インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

左派ポピュリズムかもしれないけれど

昨日の朝、フジテレビのワイドショー情報番組『とくダネ!』で放送されていた「れいわ新選組」の国会議員お二人の特集を見ました。とても考えさせられる内容でした。YouTubeにもいくつか映像が上がっていますが、これらはすぐに削除されてしまうかもしれません。

youtu.be

重度の障害があるお二人の当選が決まってからの国会の動きは素早いもので、来月の臨時国会開会に向けてバリアフリー化が一気に進められています。番組でも紹介されていましたが、かつて八代英太氏が初めて車椅子で登院した当時、国会はほとんど無対応だったそうですから、隔世の感があります。それだけ人々の意識が変わり、社会がより成熟したことの表れでしょう。それだけにその原動力となったお二人の当選には単なる当選以上の大きな意味があったと思います。

今朝の新聞では、国会議員として報酬を受け取ると停止されるとされていた公費による介護サービスについても、その費用を当面参議院が負担し、なおかつ厚生労働省参議院からの協議要請を受け「重度障害者が就労する際の介助のあり方を検討する姿勢を示した」とのことです。

この急速な変化はとても大きなインパクトを持って有権者に受け止められるのではないでしょうか。誰に投票してもどうせ同じと異様なほどの低投票率が続いている中、少数野党である「れいわ新選組」への一票がこうして国会を動かす力になった・それぞれの一票が積み重なると国会は動くのだという実感を持てるからです。

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番組では、お二人が国会議員として活動する上でどういった環境が必要なのかについて、様々な角度から紹介をしていました。この部分もとても勉強になりましたが、特に印象深かったのは上述した舩後靖彦氏が質問に答える際の「間」と、その発言の方法でした。ALSを発症している舩後氏は、文字のボードを見てその眼球の動きを介護者が読み取って伝えるという形で発言されるのですが、当然ながらその過程にはある程度の時間がかかります。

質問をして、舩後氏の答えを介護者が伝えるまでに、一つ目の質問は約20秒、二つ目の質問は約2分近くかかりました。その間テレビはほとんど無音状態の「間」に。普段ほんの数秒の無音さえも忌避するようにとにかく言葉や音を流し続けるテレビにあって、これは本当に印象的かつ象徴的な場面でした。

またその介護者の方が、どのように文字盤から発言を読み取るのかについての細かな技術についても説明されていて、これも深く印象に残りました。キャスターの小倉智昭氏が「弱者に国の予算を多く割ける国ほど、僕は民主国家だと思うのね」とおっしゃっていましたが、本当にその通りだと思います。

山本太郎氏や「れいわ新選組」の動向を「左派ポピュリズム」と批判する方もいますが、少なくとも私は日本の政治の現状に対して少しでも異なる意見や多様な意見をぶつけ、少しでも健全な民主主義を取り戻すためには、多少のポピュリズムに訴えてでも問題提起を図り、より多くの有権者に訴えかけていく必要はあると思います。現状はそれくらいの「毒」も必要なほど「安倍一強」による弊害が蔓延していると思うからです。

「GLOBE+」のこちらの記事では、政治学者の山本圭氏がこのように述べています。

近年でも、「#MeToo」(ミー・トゥー)運動や、LGBTの権利を求める動きなどは、従来の多元的社会の中で埋もれてきた課題です。これに対して「おかしいんじゃない?」という声が上がり、問題として可視化され、現状を変えることにつながった。このような声を引き出す機能はどこかに必要です。ポピュリズムは、その役割を果たす可能性を持っていると思います。

globe.asahi.com

もちろん現実の政権運営は、理想通りに行かないことも多いでしょう。アメリカのトランプ政権を見るまでもなく、ポピュリズムが行きすぎた結果の混乱もあり得るでしょう。だからこそ他の野党や、また与党の心ある人たちとも協同してこの動きを真面目に見据えることが大切ですし、「小異を捨てて大同につく」を実践して今の政治状況を変えていってほしいと思います。

特集の最後で小倉智昭氏は「こういう時間をなんでいま、選挙の前に持てないんだろうね。テレビの番組ってのはこういうことを積極的に選挙前に取り上げていかなきゃいけないと思うんですが」とおっしゃっていました。本当にそうです。でも遅きに失したとはいえ、こういう報道ができる・できたというのは、最近まれに見る壮挙じゃないかと思いました。

私は、選挙こそ棄権したことはないものの、支持政党などはなく、その都度候補者の主張を比較して、時には積極的に、時には「鼻をつまんで」投票をしてきました。れいわ新選組についてもその主張に全面的に賛成ではありませんし、今後の活動をより注視したいと思いますが、今回の参院選とその後の展開には拍手を送りたいと思います。私は、自分の記憶にあるかぎり初めて政党や政治団体に対する「献金」をしました。