インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

就任式を祝うことができる人々

早朝、出がけにメールをチェックするためにパソコンを開けていたら、バイデン氏の米大統領就任式、そのライブ映像が目に留まりました。ちょうど Andra Day 氏が “Rise Up” という曲を歌っているところで、BLM(Black Lives Matter)が大書されたあのホワイトハウス北側にあるという「16番通り」の上で、ローラースケートをする少女の映像が映っていました。その歌声とともに “We gonna walk it out, and move mountains” という歌詞に惹きつけられ、しばし感じ入ってしまいました。

政治制度も文化背景も異なるよその国のリーダーの就任式に感じ入っている場合じゃないのです。それにかの国だって格差も分断もその他の多くの問題も抱えている。決して理想の国ではありません。コロナ禍の影響をいちばん受け、大変な状況に置かれている国でもあります。「隣の芝生は……」の諺だってあります。それでも、新しいリーダーの登場をこんな形で祝うことができるのって……自分たちの国の現状と比べたときに、そのあまりの差に考え込んでしまったのです。

電車に遅れるのでパソコンを閉じて家を出ましたが、それからもずっと考えていました。こういう形で多くの芸術家が参加して自分の国の新しいリーダーが就任したことを祝うイベントが開かれるなんて、かつてこの国でそんな雰囲気を味わったことがあるだろうかと。そしてリーダーの就任演説がここまで注目され、賛否はあるにせよ話題になることがあっただろうかと。

かつて仕事で住んでいた台湾も大統領(総統)を公選で選んでおり、やはり就任式の際には同じような雰囲気に包まれ、コンサートなども行われます。当時もそんな一種の「お祭り」をまぶしい思いで見ていたことを思い出しました。そして台湾にもやはり分断や格差もありますし、課題ももちろんあるのですが、自分たちで選んだリーダーだという自負からか、大いに期待もするし批判もがっつりとする。首相の直接公選制を持たない私たちと違って、そこにある種の自律と自覚と誇りのようなものを感じます。

それに比べ私たちは……今のような政府や老醜を曝すリーダーたちしか選べていないその自律と自覚のなさ、民度の低さを改めて感じました。それでも “We gonna walk it out, and move mountains” ーー歩き出して、山を動かしていかなければいけないですね。


WATCH: Andra Day performs 'Rise Up' in Biden's virtual inaugural parade

もうひとつ、お昼休みにネットでニュースを見ていたら、大統領就任式で詩を朗読した Amanda Gorman 氏も話題になっていました。音楽アーティストのパフォーマンスだけでなく、詩の朗読まで行われるところにも彼我のあまりの違いを感じますが、それはさておきこの朗読がまたよかったです。私のつたない英語力では理解が追いつかないところもありましたが、あとでもう一度見直しました。

“There is always light, if only we’re brave enough to see it. If only we’re brave enough to be it.” ーー常に希望はある。それを見つめる勇気さえ、それを行う勇気さえあれば。私たちもあきらめずに声を上げていかなければなりませんね。

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