じゃんぽ〜る西氏とカリン西村氏の『フランス語っぽい日々』を読みました。月刊誌『ふらんす』に連載されていたマンガとコラムを一冊にまとめたものです。私はじゃんぽ〜る西氏のマンガのファンで、氏の作品はほとんど読んできました。『パリが呼んでいる』のあとがきでカリンさん(当時は「カレンさん」と書かれていた)との結婚という衝撃の告白があって、この『フランス語っぽい日々』ではその後の子育てについても描かれている……おお、これは買わねば。
じゃんぽ〜る氏はフランス語の、カリン氏は日本語の学習にまつわる話題を、それぞれマンガとコラムで紹介しているのですが、外語学習という点では日本在住ジャーナリストとしてのカリン氏の方が圧倒的に「優勢」のようです。わはは。そうなんですよね。外語は現地に行けば上達するとは限らないものの、やはり日々その言語環境に身を置くことができるというのは、得がたいアドバンテージでありまして。
帯の惹句に「外国語を愛する/外国語に苦しむ/すべての人に」とあるように、この本に収められたトピックはその多くが外語学習者にとって「あるある!」と思わず膝をたたきたくなるようなものが多いです。その点ではとても楽しんで読んだのですが、ただご夫妻のお子さんをバイリンガルに育てようとするその試みについては、正直ちょっとハラハラしながら読みました。
基本的には自宅で子供に話しかける際、じゃんぽ〜る氏は日本語で、カリン氏はフランス語でという方法でバイリンガルに育てようとされているのですが、学校現場で多くのダブルリミテッド(セミリンガル)の生徒を見てきた私としては、失礼ながらちょっと考えが甘い&もう少し危険性も認識された方がいいと思ってしまいました。まあ他人のご家庭の教育方針にとやかく言える立場ではないのですが。
結局、お子さんは幼稚園や小学校に通う年齢にいたって、やはり圧倒的な言語環境の違いから日本語のプレゼンスが高まっていってしまいます。これは仕方がないですね。私は必ずしも幼少時からバイリンガルに育てようとすることを否定しませんし、家庭と学校現場と周囲の人々が絶妙な連携を図って成功した例も知っています。ですが、この本を拝見する限りでは、そこまで周到に考えていらしたようではありませんでした。
ほかにも字幕翻訳に対する少々否定的な見方(本来のニュアンスが再現されていない、すべて訳されていない、など)など、やや共感できかねる点も気になりました。でもその一方で日本とフランスの教育に対する考え方の違いや、子供が言語を獲得していく不思議など、知的好奇心を大いに刺激される話もたくさん入っていました。連載はすでに終わってしまったようですが、ぜひぜひお二人のお子さんの、その後の言語状況について続編を描いて(書いて)いただきたいと思います。