昨年辺りから学校の裏手に登場したお弁当屋さん、電気店みたいな外観が不思議ですけど、売られているお弁当はかなり“地道(本場っぽい)”な味で、お昼休みには華人留学生が殺到しています。
華人留学生から、学校の裏手にすごい「お弁当屋台」が出現との情報を得て、行ってみました。と……おお、水煮牛肉が! かなり本格的な味と辛さで、しかも椀の底にはなぜか豆腐乾まで仕込まれており、完全に華人向け仕様です。日本の中華弁当もついにここまで来たか〜と感慨深いものがありました。 pic.twitter.com/KS5Taxnv6U
— 徳久圭 (@QianChong) 2017年4月26日
華人好みの味ということで、日本人の好みには合わないかもしれません。また最近は昼食をほとんど食べなくなったのでこのお弁当屋さんからは遠ざかっていたのですが、先日ある留学生からこんな情報が寄せられました。「センセ、あの弁当屋さん、酸菜炖排骨を売り出しましたよ」。
“酸菜(スァンツァイ)”は中国の東北地方でよく食べられている白菜の漬け物です。日本の白菜漬けに似ていますが、もっと発酵を進めて酸っぱくしたものとでも言えばよいでしょうか。中国の南の地方や台湾などでは高菜漬けに似た“酸菜”も食べられています。この“酸菜”、肉類との相性がよく、肉と一緒に炒め物にしたり、羊肉のしゃぶしゃぶ“涮羊肉”に入れたりします。
“涮羊肉”は最近日本でも「火鍋」などと称してだんだんポピュラーになってきましたが、中国の北の地方、例えば北京などで、厳寒期にコークスで炊く煙突付きの鍋で食べる“涮羊肉”は、その雰囲気全体も含めて独特の味わいがあります。また薄く薄くスライスされた羊肉がほとんど芸術的なまでに美しく、全く臭みがない。このあたり、何百年も羊をさばき食べてきた民族のすごみを感じます。
こちらは見るだけで垂涎ものの動画です。
ああ、“酸菜”の話を始めると止めどなく脱線しちゃいます。それほど私、“酸菜”が大好きなのです。話を元に戻しまして、“酸菜炖排骨”は、“酸菜”を豚のスペアリブと一緒にコトコト煮込んだ料理です。早速お弁当屋さんに飛んでいって、買い求めてみました。
見た目もかなり“地道”です。スペアリブは軟骨のついた部分で、“宽粉(幅広の春雨)”も入っています。東北料理らしく、少々塩気が強かったですが、かなり本場のものに近い味でした。うちの学校にはかなりの数の華人留学生が学んでいるのですが、その「客層」を見越して、最初から日本人客を目当てにしないこうした商売(お店では中国語が飛び交い、日本語はほとんど使われていません)を始めるお弁当屋さんのしたたかさ、すごいなあと思います。
ところで私、実は昨晩も“”酸菜”を食べました。いえ、正確に言うと“酸菜”ではないのですが、先日シュクルートを作ったときに残った「ザワークラウト」をどう使おうか考えていて、ふと、これを“酸菜”のかわりにして「しゃぶしゃぶ」をしたらどうかしら、と思いついたのです。“酸菜”は基本的に白菜、一方ザワークラウトはキャベツです。全然違うと言えば違うのですが、発酵して酸味が出ているところは似ています。
で、試してみたら、これがまあぴったりでした。味も食感も“酸菜”を入れた鍋とほとんど変わりません。むかし勤めていた中国語学校では、中国出身の先生が“酸菜”食べたさのあまり、日本の白菜漬けパックをわざと賞味期限越えまで冷蔵庫で保管して過発酵にしてから食べる、なんて「荒技」を披露してくださいましたが(ま、今では都内の中国食品店などで買えるでしょうけど)、ザワークラウトなら大きめのスーパーや「カルディ」みたいな輸入食品店でも簡単に手に入りますよね。
“酸菜”や、それを使った料理はあまり日本人の舌にはなじみがないかもしれませんが、日本にだって酸っぱい漬物はありますし、高菜炒めや高菜チャーハンみたいなのもあって、お口に合う方は多いと思うんです。日本にももっと“酸菜”の料理が広まるといいですね。