com/2015/06/blog-post_679.html
そう「デスクワークは身体に悪い」のです。はるか昔に初めてサラリーマンになって以来、当たり前のように人生の三分の一(時に二分の一以上)を費やしてきた生活スタイルが、こんなにも大きな影響を身体にもたらすものだったとは。現在は講師業が多いので授業中は立っていることも……いや、そうやって振り返ってみると、けっこう座って授業してます。これからはずっと立って授業しようかしら。上述の記事にはこんな衝撃的な記述がありました。
机に向かって、あるいはテレビの前に長時間座り続けることは疾患リスクの増加と短寿命に関連づけられている。よく運動する人でさえ同じことが言える。世界的に身体活動度の低さは健康上のリスク要因として喫煙と同等と考えられており、毎年500万人以上の命を奪っている。
しかも運動で「減量は実現できない」が「免疫系の機能を改善して感染を防ぐ効果があ」り、大切なのは運動の「激しさよりも量であ」って、そのためにも普段の生活により多く体を動かす機会と時間を採り入れるべきとしています。うんうん、私も通勤時に一駅二駅分歩いたり、地下鉄駅では極力エスカレーターを使わず階段を上り下りしたり(最近は階段にカロリー数がついている駅もありますね)、とにかく体を動かすようにしています。
それでもやはりデスクワークがかなりの時間を占める仕事の形態なので、運動不足は否めません。というわけで、この春から、朝の時間を利用してもう一つジムに通うことにしました。今までは始業前の一時間から一時間半ほどを自分なりの「朝活」というか、勉強時間に充ててきたんですけど、これを身体を動かす方に使おうと思います。同僚からは「言霊ってこともあるから、あまり言わないでよ」と言われているんですけど、「健康でなければ死ぬ」に加えて「運動しなければ死ぬ」も座右の銘につけ加えることにいたしましょう。
余談ですがこの記事、最後に運動不足を戒める一節としてこんなことが書かれています。「何時間も机の前に座ったままソーシャル・メディアでグルーミングしている」場合じゃないと。グルーミング! そうか、私たちがSNSで行っているのは「毛づくろい」みたいなものだったんですね。