インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

コロナ禍が対中観に与えるかもしれない影響

国産ジェット機の開発が事実上凍結。携わってこられた方々からすれば無念だとは思いますが、一度走り始めたらどんなに無理筋でも止まらないというこの国にしては、まだまだ賢明なトップはいるのだと思わせてくれて、かすかな希望を感じたニュースでした。

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これよりも遥かに巨大で、かつ罪深い東京五輪もほぼ中止が確実なようです。何が罪深いって、招致段階からの賄賂に始まり、「アンダーコントロール」のウソ、コンパクト五輪と言いながらの税金2兆円以上の投入、新国立競技場やエンブレムなどにまつわるゴタゴタ、「アスリートファースト」を掲げつつのテレビ放送や広告利権が絡む炎天下での開催、その炎天下のタダ働きと称されたボランティア問題、延期に伴うさらなる税金の投入……ときて、今時のコロナ禍。

コロナ禍だけは不可抗力ですけど、これはもう「最初から手を出すんじゃなかった」的な無理筋感満載です。それでもまだ国も東京都も組織委員会も何が何でも開催しようとしているようですが、五輪にはこの無理筋を止める賢明なトップがいないんですね。しかも中止になったら中止になったで、その後の経済に与える影響も大きそう。本当に、暗澹たる気持ちになります。

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https://www.irasutoya.com/2020/01/blog-post_265.html

経済に与える影響もさることながら、個人的に危惧しているのは中国への風当たり、というかもっと人々の心の奥深いところでの対中観に与えるかもしれない影響です。

新型コロナウイルス感染症の感染者数や死者数が飛び抜けて多いアメリカのトランプ大統領は、このウイルスを「中国ウイルス」と言ってはばかりません。いまはこの言い方に眉をひそめる向きも多いと思われます。でも、コロナ禍の影響が五輪の中止に及び、その後も二年、三年と経済に、ひいては我々の暮らしの隅々にまで、かつてなかったほどのインパクトを及ぼし続けるとしたら、このトランプ的発想に支持を与える人々が増えるのではないかと危惧するのです。

思い起こせばこの感染症が日本でも流行し始めた頃、中国や中国人に対する露骨な差別的言動がいくつも現れました。その後ウイルスが全世界的に拡大するにつれ、人々の往来が止まったことによって来日する中国人もほぼ皆無になったからか、そうした差別的言動は影をひそめていきました。が、私は今後、このウイルスの発生地とされる中国に対する人々の恨みつらみが露骨に顕在化してくるのではないかと心配します。国産ジェット機の開発も五輪も中止になり、経済は大打撃、それもこれももとを辿れば中国のせいだ……のような。単純な考えですけど、単純なだけに心にするっと入り込みやすい。

加えて現在の中国政府が、内政においても外交においてもある意味あまりにもわかりやすい「とんでもなさ」を発揮しています。香港しかり、新疆ウイグル自治区しかり、内モンゴル自治区しかり。さらに台湾への対応、バチカンとの距離感、東南アジアからオーストラリアにかけてのアジア太平洋地域における覇権とそれへの反発……にもかかわらず、いち早く感染症の影響から脱してITでも宇宙開発でも、さらにはエンタテインメントでも存在感を高めつつある中国。そうした中国に対してコロナ禍で疲弊する国々の人々からは、これまで以上にあからさまな敵意なり憎悪なり妬みなりが示されてくるのではないかと。

言うまでもなく、中国という国ないしは政府と、ひとりひとりの中国人は分けて考えるべきです。私だって、今の日本政府に日本人としての私を代表してほしくないですからね。けれど、そんな当たり前のことを冷静に考えられない人が残念ながらこの世の中には数多く存在しています。人々の対中観が今後、かつてなかったような醜悪な形に変わっていくのではないかという心配が拭えません。

こういう心配が杞憂であることを祈ります。それでも私は、自分の周囲にいる中国人の仕事仲間や学生や友人を、ひとりの日本人としてどう援護することができるだろうか、ということを今から考えておかなければと思っています。