一年半以上かけて学んできた教科書も最後の課までたどりつき、教科書を離れて新しい内容を学びました。「所有接尾辞」です。
これは例えば「minun nimi(私の名前)」のように、名詞に人称代名詞の属格がつく場合に、その名詞にも所有を表す接尾辞がつくというものだそうです(人称代名詞がつかなくても所有接尾辞は使えるそうですが、それはまたいずれ)。「私の」という所有を表す接尾辞は「ni」で、「nimeni」だけで「私の名前」という意味になります。しかもそれに人称代名詞の属格がついてもつかなくてもよいらしく、つまり……
minun nimi
nimeni
minun nimeni
……の三つがいずれも「私の名前」という同じ意味になるわけですね。そして三番目の言い方、つまり「私の、名前私の」みたいになっちゃってるこれが基本なんだそうです。しかもこの所有接尾辞は文脈に応じて全ての格にくっつけることができるそうで、例えば……
Pöydälläni on kirjasi.
私の机の上にあなたの本がある。
……などということができちゃうと。一つの名詞に、物の名前と状態と所有の意味が込められているわけですね(「si」は「あなたの」を表す所有接尾辞)。便利だけれど、なんだかとても複雑になってきました。そういえば以前会話練習したときに「mielelläni(私は喜んで)」とか「itsellesi(あなた自身は)」というような言い方が出てきましたけど、これらも所有接尾辞だったんですね。
所有接尾辞の基本は、人称ごとに違うこの六つです。
私の | ni | 私たちの | mme |
あなたの | si | あなたたちの | nne |
彼・彼女の | nsA | 彼ら・彼女らの | nsA |
ただ、格によっていくつか違いがあるので、授業ではそれを学びました。
●単数主格・複数主格・単数属格・単数対格・複数対格
辞書形から活用語幹を求めて所有接尾辞をつけます。
単数主格:Minun ystävä on suomalainen.→ Minun ystäväni on suomalainen.
複数主格:Minun ystävät ovat suomalaisia.→ Minun ystäväni on suomalaisia.
単数属格:Minun ystävän nimi on Pekka.→ Minun ystäväni nimi on Pekka.
単数対格:Minä tapaan minun suomalaisen ystävän.→ Minä tapaan minun suomalaisen ystäväni.
複数対格:Minä tapaan minun suomalaiset ystävät.→ Minä tapaan minun suomalaiset ystäväni.
所有接尾辞をつけると、格は違うのに全部同じ「ystäväni」という形になっちゃうんですね(それでも文の前後でなんの格かはわかります)。またこの場合、kpt変化はしません(逆転はします)。
Minä löysin sinun lompakon kadulta.→ Minä löysin sinun lompakkosi kadulta.
私はあなたの財布を通りで見つけました。
●単数入格・複数入格・複数属格
「n」を取ってから所有接尾辞をつけます。例えば「私の(ni)」なら…
単数入格:taloon → talooni
複数入格:taloihin → taloihini
複数属格:talojen → talojeniMinä menen elokuviin suomalaisten ystävien kanssa.
→ Minä menen elokuviin minun suomalaisten ystävieni kanssa.
私は私のフィンランド人の友人たちと一緒に映画に行きます。
●単数変格・複数変格
「i」を「e」にしてから以下の所有接尾辞をつけます。
私の | ni | 私たちの | mme |
あなたの | si | あなたたちの | nne |
彼・彼女の | en | 彼ら・彼女らの | en |
単数変格:taloksi → talokseni
複数変格:taloiksi → taloikseni
●単数分格
そのままつけますが、三人称だけは「①長母音で終わっているときは nsA、②それ以外は An」をつけます。
私の | ni | 私たちの | mme |
あなたの | si | あなたたちの | nne |
彼・彼女の | ① nsA・② An | 彼ら・彼女らの | ① nsA・② An |
kissaa → kissaansa
taloa → taloaan
kirjettä → kirjettään
●その他
そのままつけますが、三人称だけは母音を伸ばして「n」です。
私の | ni | 私たちの | mme |
あなたの | si | あなたたちの | nne |
彼・彼女の | An・en | 彼ら・彼女らの | An・en |
Minä tykkään kissasta.
→ Minä tykkään minun kissastani.
私は私の猫が好きです。
ただし、文の主語と所有者が同一人物のときは、所有接尾辞のみが使われる、というのがポイントだそう。
Hän tykkää kissasta.
彼は猫が好きです。
Hän tykkää hänen kissastaan.
彼は彼女の猫が好きです。
Hän tykkää kissastaan.
彼は彼の猫が好きです。
三番目の文は「hän(彼)」と「kissastaan(彼の猫)」で「彼」が同一人物なので、「hänen(彼の)」という属格の人称代名詞は入れちゃいけないんですね。う〜ん、複雑です。所有接尾辞は今後もおいおい学んでいくとして、授業ではいくつか作文をしました。
Mikä sinun osoite on?→ Mikä sinun osoitteesi on?
あなたの住所はなんですか?
Minun osoitteeni on 〜.
私の住所は〜です。
Hän on huoneessa.→ Hän on huoneessaan.
彼女は彼女の部屋にいます。
Minun pöydällä ei ole sanakirjaa.
私の机の上に辞書はありません。
Minun pöydälläni ei ole sinun sanakirjaasi.
私の机の上にあなたの辞書はありません。
フィンランド語はこうやって後ろにどんどん要素がくっついていく言語ですが、こうしたくっつき方には順序があるそうです。例えば「私の部屋の中にだって」という場合は……
huoneessanikin
huonee(語幹)+ ssa(格語尾)+ ni(所有接尾辞)+ kin(強調の接尾辞)
……というように、①格語尾、②所有接尾辞、③強調の接尾辞という順番になると。それにしても「私の部屋の中にだって」をたった一つの単語で表せてしまうというのは、すごいですね。
Montako huonetta sinun asunnossasi on?