インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

「荒れた」時代には戻りたくない

先日、留学生の通訳クラスで日本語の会話練習をしていた際、小中学校の時に「制服」があったかどうかという話題になりました。様々な国や地域で状況が異なり、なかなか面白かった(+お互いに気づきがあった)のですが、そこから「もう一度あの時代に戻ってみたいか」という話になりました。会話の練習というと、型にはまった通り一遍の問答が多いのですが、こういうある種哲学的(?)な思考を促すような設問は個人的にはとても好みです。

とはいえ留学生のみなさんはお若いので、現在の自分と小中学生当時の自分とではそれほど時間的に離れていません。というわけでこの私好みの設問についても「まあ、べつに……」「戻ってみてもいいけど……」みたいなぱっとしない反応が多くて、会話練習としてはちょっと不発に終わってしまいました。ああ、教案を考えるのって、本当に難しいです。

ただ、もし私自身がこの設問に自分の考えを述べるとしたら(中国語の会話練習などでやってみたいです)、「絶対に戻りたくない」です。小中学校はもちろん、高校も大学も、その後社会人となってからの仕事の現場にも、二度と戻りたくありません。私はいまが一番幸せで快適です。もちろん肉体的にはいろんなところで困難が生じていて、QOL(生活の質)という点では決して最高でも理想的でもないのですが。

よく「昔は良かった」とか「古き良き○○」という言い方がありますけど、例えば小中学校から高校にかけての時代は私にとってはほんとうに暗いものでした。そしてひどい時代でした。個人的には母親の影響でとある新興宗教の価値観に引きずられて過ごしていたということがありますし、私を取り巻く学校社会もとても「荒れた」時代だったんです。

qianchong.hatenablog.com

最近は、特に東京ではもう絶滅に近いそうですが、当時の学校社会には「不良」とか「ツッパリ」とか「校内暴力」とか、そんなワードで形容されるような鬱屈した若い人がたくさんいて、私は本当に居心地が悪い場所でした。しかも私は運動神経もないし、学業もふるわないしで、いわゆる「いじめられっ子」の位置にいました。

とはいえ、そこまで悲惨ないじめの対象になったことはなく、時々暴力を振るわれたり侮辱されたりする程度で、時にはいじめの傍観者になっていたこともありました(それもまた自省・反省せざるを得ない嫌な思い出です)。それでも何度か自殺を考えたことがありました。結局はそんな灰色の時代をなんとか乗り越えて、今まで生きてくることができています。

その意味では自分はこう見えても少しは強い精神を持っていたのかもしれませんし、またそんな灰色の時代の中で陰になり日向になって私を助けたり励ましたりしてくれた人がいたのだろうと思います。いずれにしてもここまで自分を破滅させずに生きてこられたことは僥倖だと思っています。

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https://www.irasutoya.com/2018/05/blog-post_32.html

こんなことを考えたのは、先日来騒動になっている、東京オリパラ開会式の楽曲担当をすることになった小山田圭吾氏が過去の「いじめ」で大きな批判を浴びている件についての報道に接したからです。新聞やネットなどいろいろな報道を読みました。小山田圭吾氏は私とほぼ同年代で、その氏の何十年も前の「黒歴史」を掘り返して現在の批判に当てることが妥当なのか、じゃあ自分にはそんな過去はなかったのか……と、自分と引き比べていろいろなことを考えました。

しかし、どう考えてもこの問題におけるある種の「気持ち悪さ」が拭いきれません。それは壮絶ないじめ自身の度を超した悪質さ、それを長じてから公のメディアに公開したこと、その後も当事者に対する謝罪などの取り組みをしてこなかったこと、その上で今回オリパラ(特にパラ)における重要な仕事に氏が就いたこと、それを組織委員会も良しとしたこと……などなどいくつもの要素が折り重なった結果ではないかと感じています。

いろいろ読んだ中ではこちらの記事と……
www.mag2.com

それからこちらの提言が比較的腑に落ちました。
news.yahoo.co.jp

そうだなあ。私自身、小学校の時に受けたいじめの記憶は、いまでも折に触れて蘇ってきますし、正直、許せないという気持ちは今でも持ち続けています。私はオリパラで掲げられる「いかなる差別も禁じる」という五輪憲章と、その五輪の存在じたいが「まやかし」だと思っていますから、小山田氏の楽曲提供担当者就任がふさわしいだのふさわしくないだのと言う気持ちすらないんですけど、やはり何十年も前のこととはいえ、この問題は看過してはいけないと思います。