ふだんからあまりコンビニエンスストアは利用しないのですが、先日都内某所のセブンイレブンに立ち寄ったら、こんな「のぼり」に気がつきました。セブンイレブンで、スマホ決済サービスの「LINE Pay」と「PayPay」が使えますよ、というお知らせです。
へええ、と大変興味深く思いました。なぜなら、今年のはじめくらいでしょうか、セブンイレブンで支払いをする際に「PayPayで」と言ったら「Suicaかnanacoしか使えません!」と少々苛ついた調子で断られて、びっくりしていたからです。セブン&アイ・ホールディングスが展開する電子マネー「nanaco」のシェアを拡大するために、他社のサービスを排除するという戦略だったのでしょうか。なのに「Suica」だけは業界随一の存在感を誇っているから認めてやってもいい、というか認めざるを得ないみたいなスタンスに、ちょっと悲哀のようなものを感じていたのです。
それがここに来て「LINE Pay」や「PayPay」も認めざるを得なくなった。ネットで新聞を検索してみると、今年の7月1日から利用が可能になったようです。その一方で同日にサービスを開始した「7pay(セブンペイ)」は初手から不正利用などのトラブルが発生したのは記憶に新しいところ。そして、わずか2か月後の9月末(つまり一昨日)にはサービス廃止に追い込まれています。
コンビニ業界最大手のセブンイレブンにしてこの現状。日本におけるキャッシュレス化は、ちょうど始まった消費増税に伴う「ポイント還元」も相まってその先行きは混沌としていますが、個人的にはもう先は見えた、というか勝負は決まったと思っています。すでに多くの識者が指摘されていますが、遠からぬ将来、電子マネーとスマホ決済サービスは「Suicaの一人勝ち」に収斂していくのではないでしょうか。だって、圧倒的に便利なんだもの。カードを取り出して「ピッ」、あるいはスマホをかざして「ピッ」だけで決済が済むという簡便さ、そして使える場所の多さは、他の決済サービスと比べてみればその差は歴然としています。
私は「LINE Pay」も「PayPay」もひととおり使ってみましたが、アプリを立ち上げてバーコードやQRコードを表示させるのがことのほか面倒です。ほんの数秒の動作なのですが、毎日の買い物でこれが積み重なるとこれがけっこう面倒で。中国などで普及しているQRコード決済を眩しく仰ぎ見るような報道もありますが、Suicaの簡便さの前には色褪せて見えます。クレジットカードだってサインしたり暗証番号を入れたり面倒なことこの上ありません。
……と思っていたら、『文藝春秋』の10月号で成毛眞氏が「『Suica』が最強のキャッシュレス決済だ」という文章を書かれていました。成毛氏は現在の「なんちゃらペイ」が乱立してシェア争いに拍車がかかっている現況を「事業者側が疲弊するだけで、長続きするはずがありません」と一刀両断、「Suica」の圧倒的な優位性を説明されています。
さらに「これほどの優位性を持つ決済手段があるにもかかわらず、JR東日本は積極的にSuicaのシェア拡大に取り組んでいるようには見えません」と書き、他のJR各社が発行する電子マネーを合わせれば実に日本人の4人に3人が使っているのに「このチャンスを目の前にして、指をくわえて見ているなんて、マヌケとしか言いようがありません」とまでおっしゃっています。
確かに、規模でも使い勝手でも圧倒的に優勢な「Suica」が一挙に攻勢に出ないのも不思議ですし、いまだに「モバイルPasmo」が実現しないのも不思議です。寡占・独占を防ぐために規制がかかっているのか、それとも成毛氏がおっしゃるように「その次(カードやスマホすら使わない生体認証による決済など)」を見据えた準備をしているのか……。
社会のキャッシュレス化というほとんど「インフラ整備」に近いものは利用者の利便性からも標準化・統一化が必要だと私は思います。政府も、本気でキャッシュレス化を進めたいなら、すでに失敗の色濃いマイナンバーカードの普及を目指して「マイナンバーカード取得者にキャッシュレス決済でポイント上乗せ」なんて政策を推進するより、もっとやることがあるんじゃないかと思っています。