自民党所属の衆議院議員で総務政務官の杉田水脈氏が、性的少数者やアイヌ民族などを巡る過去の発言の一部を謝罪、撤回しました。ほかにも性暴力被害を巡る女性差別発言などを繰り返してきた杉田氏、今回は松本総務相に指示されてこうした発言の謝罪、撤回をしたようですが、報道各社は「本心ではないのでは」との疑問の声を取り上げています。私も、おそらくこの方はちっとも反省していないのだろうなと思います。
しかし問題は、まずはもちろん杉田氏自身の資質に起因することは明らかであるものの、その氏を支え、いくたびも国会議員として当選させ、さらには総務政務官の職につかせる、自民党の中の少なからぬ人々の存在でしょう。誰がこのような人物を重用しようとするのか、その背後にある思惑は何なのか。
さらにはそうした自民党を選挙で支える人々の思惑も問われるべきです。杉田氏は過去三回の衆議院議員選挙において、いずれも選挙区では落選したものの比例代表で当選しています。つまり地元の人々の代表としてではなく、自民党の組織票に支えられて今の職に就いているんですよね。自民党を支持する人々の総意が、この人物を国会に送り出している。
つまりはいまの日本の、少なからぬ人々が杉田氏の発言を下支えしているわけです。そう考えれば、氏の発言は決して突拍子もないものではなく、ひょっとすると私たちの身近なところにいる人々に深く根ざした考えなのかもしれないと思えてきます。それが腹立たしいし、ある意味恐ろしい。この問題は、決して杉田氏一人を批判すれば済むものではなく、私たちの周囲にある身近な差別意識をひとつひとつ批判していくことの必要を私たちに教えています。
そんなことを考えて書いていたら、時事通信のネットニュースにこんな記事がありました。ニュージーランドのアーダーン首相とフィンランドのマリン首相が会談の記者会見で、男性記者の「ぶしつけな質問」に反論したというニュースです。
イギリスのメディアが伝えたニュースということでしたので、YouTubeを検索してみたらその質問部分がアップロードされていました。
質問したのは地元ニュージーランドの Newstalk ZB というラジオ局の、Joey Dwyer氏のようです。どんな人なんだろうとネットで検索してみたんですけど、今回のことが原因なのか、例えば“NewstalkZB Journalist based in Auckland.”というプロフィールがある氏のTwitterはアカウントが削除されてしまっていました。
それはさておき、記者の質問とそれに対するアーダーン氏・マリン氏の発言です。
Joey Dwyer asked, 'A lot of people will be wondering if you two are meeting just because you are similar in age and got a lot of common stuff there ... Or can Kiwis expect to see more deals between our two countries down the line?' Ardern hit back saying, 'I wonder whether or not anyone ever asked Barack Obama and John Key if they met because they were of similar age’. Marin said, 'We are meeting because we are prime ministers'
アーダーン首相とマリン首相の反論に胸のすく思いですけど、この記者もまた馬鹿な質問をしたものです。しかし、そんな馬鹿すぎる質問が出てくる土壌というものを想像してみると、これまた単に一人の記者の資質に帰していい問題だとは思えません。きっとこれもまた、社会の中に存在する少なからぬ意識に下支えされ、湧き出してきたのです。
こうした「奇矯」な言動に触れるたび、それを行った個人を叩いて溜飲を下げて終わり……にしてはいけないと思います。自分の周りの、そうした言動を醸成し、下支えするような考え方について「それはおかしいのでは?」と発信し続けていかなければ。そしてもちろん自分自身の考え方を常にアップデートし続けていかなければ。