インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

卒業して、さらに続ける

先日、オンライン英会話でその日のレッスン(最近はずっと新聞記事をもとにディスカッションしています)に入る前に講師の先生とちょっと雑談していて、私が趣味と「ボケ防止」を兼ねて複数の外語を学んでいるという話になりました。

それで私が「フィンランド語を学んでいる」と言ったら、「それはなぜ? 話している人の数からいったら、例えばスペイン語などを学ぶほうが実用的じゃない?」と返されました。おお、なかなか直截なご意見。たしかにそうですよね。語学を、それを使って学ぶとか仕事をするとか、そういう観点からすればマイナーな言語を学ぶことに意義は見出しにくいのかもしれません。

もちろん講師の先生はそう返すことで、こちらにいろいろと話させようとしているのです。こういう「返し」はありがたいです。それがよく伝わってきたので、私も負けずに「フィンランド語の文法は複雑なので脳の健康にとっていいんです」とか「これまで学んできた中国語や英語とはかけ離れた言語なのでおもしろいんです」とかいろいろと英語で「弁明」しました。なかなか巧みな会話の引き出し方だと思います。


https://www.irasutoya.com/2017/04/blog-post_88.html

さてそのフィンランド語、この春で学びはじめて5年になりました。5年といっても週に1回、1時間半のオンライン教室ですから微々たるものですが、それ以外にも暮らしの中で時間を見つけつつ、単語を覚え、文法を学び、読解や聴解などのタスクをこなしてきました。先日書棚を整理していたら、かつて取り組んだ教科書の読解ノートがでてきて、よくまあこんな細かい「お勉強」をやっていたものだと自分で驚きました。その読解ノートの存在さえ忘れていたのです。

とはいえ、いまでもフィンランド語を聞いたり話したりできるかといったら、ほとんどできません。簡単な自己紹介くらいはできるでしょうけど、それ以上のやり取りは難しいと思います。フィンランド語はとにかく語形の変化が激しくて、文意に合わせて単語をきちんと変化させないと意味が通りません。フィンランド語の母語話者ならいともたやすくできるそれらの変化を、こちらも瞬時にできるようになるまで繰り返し練習するのです。

私の年齢からすれば、おそらくそれらがなんとか自然にできるようになる前に、私はこの世を去っていると思います。それは人間である以上しかたがないことですから別に構わないのですが、学びはじめて5年になったこの春を期に、すこし学び方のマインドを変えてみようと思いました。

これまで私は週に1回のオンライン教室をペースメーカーのようにして学んできました。その点、あまり自律的とはいえず、ときに「ああまたフィンランド語の授業がやってきた」と慌てることも多かったです。つまり教室に出ることがなかば目的化して、その間の学びが薄くなっていたのです。

語学はとにかく細々とでも学び続けて、やめないことが一番大切ですから、これでもいいのかもしれません。もとよりフィンランド語は私にとって「実利」を求めた語学ではないのですから。ただ、いまの学び方はいわゆる「マンネリ」そのものじゃないかと思いました。

さいわい5年も学んでいるので文法事項はひと通り学び終えていますし、フィンランド語の発音はとても平易です。あとは語彙を増やしつつさまざまな内容の表現を聞いたり言ったり読んだり書いたりしていけばいい。教室の先生をペースメーカー代わりにするのではなく、自分で。

ちっともマスターなどしていないけど(ちなみにオンライン教室の名前はいまだ「基礎」です)、ここはいったん卒業して次のステップへ向かうべきだと思いました。