十数年間おつきあいのあったジャパンネット銀行が、この四月から「PayPay銀行」に改名されました。スマホのアプリも自動でアップデートされ、新しいアイコンに変わっていました。
昨年七月に、ジャパンネット銀行から出されたプレスリリースによれば、「ジャパンネット銀行は、グループ全体での『シナリオ金融構想』のもと、PayPayブランド推進の一環として、PayPayブランドを冠した商号に変更します」とのこと。こちらの記事にはその背景が紹介されていました。なるほど、ヤフーグループ傘下で金融事業を行っているZホールディングスのサービスをすべて「PayPay」というブランド名に集約するということなんですね。
しかし、以前にこのブログでも書いたことがありますが、この「PayPay(ペイペイ)」というブランド名、中国語を学んだことがある者には、なんというか……複雑な感情を催させる響きです。“陪陪(péipéi)”といえば「ちょっとお供をする」という感じで、言い方にもよりますが、どちらかというと「一緒にいたい」とか「連れ添いたい」といったような、少々甘ったるい雰囲気やニュアンスを持っています。あとはまあ年老いた両親に付き添うといったときにも使うかな。いずれにせよ、やや体温高めの、情感的な響きなんですよね。
さらに“呸呸(pēipēi)*1”といえば、これはもうはっきりと相手に対する軽蔑や罵倒に類する言葉で「唾棄すべきもの」というニュアンスが込められています。もともと「ぺっ」とつばを吐く行為の擬声語だったのでしょうね。
だからなんなの、と言われるかもしれません。それは中国語の響きであって、「PayPay銀行」は日本の銀行なんだから関係ないでしょうと。それに英語の“pay(支払う)”が語源なんだから、金融系サービスとしては特におかしくもないでしょうと*2。
それはそうなんです。でも上掲の記事で解説されている同グループの「シナリオ金融構想」によれば「検索やEC、決済、旅行など、ユーザーにアクションを促す多くのサービス(中略)に沿って金融商品を提案する」ことを目指しているそうです。その目指す先に海外市場、なかんずく巨大な人口を抱える中国語圏への視野はまったく持っていないのでしょうか。もし少しでも持っているのなら、このブランド名が中国語圏の人々の間で惹起するであろう、思わず「うぷぷ♡」と笑ってしまいそうになる、あるいは「にやっ」としてしまうネーミングのインパクトについては検討されたのでしょうか。
この「PayPay」ブランド推しの動き、私にはいまの日本の「内向き加減」を象徴するような出来事のように思えます。「ぐろーばる、ぐろーばる」と掛け声だけは勇ましいものの、ちっとも日本の外に、それも一番近いアジア圏・中国語圏に意識が向いていないのではないかと。
もっとも中国語圏の人々も多種多様だから、逆に「PayPay銀行」を「なんだかへんてこりんでクール!」などと面白がる方々がけっこういるかもしれません。日本にも「きらぼし銀行」とか「トマト銀行」なんてのもありますしね。まあ私自身はといえば、コンビニで「ペイペイで」というのすら恥ずかしいので電子マネーの「PayPay」も使うのをやめてしまったような人間ですけど。