アメリカのベンチャー企業「Open AI」が開発したChatGPTが話題になっていますが、「テレ東BIZ」でその教育への応用例(!?)が紹介されていました。「!?」をつけたのは、その使い方が少なからずこれまでの教育のあり方に変革をもたらすだろうなと思うと同時に、それでいいのだろうかという根本的な疑問もまた湧き上がってきたからです。
動画をご覧いただければわかりますが、教育への応用例としてここではふたつ紹介されています。ひとつは大学の英語講師が教材を作っているところ。これはかなり衝撃的です。なにせ私も語学の講師としてこのような教材をそれこそ無数に作って来たからです。
教材を作るのはそれなりに手間暇と時間と技術が要りますし、そうした教材の作成能力が教師や講師のスキルないしキャリアのかなりの部分を占めてきたわけですが、ここではそれが大幅に不要になる未来(というかもう現実のものになっている)が描かれています。出演されている英語講師の方は、その分教える際に求められるクリエイティブな部分に力を注げると肯定的に評価されていますが。
もうひとつはAIを相手に外語の会話練習を行うことができるというものです。なるほど、オンライン英会話など生身の人間相手だと臆してしまう人でも、これならかなりハードルが低くなりそうです。しかも相手がAIなのでこちらのインプットに合わせてフレキシブルな会話ができてしまう。先日オンライン英会話における講師の「はずれ」について書きましたが、そういうリスクが激減する(かもしれない)わけです。
ただこれはテキストを入力するのがベースなので、作文やライティングのスキルしか磨けないかしらと思っていたら、なんとスマートフォンのアプリで音声ベースの同様のサービスがすでに始まっていました。
おおお。一週間の無料体験ができるのでただいまお試し中なのですが、音声認識の精度はかなり高いように感じました。Duolingoでスピーキング練習をすると、かなり曖昧な発音でもクリアになってしまって(中国語など特に)、正直これでいいのかしらと思うことがありますが、このSpeakはDuolingoより厳密に発音を判定してくれるようです。
いろいろなメニューがあってまだ全部試しきれていませんが、AIと会話するメニューなど、こちらの返答に応じて質問が変わるみたい。これはAIならでは、というか、すごいです。例えばこれは昨日私がAIと会話してみたときの画面ですが、趣味や興味のあることはと聞かれて「言語を学ぶことだ」と答えたら、どんな言語に興味があるのかと聞いてきました。かなり自然な会話の流れです。
しかもあとからAIがフィードバックを返してくれて、たとえばここでは複数の“s”をつけたほうがいいとか、よけいな言葉が入っているとか、いろいろ指摘してくれます。まだ試し始めたばかりですが、これでかなり深い会話が可能になるとしたら、オンライン英会話を展開している企業にとっても脅威になるのではないかと思いました。生身の講師よりはるかに多くの指摘をはるかに早く返してくれますし、上述したように心理的なハードルも低いですから。
私も一応語学業界の末席に連なっているものなので、もう少しこの「AIの語学への応用」界隈を追いかけてみようと思っています。それにしても……これはますます、外語を学ぶこと、外語を教えることの意味と意義が根本から問われる事態になってきたなと感じています。