インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

アウトプットとしての「過去形ノック」

先日、フィンランド語の授業で、複雑極まりない動詞の過去形を教わった際、先生が「過去形の作り方を一枚の紙にまとめてみるといいですよ」と言っていました。授業の最後に「さらっ」とおっしゃったのですが、こういう指示はとても大切です。

私見ですけど、こういう指示を聞き逃さず、素直にやってみるどうかが語学上達の鍵ではないかと思っています。私も語学の授業を担当していますが、授業の終盤に「じゃあ次回までに自宅でこんなことをやってみてください」と言おうとしても、みなさん帰り支度に余念がなくて指示なんか「聞いちゃいない」方が多いんですよね。

で、作りました。教わったことを極力簡潔に記すと、こんな感じになりますが……これでいいのかしら。

動詞の過去形

kpt の変化(子音交替)がある。
②目印は主に「i」だが、一部に「si」もある。
③三人称単数は語幹のまま。


■「si」がつく過去形の語幹
1.AtA、otA、utA タイプ …… 最後の「tA」を取って「si」。
2.tAA(子母母 tAA、ltAA、rtAA)タイプ …… 最後の「tAA」を取って「si」。
3.ntAA タイプ …… 「a + ntaa」の場合「i」、「それ以外 + ntAA」の場合「si」。
★例外「tuntea(知る)」は最後の「tea」を取って「si」。


■「i」がつく過去形の語幹
1.o、u、ö、y + i タイプ …… 変化なし。
2.e、ä、i + i タイプ ……「e、ä、i」が消える。
3.aa、uo、yö、yy、ie など二重母音 + i タイプ …… 前にある「a、u、y、i」などが消える。
4.oi、ui + i タイプ …… 後ろにある「i」が消える。(現在形=過去形)
5.a + i タイプ …… 三音節以上、または二音節で最初に出てくる母音が「o」か「u」の場合「a」が消える。それ以外の場合「ai」が「oi」になる。
★例外「käydä(訪れる)」は語幹が「kävi」に。

おお、こうやって自分でまとめてみると、そんなに複雑じゃないかも……と思えてくるから不思議です。

最近、樺沢紫苑氏の『アウトプット大全』という本を読んだのですが、この本によると多くの人は「インプット過剰/アウトプット不足」に陥っていて、アウトプットが少なすぎることが「勉強しているのに成長しない」原因だとのことです。理想的な割合は「インプット3割:アウトプット7割」で、むしろ出力に傾注すべきだと。これは語学にも当てはまりそう。


学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)

というわけで、上記の紙をまとめた後にアウトプットとして「ノック」をしてみました。いつも授業で使っている動詞の一覧表があって、ここには約150個ほどの主要な動詞が並んでいるのですが、それを片っ端から過去形にしていくのです。野球の守備練習「ノック」で飛んできたボールを捕って塁手に送る処理を繰り返すのと同じような感じで。

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https://www.irasutoya.com/2018/10/blog-post_90.html

フィンランド語の場合、動詞が活用して基本的に「一人称単数」から「三人称複数」までの都合六つに変化します。大概の場合は語幹を正しく活用させることができれば、語尾は全く一緒。というわけで、次々に飛んでくる動詞の語幹を活用していく……というのを反故紙の裏にどんどん書いていきました。なんだかシューティングゲームみたいで楽しいです。

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ちゃんと活用できたかどうかの確認は、こちらのサイトで。上の検索欄に動詞を入れて、出てきたページの「Imperfekti」という部分が過去形です。

ja.bab.la

けっこう打ち損じて(間違って)いますが、それでも150本あまりもノックをやれば、活用の規則が身体に沁みてくる……ような気がします。