インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

都立高校でのオンライン英会話

きのうは早朝にオンライン英会話の予約を入れていたのですが、朝起きたら講師からメールが入っており、“My internet connection stopped unexpectedly”とのことで、キャンセルになっていました。む〜、朝から気勢をそがれてしまいましたが、まあ仕方がありません。週末に別の予約を入れることにしました。

オンライン英会話といえば、朝日新聞に興味深い記事が載っていました。東京都がこれまで一部で先行的に導入していた都立高校でのオンライン英会話を、今年度から全校(191校)での実施に拡大しているという内容です。

www.asahi.com

記事によれば、タブレットスマートフォンを使ってフィリピン人講師と1対1でレッスンを受けるそうです。「都立高校 オンライン英会話」で検索してみたら、いくつかの高校での取り組みの様子が写真とともに紹介されていました。クラスメートがこんなにたくさんいる教室で1対1で話すというのも度胸がいりそうです。

www.metro.ed.jp

マンツーマンで英語を話す機会が設けられるのはとてもいいことだと思います。通常の授業やグループレッスンだとどうしても話す人・話さない人の差が生まれてしまいますから。ただ私が興味を持ったのはその頻度です。

記事によると「各校で指定した一つの学年で原則実施し、授業数は学校により異なる。今年度は都教委が指定する英語教育に力を入れる50校では授業内に10〜20回、そのほかは自宅学習など授業外に5回実施する」となっています。少々わかりにくいですが、これは高校三年間の全学年がやるわけではなく、かつ一番多い学校で年に20回、一番少ない学校だと年に5回オンライン英会話をやるということでしょうか。


https://www.irasutoya.com/2020/04/blog-post_598.html

う〜ん、それはまあ、やらないよりはやったほうがいいんですけど、民間委託で13億もの事業費をかけてやることかなあとも思います。レッスン1回あたりの時間がわからないので断定はできませんけど、一番多くても年20回ということは、月に2回程度ですよね。語学の上達を目指して実際のコミュニケーション、なかんずく能動的なアウトプット強化を狙うにしては、なんだかこう「取ってつけた感」は否めないような。

もちろん、記事でこの事業の「担当者」氏がおっしゃるように「短時間であっても、外国人と主体的にコミュニケーションをとる経験は意義がある」のかもしれません。ただ私は、こうして広く薄く浅くやみくもに会話練習をすることがほんとうに「『話す』力を伸ばし使える英語力をつけ」る(記事より)ことに資するのか、いささか疑問です。お金の使い方としてはすごく無駄が多いし、本当に生徒さんたちのためになっているのか、喜んでいるのは事業委託を受けた企業だけなんじゃないかという気がしてなりません。

このブログでも従来から申し上げている通り、「ぐろーばる化」に乗り遅れるなとばかり、全学生が幼少時から英語教育に傾倒し続ける必要がほんとうにあるのか、さらに言えばこんなに効率の悪いやり方(こんな表現はあまり好きじゃないですが)で全員が外語(とりわけ英語)を学ぶ必要があるのか、そもそも本当に日本の私たち全員が外語を必要としているのか……そういった大局観を欠いた粗雑な施策に思えます。

qianchong.hatenablog.com

まあ、語学が大好きで、複数の語学に手を出し続ける一方、ボケ防止と称してオンライン英会話も細々と続けている私が言っても説得力はないですか。そのオンライン英会話は、今年のお正月から始めて30分のレッスンがまだ70回あまり。累積してもたった35時間の取り組みです。お前だって広く薄く浅くじゃないかと言われれば返す言葉はありませんね、はい。